TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】季節は巡る

執筆:川内倫子

2025年6月27日

 コロナ禍のあとのここ数年、毎月どこかで個展やグループ展のオープニングがあり、その間にいくつかの本を出版し、依頼の仕事を合間に引き受けたりしていた。それはコロナ以前にもずっと続けていたことなのに、やたらと余裕がなくて追われている感じがしたのは、展示の機会が少し増えたからかな、というくらいに思っていた。

 実際、問題なくすべてのタスクをこなしていたのだけれど、どうしてこんなに疲れているのだろう、やっぱり年齢のせいかなと思っていたら、ことしの春にトラブルが重なって、こんな仕事の仕方をしていたらもうだめなのかもしれない……一回休まないといけない気がする、と少し怖くなった。

 いつまでも30代くらいの気持ちでいたけれど、バランスをとらないといけないのかと。
貧乏性なのでなかなかそれができなかったのだが、6月に入ると少し仕事のペースを緩めることができた。それで旬の食材と向かいあって毎日庭で採れた大量の筍を食べていたら、少しずつ自分の心身が癒されていっていることに気がついた。

 自分で料理をして季節の地のものを食べるということが、いかに健康的であるかということを再確認したのだった。

プロフィール

川内倫子

かわうち・りんこ|1972年、滋賀県生まれ。写真家。2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2023年にソニーワールドフォトグラフィーアワードのOutstanding Contribution to Photography(特別功労賞)を受賞するなど、国際的にも高い評価を受け、国内外で数多くの展覧会を行う。主な著作に『Illuminance』(2011年)、『あめつち』(2013年)、『Halo』(2017年)など。2022〜2023年に東京オペラシティ アートギャラリーでと滋賀県立美術館で大規模個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」を開催。現在、個展「a faraway shining star, twinkling in hand」が世界各国のFotografiskaで巡回中。2025年に写真集『M/E』、篠原雅武との共著『光に住み着く Inhabiting Light』を刊行。