ファッション

あなたにとってスタンダードって?/トム・ブラウン

What’s Standard?

2026年1月3日

マイスタンダードの見つけ方。


photo: Takeshi Matsumi
text: Shimpei Nakagawa
2025年10月 942号初出

スタンダードという言葉はあまりに広義だ。デザイナーにとってこの言葉は
どんな意味を持ち、自身のものづくりとスタイルに影響を与えているのだろう。

『生き方自体がユニフォームのようなものなのです。』

 ジャケットに、ボタンダウンシャツ、カーディガン、ネクタイ、くるぶし丈かショーツ丈のトラウザーズ、ウィングチップシューズ。2001年に自身の名を冠したブランドを始めたデザイナーのトム・ブラウンは、自宅にいるときとランニングの時間を除いて、常にこのスタイルということでよく知られている。

 歩くスタンダードと言っても過言ではないトムに話を聞かないわけにはいかないと、ニューヨークのガーメントディストリクトにあるオフィスへ向かうと、出迎えてくれた本人は今日ももちろんそのユニフォーム姿だ。

「幼い頃から母親にジャケット、白のボタンダウンシャツにネクタイを着けさせられていたんです。今でも当時から変わらず同じスタイルで過ごしています。だからブランドを立ち上げるときも『テーラリングから始めよう』と自然に決まった気がします。それはすべてのコレクションに取り入れていて、ブランドの出発点とも言えるグレーという色にも同じことが言えて、小さい頃からグレーのフランネルパンツをよくはかされていたのですごくパーソナルなカラーなんです。シンプルだけどパワフルで、タイムレスだと思います」

 スタンダードと聞いて思い浮かぶ言葉は「ユニフォーム、タイムレス、クラシック、エッセンシャル、パーソナル」。それを具現化したようなトム・ブラウンの服だが、同じ装いでいつもいればスタンダードを体現できるというわけではないと本人は説く。

「例えば俳優でいうとエイドリアン・ブロディやダニエル・デイ=ルイスは物事を最善の形で行っていて、どんな作品に出ていてもその真剣さが伝わってきます。メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートのキュレーターで私のパートナーであるアンドリュー・ボルトンもそうです。自分に正直で、自身に対して強いスタイルを持っている。つまり自分らしさを体現している、そんな人がスタンダードであると言えるのだと思います。私はアッパー・イースト・サイドにある『サン・アンブローズ』で毎朝ほぼ同じ時間にコーヒーを買いますし、外食となるとパークアベニューにある『ザ・グリル』という感じで、同じ場所に通うタイプなのですが、私にとっての自分らしさというのは、毎日ほぼ同じルーティンで規則正しいライフスタイルで生きること。それはつまり〝ユニフォーム〟な生き方なんです」

 流行りのスタイルやシルエットが目まぐるしく移り変わるこの街で、トリコロールのアクセントがアイコニックなユニフォームは20年以上ほとんど変わっていない。トレンドに迎合するわけでも逆らうわけでもなく、自分らしくあり続けること。まさにニューヨークスタンダードと呼ぶにふさわしい。


What words come to mind
when you hear “standard”?
スタンダードから連想することばは?

・ユニフォーム

・タイムレス

・クラシック

・エッセンシャル

・パーソナル


プロフィール

トム・ブラウン

1965年、アメリカのペンシルヴェニア州生まれ。ノートルダム大学で経営学を学ぶ。競泳選手として活躍後、ロサンゼルスで俳優を経験し、その後ファッション業界に転身。〈アルマーニ〉や、〈クラブ・モナコ〉など、いくつかのファッションブランドを経験して、〈トム・ブラウン〉をスタート。〈モンクレール〉のメンズラインや〈ブルックス ブラザーズ〉のコレクションラインを手掛けたことも。2023年、アメリカファッション協議会(CFDA)の会長に就任。