カルチャー
6月はこんな映画を観ようかな。
ジメジメした空気をすっきりさせてくれるかもしれない7作。
2021年6月1日
text: Keisuke Kagiwada
『コンティニュー』ジョー・カーナハン(監)
開始早々、寝ている筋肉ムキムキの主人公ロイは、謎の刺客に襲いかかられる。なんとか撃退するも、畳み掛けるようにいろんな奴から波状攻撃を受ける彼は、どうやら同じ1日を繰り返し生きているらしい。ド派手なアクションがてんこ盛りで満足至福。ラスボスがメル・ギブソンだったり脇を固めるキャストが豪華なのだが、個人的にはくのいち的な暗殺者“観音”が気になった。6月4日より全国公開。
『逃げた女』ホン・サンス(監)
これまで夫とは片時も離れたことがなかった女が、彼の留守中に三人の友人を訪ねて旧交を温める。女は誰かに会うたびに、「夫が言うの。愛する2人は一緒にいなきゃ駄目だって」と同じ説明を繰り返すのだが、あんまり繰り返すものだから、逆に何かあったのかなぁと思ったりもする。もちろん、説明はないんだけど。それだけと言えば、それだけの物語。なのに、「あー、映画を観たなぁ」と思えるのは、まるで蜜を求めて羽ばたく蜂のような軌跡を描くカメラワークのせいか? 6月11日より全国順次公開。
『グリード ファストファッション帝国の真実』マイケル・ウィンターボトム(監)
主人公はファストファッションブランドを立ち上げて巨万の富を築いたリチャード。まるでギャングスタのような彼の栄枯盛衰をテンポよく描く。「TOPSHOP」などを保有していたアルカディア・グループのオーナー、フィリップ・グリーン卿がモデルだそうな。リアリティ・ショーに出演しているリチャードの娘とその彼氏がボンクラすぎて、彼女たちを中心に据えたスピンオフ作品を観たくなった。6月18日より全国公開。
『幸せの答え合わせ』ウィリアム・ニコルソン(監)
イギリス南部の海辺に暮らすグレースとエドワードは、もうすぐ結婚29周年を迎えようとしていた。しかし、1人息子ジェイミーが久しぶりに帰ってきた週末、些細な言い争いが災いして、エドワードは家を出ていってしまう。彼にはいろいろと積もり積もった思いがあったようだ。本作は、そんな三人の感情の機微を繊細に描く。『20センチュリー・ウーマン』とはほぼ正反対の性格と言っていいグレースを演じたアネット・ベニングをはじめ、役者の演技を堪能するタイプの作品だ。6月4日より全国順次公開。
『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』ジャスティン・カーゼル(監)
19世紀のオーストラリアで、権力と差別に立ち向った伝説の反逆者、ネッド・ケリーの伝記映画。貧しいアイルランド移民の家庭に育ち、山賊に売り飛ばされたことでアウトサイダー街道を歩み始めた彼は、青年になると警察の横暴さに怒りを募らせ、仲間とともにケリー・ギャングを結成する。彼の波乱万丈な生きざまは、まるでパンク歌手のドキュメンタリーを観ているかのよう。ジョン・ウォーターズ監督が“2020映画ベスト10”に選出していたのも納得。6月18日より全国順次公開。
『グッド・オン・ペーパー』キム・ゲートウッド(監)
恋よりもキャリアを優先してきたスタンダップ・コメディアンのアンドレア・シンガーの前に現われたのは、非の打ち所がないほどパーフェクトな男。すぐに結婚を決めようとするシンガーだったが、彼女の親友は「完璧すぎて逆に何か裏があるんじゃないか?」と疑う。という感じのラブコメなんだが、シンガーを演じるのはスタンダップ・コメディアンのイライザ・シュレシンガーで、本作は彼女自身の身に起こったほぼ実話らしい。シュレシンガーは同じくネトフリ配信のシリアス映画『私というパズル』にも出ていたっけ。6月23日よりNetflixで配信。
『ファザーフッド』ポール・ワイツ(監)
『アメリカン・パイ』などの監督として知られるポール・ワイツが最新作で描くのは、妻に先立たれたマットが、七転八倒しながら男手1人で幼い娘を育てる姿。同じワイツ監督作でいうと、どこか『アバウト・ア・ボーイ』を思わせる、心温まる家族映画に仕上がっている。娘の髪を結ぼうと悪戦苦闘するマットが、なんだかジンワリきた。早く帰宅した夕方、こういう作品を観るとなんか贅沢した気分になれる。6月18日よりNetflixで配信。
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