TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】どこの国の言葉?/エスペラント博物館への誘い。

執筆:南波文晴(NPO法人エスペラントよこはま 理事)

2024年10月12日

 Saluton! (こんにちは!)

 Bonvenon al nia Esperanto-Muzeo!(私達のエスペラント博物館へようこそ!)

 これがエスペラント語の挨拶言葉です。さて、実際これはどこの言葉でしょうか?何となくイタリア語やスペイン語などに似ていますが、どちらでもありません。

 エスペラント語について紹介すると、多くの人から真っ先に「どこの国の言葉ですか?」と質問されます。しかし、エスペラント語はどこの言語でもなく、国際語として利用することを目的に、今から約140年前にポーランドの眼科医ザメンホフが作った人工言語です。

 「国際語?それって英語でしょ?」…はい。確かに現在の世界では英語がその役割を担っています。ちなみに、140年前はフランス語も国際語として普及していました。現在でも、オリンピックや国際郵便の分野では、第一公用語はフランス語になっています。

 しかし、英語やフランス語といった、特定の国の言語を国際語にしてしまったら、そのネイティブの人たちが圧倒的に有利になって不公平ですよね。どこの国のものでもない言語を、文法や発音を易しく覚えやすく作って、それを国際語にすれば公平になります。そんな平等な国際語を世界に広めれば、世界中の人たちの相互理解が進み、世界はもっと平和になるでしょう。

 …とはいえ、このアイデアは現在でこそ人々に理解されやすいですが、140年前にはあまりにも斬新過ぎたに違いありません。この理念に共感し、魅了された文化人や知識人も多かった一方で、危険な言語だとして世界各地で弾圧された時代もありました。

 現在では、普通の人々にとっても国際交流が当たり前になり、多文化共生の大切さが広く認識されるようになりました。エスペラント語が危険視されることは(少なくとも日本では)ほとんどありません。それに、筆者の感触では十年前と比べても、エスペラント語に好意的な声をいただくことが増えていると思います。とうとう時代がエスペラント語に追いついてきたのかな、と感じる昨今です。

 今こそ、このユニークな国際語の世界に、触れてみてはいかがでしょうか。

(つづく)

エスペラント語に魅了された文化人としては、日本では宮沢賢治が有名です。『エスペラント博物館よこはま』にも「宮沢賢治とエスペラント」コーナーがあります。(博物館の詳細は最終回で紹介します)

プロフィール

南波文晴

なんば・ふみはる|「NPO法人エスペラントよこはま」理事。横浜を拠点とし、中立な国際語「エスペラント」の活用・普及、学習支援につとめる。2021年に設立された『エスペラント博物館よこはま』では、エスペラントによる国際交流や、エスペラント文化の蓄積としての図書・雑誌等様々な資料が所蔵されている。

エスペラント博物館よこはま Official Website
https://esperanto-muzeo-jokohama.jimdofree.com/