TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#1】風のある風景の探検
執筆:マテウシュ・ウルバノヴィチ
2026年1月11日
日本に来る以前、歩くことはA地点からB地点へ移動するだけのことだと思っていました。場所のせいか、ただ楽しむために周囲を探索しようなんて考えてもみなかったのです。
しかし、神戸での最初の日から、そして後に関東でも、日常の空間を探索することはアーティスト活動の柱になりました。おそらく最も重要な柱と言えるくらい。なぜなら、僕のインスピレーションのほとんどがそこから生まれるからです。周囲の都市空間に興味を持ち、体験し、記録することに細心の注意を払っています。時には思いつきで(日本橋のお店に行きたい場合、地下鉄に乗る代わりに、ランダムなルートで1時間歩く)、あるいは非常に意図的に(深大寺周辺に素晴らしい建物があると聞いたら、そこに行かなければならない!)行うこともあります。
撮った写真のほとんどは、どんどん増えていく「いつか使う資料フォルダ」にしまい込まれますが、時折、僕の心に深く響く風景や建築物、そして人物に出会うことがあります! この可能性に、とてもワクワクするのです!
たとえば、ジブリ映画のモデルとなった場所を見たくて、聖蹟桜ヶ丘へ散歩に行ったときのこと。丘の上の懐かしい雰囲気の街並み、眼下に広がる街の風景、そして団地の資料などを一日中撮影していました。
そのとき僕は、自転車に乗った青年が、苦労してあの坂を登るところを目にします。彼のシャツが風を受けてふくらむ瞬間、これはまさに描くべき絵に出会ったと確信しました!
完成させた絵には、聖蹟桜ヶ丘で見たもろもろの風景に、よりジブリらしいキャラクターを融合させ、春らしく爽やかなシーンにしています。ただ、丘を登るあの男性のエネルギーをそのままに描くよう、注力しました。その気持ちが僕のインスピレーションの源だったのです。この絵は鉛筆と水彩を使い、その後10枚の連作シリーズとなりました。
嬉しいことに、このイラストシリーズはオンラインで多くの人から好評を得て、なんと、スタジオジブリにもその評判が届くことになります。2015年に出版された『ジブリの教科書9 耳をすませば』という書籍に、インタビュー記事とともに掲載されました。
振り返ってみると、このイラストの体験のおかげで、ほぼデジタルのみだった作業から徐々に手描きへ移行し、水彩画集を制作していくスタイルになったようです。散歩に出かけたあのときそこで見たもの、そして心を向けた体験が、僕のアートキャリアを大きく変えたと思うと、少し不思議に感じます。
プロフィール
マテウシュ・ウルバノヴィチ
ポーランド出身のイラストレーター。アニメ制作会社〈コミックス・ウェーブ・フィルム〉入社後、アニメ映画『君の名は。』など数々の作品で背景美術を手がける。2017年に独立し、『東京店構え』、『東京夜行』などの作品集を刊行してロングセラーになる。
Instagram
https://www.instagram.com/mateusz_urbanowicz/
Official Website
https://mateuszurbanowicz.com/
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