ライフスタイル

僕の憧れの大人。/ 沖田英宣

大人へのファーストステップ。

2025年8月29日

大人になるって、わるくない。


illustration: Kazuma Mikami, Makoto Wada (profile)
text: Keisuke Kagiwada
2025年6月 938号初出

生き様のスタイルサンプルを見つけることは大人への近道。
4人の先輩たちは誰の背中に大人を感じたのだろう。

HIDENOBU OKITA

沖田英宣

制作ディレクター。1967年、東京都生まれ。現在は「ソニー・ミュージックレーベルズ / EPIC Records Japan」に所属。宇多田ヒカル、清竜人らとの仕事で知られる。

100わかっていても言わない。
その慎み深さが人を動かす。

 僕の周りって子供みたいなやつばっかりなんですよ(笑)。だけど、そんな中でも、A&Rの沖田英宣さんは唯一大人だと感じるかも。A&Rっていうのは日本でいうところの制作ディレクターで、楽曲を作るときに、アーティストに伴走しながら、いろんなことをまとめる役回りです。出会ったのは2016年かな。宇多田ヒカルさんの「ともだち」にフィーチャリングで参加させていただいたとき、僕らを繋げてくれたのが沖田さんでした。以来、僕のデビューから3作目のアルバム『Strides』までは、すべてご一緒しているんですが、沖田さんはいつも対話を重視し、トップダウンで何かを決めていくような人ではないんですよ。それでいて、100わかってるけど100言わないところに、大人を感じるのかもしれません。

 やっぱり、物事を前に進めるには、自分の言いたいことだけ言ってりゃいいわけじゃないんですよ。相手の意見をちゃんと聞いて、いかに少ない言葉で人を動かすかっていうのは、自分の中でもテーマ。いまだに「余計なこと言っちゃったな」って反省することは多いですけど(笑)。若い頃は絶対に自分がやりたいこと、100パーセント表現したい世界みたいなものがあるじゃないですか。だけど、コントロールフリークになってそこを突き詰めていっても、見える世界なんてたかが知れていることに、あるときふと気づく。僕なんかより優秀な人はたくさんいますから。それよりも、細かく言うっていうよりも、大局だけは見失わず、自分が信頼する人たちにそれぞれ気持ちよく、自由に動いてもらうこと。その結果として気づいたら、なんかみんなが楽しい世界になっているってほうが、僕は嬉しい。それが今、音楽においても、まちづくりにおいても、僕がやろうとしていることなんですよね。

プロフィール

僕の憧れの大人。/ 沖田英宣

小袋成彬

ミュージシャン

おぶくろ・なりあき|1991年、埼玉県生まれ。2016年にメジャーデビュー。ミュージシャンとしての活動の傍ら、レコード会社「TOKA」を運営。2025年、アルバム『Zatto』を発表。