TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】我が家のうなぎの味を探して
執筆:草柳佳昭(小学館の図鑑NEO編集部)
2025年12月2日
図鑑の編集者として仕事をしているが、もともと小さい頃から生き物が好きだった。
そのなかでも魚が好きになったのは、実家がうなぎ店を営んでいたことも大きい。
多くのうなぎ店では、うなぎを生きた状態で仕入れて、うなぎカゴの上から水を落として調理の直前まで活かしておく。我が家も例外ではなく、毎日生きたうなぎを目にしていたので、魚に興味を持つのは自然なことだった。
そんな家業のうなぎ店も、数年前に閉業した。
切り盛りしていた父が亡くなったので、我が家のうなぎを食べることはできなくなってしまった。
お店を営業していた頃は、自分の店のうなぎを食べる機会は多かったので、他のお店でうなぎを食べたことはほとんどなかった。
しかし、実家の店が閉業してからは、各地のうなぎを食べに行くようになった。とくに出張や旅行で遠出するときは、できるだけ一度はうなぎを食べる。
日本全国でうなぎの蒲焼は食べられているが、地域によってその調理法や味付けは実に多様だ。
よく知られるところでは、うなぎの開き方と蒸すかどうかの違いがある。
東京をはじめとした関東では、背中側に包丁を入れ(背開き)、途中でうなぎを蒸しあげる工程がある。ふわふわとした食感で、蒸しているときに脂が落ちるのでややさっぱりとした味わいになる。
愛知県西部や大阪、京都などでは、うなぎの腹側に包丁を入れ(腹開き)、蒸さずに焼き上げる店が多い。そのため皮のサクサクとした食感と、香ばしい味わいが特徴だ。
大きな違いはこれらだが、お店での提供のされ方も地域によって本当にさまざまだ。
とくに、タレご飯の上にうなぎをのせて蒸し上げる福岡県柳川市の「せいろ蒸し」や、どんぶりのご飯の間に蒲焼きが挟まれている大阪の「まむし」などは衝撃的だった。
各地のうなぎを食べるたびに、我が家のうなぎがどんな味だったのか、相対化されて少しずつわかるようになってきた。
あるとき、地元・横浜の有名店にうなぎを食べに行った際、ひとくち目で驚いた。
醤油感の強い辛めのタレ、ふわりとした食感も、昔よく食べていた味にそっくりだった。一緒に行った母も「うちの味に近いね」と目を丸くしていた。
やはり地域ごとに、うなぎの味がしっかり受け継がれているのだ。うなぎの多様な食文化が、これからも残っていくことを願ってやまない。
プロフィール
草柳佳昭
くさやなぎ・よしあき|1989年、神奈川県生まれ。小学館 図鑑編集部 デスク。自然系出版社を経て、2021年に小学館に入社。以降図鑑編集部に所属。担当した図鑑に、小学館の図鑑NEO新版 『岩石・鉱物・化石』、小学館の図鑑NEO『メダカ・金魚・熱帯魚』など。実家がうなぎ店で、家の近所に海や川もあったことから、小さい頃から魚に興味を持つ。現在も、魚採集が趣味。
小学館の図鑑NEO
2002年に創刊した図鑑シリーズ。最新の研究に基づいた本格的な内容と、緻密な写真やイラストが人気で、累計発行部数は1500万部を超える。恐竜、動物、昆虫などの生き物を取り上げたもののほか、鉄道や大むかしの生物、科学の実験など、子どもも大人も楽しめる多様な展開が特徴。ハンディサイズのNEOぽけっと『鉱物・宝石』『音楽』が好評発売中。
Official Website
https://www.shogakukan.co.jp/pr/neo/
Instagram
https://www.instagram.com/zukan.neo/
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