©️JAXA/NASA

カルチャー

JAXA宇宙飛行士 星出彰彦さんに11の質問。

POPEYE Webによる直撃インタビュー!

2022年1月21日

movie: Seiichi Kimura

先日、無事帰還されたJAXA宇宙飛行士の星出彰彦さん。国際宇宙ステーション(ISS)に約6か月間滞在し、ミッション中は日本人2人目のISS船長を務めたヒーローだ。実は、宇宙滞在中の星出さんに遠隔インタビューが実現! 宇宙旅行のおすすめポイント、モーニングルーティンのような素朴な疑問から、宇宙ビジネスの将来といった真面目な質問まで一問一答スタイルで答えていただきました。ムービーと記事どちらでも楽しめます!

POPEYE Webをご覧の皆さん、こんにちは! JAXA 宇宙飛行士の星出彰彦です。今日は皆さんに向けて国際宇宙ステーションから色んなご質問に答えていきます。よろしくお願い致します。JAXA宇宙飛行士・星出彰彦さん

Q1 国際宇宙ステーションでのモーニングルーティンを教えてください。

毎朝7時半に朝礼が開始するので6時に起床します。まずは、ごはんを食べて身支度を整えてそれからトイレも済ませますね。そして、その日の作業スケジュールを確認。その後、メールや朝に入ってくる色々な情報の確認を行います。それからみんなでお互いどんな状況か、元気でやっているかを聞きながら朝礼に臨みます。前半の5ヶ月間、私が船長を務めていた時はロシア側のモジュールにも行って、ロシアの宇宙飛行士がどんな状態か、元気にやっているのか、仕事が忙しくないのか、大変なことはないか、なにか問題があるかを聞きに行っていました。

Cell Gravisensing実験のサンプルを細胞培養装置(CBEF)にセットアップする星出宇宙飛行士 ©️JAXA/NASA

 Q2 今回の滞在で個人的な新発見はありましたか?

新しい発見ではないのかも知れないですけど、改めて人間が宇宙に住むことは、もはや日常、当たり前にできることなんだなと感じました。トイレ、入浴、衣服、食事などが若干不便に感じますが、しばらくすると慣れてきて普通に生活できるというのは人間の適応力の凄さなのかも知れないですね。もう人間が宇宙に住むことはなんら不思議なこと、大変なことではないと改めて発見しました。

宇宙で初めて栽培され収穫された唐辛子と星出宇宙飛行士らISS第66次長期滞在クルー ©️JAXA/NASA

Q3 人類が宇宙にいくことのおすすめポイントは?

人類が宇宙に行くといっても色んな場所があると思います。今、我々がいる国際宇宙ステーションがあるのは、地球からたかだか高度400kmの上空。低軌道と呼んでいるくらい地球に近いところなんですが、ここでも無重力の空間を活用した実験ができます。無重力なのでスーパーマンみたいに空を飛べるとか、窓から地球をボ~と眺めて美しい地球を見ることもできます。あと、遠くに行くことによって、月や火星に行くにあたって様々な知見を得られたり、地球や太陽系をより知ることができるのも大きなメリットですね。

キューポラ(観測窓)から撮影された地球の写真 ©️JAXA/NASA

Q4 最初と今回の宇宙滞在で宇宙から見た地球に変化はありましたか?

今回、私にとっては3回目の宇宙飛行であり、2度目の国際宇宙ステーションでの長期滞在となりました。過去に比べて、大きく地球に変化があったかと言われるとそれはわからないですね。私自身の目で見ても、大きな変化は感じられなかったです。例えば氷河の後退、海の汚染、森林伐採などは、長年蓄積したデータや映像などを地道に研究し続けることでわかることだと思っています。我々は宇宙から写真などで記録することによって研究活動に寄与することになるんだと思っています。

Q5 宇宙空間でこんなサービスがあったらと思うものはありますか?

アメリカ、ロシア、それから日本の宇宙食、今は種類が本当にたくさんあります。今回、フランスの宇宙飛行士と一緒に滞在してたので、フランスの宇宙食も楽しむことができました。これから、より多くの方が宇宙に来られる時代を考えるとバラエティがもっと増えて、すぐ手に入ると良いですね。例えば、今この瞬間にイタリア料理やベトナム料理が食べたいと思ったらすぐに持ってきてくれる、そんな出張出前サービスがあったら楽しいですね。

それから、今後の宇宙開発にあたっての課題でもあるんですけども、やはり、宇宙のゴミが増えてきています。今はゴミを出さないようにロケットが衛星を打ち上げた後にきちんと廃棄されるような仕組みを考え、そのゴミを監視するシステムを構築して見守っています。宇宙ステーションにゴミがぶつかると大変なことになる可能性もあるので。その危険性自体を下げるためにゴミを除去するサービスができるとありがたいですね。

Q6 どんな宇宙旅行がオススメですか?

