トリップ

島旅の前に読みたい本。

島旅のしおり

2025年9月16日

サマーボーイと夏の島。


illustration: Minoru Tanibata
edit: Sana Tajika
2025年9月 941号初出

島への好奇心、島への使命感、はたまた島への愛から生み出された、
編集部選の島に関連する写真集やエッセイ4冊をご紹介。


1. 『A Small Book Of Ojika Recipes』

オランダのアーティストOlya Oleinicが、長崎・小値賀島での滞在制作を経て編んだレシピと記憶の記録集。アムステルダムを拠点とするデザインスタジオ「Studio The Future」が携わるプログラム「Artist in Island OJIKA」の一環として制作された。小値賀中学校の生徒たちによる挿絵がキュート。€25.00/Stuidio The Future


2. 『ユルリ島の馬』

写真家・岡田敦が10年以上にわたり撮影した、北海道・根室の無人島ユルリで生きる馬たちの写真集。元々労働力として島に持ち込まれた馬は、今は人なき島で厳しい自然を生きる。徐々に着実に種が絶えていく様が、ページをめくるたび仄暗さを増して迫ってくるよう。タル・ベーラ映画のような静謐な世界観だ。¥6,600/青幻舎


3. 『旅の人、島の人』

2011年の東日本大震災をきっかけに、息子と共に沖縄・石垣島へ移り住んだ歌人の俵万智。旅人としては長く島人としては短い、島での3年間の日々を綴る。同じ土地を長く旅していると、新鮮に思えていた事柄が日常に溶けていく。3年という月日はその変化に気づけるぎりぎりのラインなのかもしれない。¥1,870/ハモニカブックス


4. 『The Bonin Islanders』

小笠原諸島・父島の欧米系先住民が自称する、日本人でもアメリカ人でもない“Bonin Islandes 小笠原人”とは。戦争、占領、日本返還という歴史の波に翻弄されながらも形成された独自のアイデンティティを、写真家・長沢慎一郎が13年かけて記録。辛抱強く築き上げた住民との信頼関係が生んだ、渾身の作品群である。¥6,600/赤々舎