ファッション
あなたにとってスタンダードって?/ティボ・デニス
What’s Standard?
2026年1月1日
スタンダードという言葉はあまりに広義だ。デザイナーにとってこの言葉は、どんな意味を持ち、自身のものづくりとスタイルに影響を与えているのだろう。
『インパーフェクションな美しさに惹かれる。』
〈ルイ・ヴィトン〉のデザイナーも務めるティボ・デニスは、自身のプロジェクトとしてデザインした「ビルケンシュトック1774」のミュールを履いて現れた。未来的なカーブを描いたデザインは一見ビルケンっぽくないけれど、素朴な質感は健在だ。
「今、最もスタンダードを感じるシューズはミュール。前から〈ビルケンシュトック〉のボストンにウールのソックスをあわせるのが好きなんだけど、僕のアイデアは寒い冬、厚手のコートを着込んだ足元にこのミュール。冬なのにミュールっていうのがいいんだよ。クライミングのカルチャーを混ぜた〝クライミング・ザ・シティ〟というイメージで作ったから、東京やパリ、LA、北京の街でぜひ履いてほしいな」
淡いブラウンのスエードとコルクのグラデーション。ティボが作るシューズといえば、絶妙なカラーリングと素材選びが特徴的だ。その原点は?
「持って生まれた感覚もあると思うけど、母の故郷のブルゴーニュの影響もあるかもしれない。フランスの田舎町で、夏休みや冬休みに行くと広い葡萄畑が広がり、葉っぱ、土、空、あらゆる色に心が躍った。僕が育った都市のコンクリートの質感も好きだし、どちらの要素も大切だね」
現代的なシューズを生み出すティボだけれど、大事にしているのは実際に目にして触れた体験だと気づかされる。
「スタンダードとは毎日を輝かせてくれるものだと思う。僕がインスピレーションを感じるのは、まずパリにある日本人の友人が営む『ドリーミンマン』のコーヒー。美味しいし、店のムードが大好きなんだ。そして朝起きて目に飛び込むキム・ミンジェの木の椅子。服も大事だよ。人生の瞬間を輝かせてくれるからね。特にシャツは定番で、ストライプやプレーン、いろんなものを持っていてレイヤードするのが好き。いずれも良い品質であることが欠かせないよ。あと陶器も大切。フランスの〈La Borne〉の’60年代の器はテクスチャが素晴らしい。陶器はインパーフェクションなところがいいね」
気になったのが〝インパーフェクション〟という言葉。ティボは完璧じゃないものに惹かれるらしい。
「陶器は人間がデザインするものだけれど、火という自然の力によって質感や色が変わり、パーフェクトなものはできない。不完全さは僕にとって大切なんだ。なぜならそこに美しさがあると思うから。何かアイテムを見て『このオレンジ少し変かな?』と思っても、ダークブラウンやコーヒーカラーを加えたら好きになるかもしれない。不完全でも別の要素をミックスすればいいんだよ。それに、好きなものだけに囲まれていたら世界が狭まってしまう。僕は常にオープンマインドでありたいし、可能性に目を向けていたいんだ」
スタンダードから連想することばは?
・コーヒー
・家具
・シャツ
・クオリティ
・陶器
プロフィール
ティボ・デニス
1986年、フランス・パリ生まれ。ヒップホップやロック、エレクトロなどの音楽を聴いて育ち、独学でデザインを学ぶ。19歳でイタリアに渡り経験を積み、2015年に〈ディオール〉に入社。2017年よりメンズフットウェアの責任者となり「B23」「Air Dior」などの名作を手掛けた。2024年に〈ルイ・ヴィトン〉へ参加。ソロ・プロジェクトとして〈ビルケンシュトック〉のハイコンセプトライン「1774」(P197でも紹介)のデザインも手掛ける。
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