民間の宇宙旅行は間近というよりもまさに始まっているんです。この宇宙ステーションにも皆さんが滞在する時代になっています。宇宙ステーション以外でも、民間企業がロケットや宇宙船を持って、旅行者を宇宙まで送り届けて地球に還すといったことが行われています。そういったことは、これからどんどん増えていくんだろうと思います。オススメとしてはやっぱり宇宙ステーションのある低軌道に何日間か滞在をして地球を眺める。あとは、月まで行けるようになったら、丸い地球を見ながら晩酌ができたら良い思い出になるんじゃないかなと思います。

Q7 宇宙を舞台に活躍するためにはどんなスキルが必要ですか?

日本国内だけではなくて諸外国の方々と専門的なところで新しいアイデアを構築しながら協力していくというのが必須になってくると思います。その中でやっぱり語学はツールとして大事だと思うんですよね。英語はもちろん、違う言語を学ぶというのは必要だと思います。もうひとつは宇宙に関わらずですが、やっぱりチームワークですよね。どんな世界であっても一人でできることは限られています。より素晴らしいこと、より大きなプロジェクト、より新しいことを行うためには、人との繋がり、協力が大事になってきます。私も、一緒に滞在している宇宙飛行士たち、地上にいる管制官、エンジニア、研究者といった色々な方々とこのミッションを作り上げてきて、改めてチームワークの能力が非常に大事だと感じました。

軌道上でのSpace Embryo実験を見守る関係者の様子 ©️JAXA

Q8 宇宙飛行士として大切な資質はなんでしょうか?

宇宙飛行士には色んな能力が求められると思います。コミュニケーション能力はもちろん、自分の専門的なバックグラウンドをベースにした応用力、判断力など。今回活動してきた中で特に大事だと思ったのは、状況を把握する能力ですね。常にお互いが何をしているのか、あるいは地上は何をしているのか、全体の時間軸の中でどういった流れで計画が進行しているのか、そういったことを常に把握してきました。それによって、自分の作業にどういう影響があるのか、あるいは自分が行う作業が他の作業にどういう影響を与えるのかを理解できる。そうすると、なにか想定外のことがあった場合でも、計画を変更して、お互いに助け合うことができるようになるのかと思います。

ISS滞在100日を記念して撮影を行う星出宇宙飛行士らISS第65次長期滞在クルー ©️JAXA/NASA

Q9 国際宇宙ステーションの船長として大事にしていることは?

みんなが働きやすい環境を作るということですかね。非常に高い能力を持った宇宙飛行士たちばかりなので事細かに何かする必要はありませんでした。働きやすい、コミュニケーションを取りやすい、助け合いやすい、そういった環境を保つことは大事にしていました。それから宇宙飛行士だけではなくて地上のチームとのコミュニケーションを密にすることで地上のチームがどういう苦労をしているかを理解して、解決策を提案してみたりしました。あるいは、その逆も同じで、我々が困っていることを地上に伝え解決策をもらうこともできました。そういったコミュニケーションを取ることを心掛けていましたね。

船外活動(EVA)の準備作業を行う星出宇宙飛行士ら ©️JAXA/NASA

Q10 各国の宇宙飛行士とコミュニケーションをとる上で言語以外に大切にしているものは?

一番大事なのはやっぱりお互いをリスペクトすることだと思います。お互いを思いやる、相手の考え方、文化をリスペクトして対応する。これは国際宇宙ステーションの中の話に限ったわけではなく世界的に活動するにあたって、皆さんも大事にしていただきたいなという風に思っています。

宇宙服と星出宇宙飛行士らSpaceX Crew-2クルー ©️JAXA/NASA

Q11 宇宙を一言で表すとしたら?

プロフィール

星出彰彦

ほしで・あきひこ | 1968年、東京都生まれ。1992年、宇宙開発事業団(現JAXA)に就職。2008年「きぼう」に搭乗。2009年「ISS」に搭乗、船外活動において日本人宇宙飛行士の最長時間を記録。2021年、日本人2人目となるISS船長として長期滞在のミッションを行う。2021年11月9日に帰還。

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