ライフスタイル
先輩たちのエチケット。【後編】
大人へのファーストステップ。
2025年9月3日
エチケットはただの堅苦しいルールではない。
どうすればみんなで気持ちよく過ごせるか? を考えることだ。そのヒントを名著から。
宛て名は、間違いなく、正確に。
by Yukio Mishima
『三島由紀夫レター教室』は、手紙形式の小説でありながら、手紙の文例集でもある。今では手紙を書く機会はそうそうないけれど、あとがきで三島が語る「手紙の第一要件」はとても現代的だ。曰く「あて名をまちがいなく書くこと」。浜か濱か、沢か澤か、斉か齊か、はたまた齋か……。誰もがメールのやり取りでひやっとした経験をしたことがあるだろう。当の三島も由紀夫を由起夫とよく間違えられたそうで、相手が作家志望者だったときにはその神経を疑いたくなるほどだったという。ともかく、文面にどんな丁寧な言葉を並べても、名前を間違えればすべて帳消しだ。文章作法も大切だけど、まずは細やかな丁寧さを心がけよう。送信前にはホームズばりの観察力で宛て名の再確認を。
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三島由紀夫 『三島由紀夫 レター教室』
5人の登場人物が綴る手紙で進行する小説。謝罪、お見舞い、告白など、目的別の文例集としても楽しめる。¥682/ちくま文庫
つまらない飲み会は、
心のなかで弔辞を読んで表情豊かに。
by Takeshi Kaiko
PR誌『洋酒天国』の創刊編集長を務めた作家・開高健は、お酒は好きだがパーティは嫌いだったという。とはいえ仕事柄、酒席は多く、苦手な人との付き合いも少なくなかった。そんなときの対処法が、なかなか斜め上を行っている。ずばり、相手の葬式で「どういう弔辞を詠んでやろうかと思いつつ酒を飲む」。続けて「そうすると、楽しくなってきて、ついニコニコする。ときには考えている、まじめな顔にもなる」。この表情の変化を、酒に酔っている相手は自分に都合よく受け取ってくれるのだという。不謹慎な気もするけれど、案外愛想笑いするよりもナチュラルな微笑みを浮かべられるかもしれない。不気味に思われたって、この場合はお構いなし。万策尽きたときに試してみよう。
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開高健『風に訊け』
主に10代後半から20代後半の読者からの質問に、開高が答える。酒、食、仕事、恋愛、性とテーマはなんでもござれ。¥759/集英社文庫
名刀ならぬいいペンを1本。
by Shotaro Ikenami
いい万年筆は名刀のようなものである、と池波正太郎先生。時代小説家らしく、貧乏侍であっても帯刀する以上はできるだけいいものを差していたことと同じだとも。さしずめ、男の武器なのだ。若くて服装は質素だとしても、アクセサリー的ではなく実用的な機能を持つ万年筆を1本持っていれば、ひとつ立派。例えば〈モンブラン〉を薦めている。もちろん万年筆もいいけれど、もっと言うと、自分にとっての大切な仕事道具を考えてみたい。池波先生も「どのように生きて行くかという問題は、結局、その人が生きている時代そのものと切っても切れない」とおっしゃっている。先生が生きていたらどんなものを薦めただろうか? 想像しながら、一流の仕事道具を携えようじゃないか。
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池波正太郎『男の作法』
池波が50歳を過ぎた頃、大分県由布院の温泉宿で語り下ろした「男の常識」。解説は「池波先生」と敬愛する常盤新平。¥693/新潮文庫
喧嘩の和解は自ら申し出る。
by Shusaku Endo
作家の遠藤周作は大人の喧嘩について考察した。特に、男同士の殴り合いの喧嘩だ。まずは発作的に動かず、この戦いに大義名分があるかを頭の中で確認。大義があれば、仮にボコボコにやられても「負け」にはならない。そうはいっても、力の差が明らかで勝ち目のない喧嘩はしないほうがいい。つまり基本的には喧嘩をするな、ということなのだが、相手から手が出てきたら? 「振り向いて逃げることだ」。とにかく厭戦家の遠藤は「最も上策は喧嘩をした相手といつまでも憎しみの溝を持たないことだ」とも書く。そのためにまずは自分から「これからは仲良くしようよ」と声をかけるべしと。些細な口げんかであっても、いつまでも意固地でいるようじゃ大人とは言えないよね。
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遠藤周作『周作塾』
塾頭・遠藤周作が「読んでもタメにならない」とユーモラスに綴ったエッセイ集。テーマは旅行、運、友達の作り方まで。¥545/講談社文庫
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