TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】名前を考える

執筆:エーブルソン友理

2025年11月12日

 名前を聞かれて「エーブルソンです。」と答えると、よく「エーブルさんですか?」と返されます。自分で自分に“さん”をつけることはないと思うのですが。

「エーブル村、エーブル尊」なんて漢字にしたら分かりやすいかな、なんて考えたこともあります。

 エーブルまでは、聞き覚えがあるのか、スムーズに伝わるのですが、最後の、「ソン」で急に分からなくなるようです。そんな時は少し声を大きくして、「さしすせそのソンです」と言ってみると、通じることもあります。

 世代に関係なく反応はさまざまで、おばあさんが「あぁ、エーブルソンさんね」と即答してくれることもあります。

 でも、気持ちにゆとりのある時は、「今日はどんな反応があるかな」と、そのやりとりそのものを楽しんでいます。

 前置きが長くなりましたが、あらためまして、エーブルソン友理です。
ブランドや、プロダクトの名前、色名などを考えることも、私の仕事の一部です。

〈Postalco(ポスタルコ)〉という名前で活動をスタートしたのは、2000年のことでした。その頃から紙を使ったコミュニケーションが少しずつ特別なものになりつつあると感じていて、週末には、切手ショーがあると聞けば足を運び、古い切手や封筒を探しました。

 消印付きの切手や手書きの住所入りの封筒たちは、遠くの誰かに宛てられたもの。離れた人と人とを紙でつなぐ――その営みを表す「post」という言葉が万国共通であることにも惹かれ、「postal」と会社を表す「co」を組み合わせて、「Postalco」という名前をつけました。

どっちがカッコいいかな。

「For Your Reference ご参考までに」というゴム印。

 ロゴは「P」の形をした翼の伝書鳩にしました。初期のロゴのスケッチを見た祖母が、「矢があると鳩が射られたようだし、少し痩せすぎじゃない?」と言ってくれて、その言葉をきっかけに矢を取り除き、鳩を少し太らせました。

 そうして〈Postalco〉のロゴが完成しました。

郵便に夢中になって、「LETTERS」という小さな印刷物も作りました。

プロフィール

エーブルソン友理

エーブルソン・ユリ|1971年、東京都生まれ。学生の頃にヨーロッパやアメリカを転々とし、カリフォルニアのパサデナでマイク・エーブルソンと出会い、2000年にNYブルックリンにて〈ポスタルコ〉を創業。以来、自社のブランドコミュニケーションを中心に、グラフィックデザインの仕事をしている。2児の母でもある。好きな映画は『freaks』 (1932年) 、好きな漫画は『魔太郎がくる!!』、著書に『霧の中の展望台』『水たまりの中を泳ぐ』がある。現在、『Atelier Muji Ginza』にて展示「PAPER TRAIL – Everything Is a Prototype for the Future」(〜11/24まで)を開催中。

Instagram
https://www.instagram.com/postalco.tokyo

Official Website
https://postalco.com