TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】二面性の街

執筆:マテウシュ・ウルバノヴィチ

2026年1月18日

就職のために東京へ移った最初の数年間は、刺激的ではあったものの、とても孤独な経験でした。日本でできた知り合いは皆神戸にいましたし、人との交流といえば、夜遅くまで働くようになったアニメスタジオの中だけです。個人的なアートプロジェクトは行き詰まり、スタジオでの仕事は難しく……。このときの大都会に放流された気分は、不快なほど単調でした。

僕は歩くことで自分を救おうとしました。この大都市を、思いのままに探検できるのです! 仕事の後、秋葉原や新宿まで歩いてみたり、裏通りに迷い込み探検したり。しばらくの間は、この方法が上手く機能しました。どこもかしこも光と店、そして夜の街の喧騒に満ちています。しかし、疲れと憂鬱が募るにつれて、この街の夜はだんだんと重苦しく、暗くのしかかるようになったのです。見たものを描こうと何度か試みたものの、結果もまた暗く、ざらざらとしたものでした。

数年後、僕は妻のカナと出会い、湘南の日差しが降り注ぐ小さな家に二人で引っ越すことになります。ようやく明るい目と穏やかな心で、このテーマに再び向き合うことができました。あの孤独な散歩が忘れられず、そのときの気持ちをきちんと紙に残したいと思ったのです。

アートブックというひとつの作品にするのであれば、もっと意図的に、そして一人ではなくて済むように探求したいと計画しました。この本の編集者と、カナと、僕の作品を特集するNHKの取材班数人と一緒にロケハンをします。

夜中の神田、新橋、秋葉原、谷中銀座など、なにかありそうな場所を巡って一行は練り歩く…。今思うと、今までで一番楽しいロケハンでした。

僕たちはあの美しさと喧騒、そして光をすぐに見つけました。そう、たくさんあります。でも、僕が覚えていた強烈で孤独で不気味な雰囲気もまた、そのすぐ隣にいました。後に「東京夜行」という作品集にまとめたこれらの絵は、この二つの側面を捉えるために大変な力を注ぐことになります。すべてインクと水彩画で描ききったこともチャレンジングでしたが、試みはそれなりに成功したのではないでしょうか。

この本の制作に取り組む中で、カナとこの街の二面性について何度も話しました。夜の東京というのは一種の重なり合った状態、つまり心地よさと不気味さが同時に存在している場所です。そして、それをどのように捉えるかは、観測する人の心の状態によって決まるのです。それまでは確定しません。

「東京夜行」という本では、すべての絵をロケ地の詳細とともに記録し、実際に歩いたロケハンの地図も描いています。もし東京の夜の一面を体験してみたい方は、この本を手に、どちらの側面が見えてくるか試してみてはいかがでしょうか?

プロフィール

マテウシュ・ウルバノヴィチ

ポーランド出身のイラストレーター。アニメ制作会社〈コミックス・ウェーブ・フィルム〉入社後、アニメ映画『君の名は。』など数々の作品で背景美術を手がける。2017年に独立し、『東京店構え』、『東京夜行』などの作品集を刊行してロングセラーになる。

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