トリップ

【#3】ON THE ROADERS 〜Death Valley〜

執筆: 〈Bong Sadhu〉Mikito Hyakuno

2023年10月31日

photo: Mikito Hyakuno
text: Mikito Hyakuno
edit: Eri Machida

Death Valley

10月発売の本誌でも取り上げて頂いたように、僕たちはLA ART BOOK FAIRへ出展するため夏の間、太平洋の反対側の地に滞在していた。そして、そのフェアが終了した後、1週間ほどロードトリップに出かけた。総距離3500kmの旅。仲間たちが撮った写真を添え、このスペクタクルな旅の記録を、計4回に分けてまとめてみた。

第1回第2回はBong Sadhuの相方である金田がこの旅の紀行文を書いていたが、今回は私、百野が思い出をさかのぼり記録していく。

3. Death Valley

車内
空

旅も折り返しに入り、深い闇の中、我々は次なる地へと車を走らせていた。次に向かうDeath Valleyは地球で1番暑いと言われる地である。LAを出る前に現地で知り合った人達には、このハイシーズンにこの地へ行っては死んでしまうから寄ることは薦めないと散々言われてきた。まさに死の谷を意味する地で、直前に何人か亡くなった話も伺った。そこで我々の予定は早朝に駆けつけ、景勝地から日の出を見ようとなり、深夜になるにも関わらず車を走らせたのだった。

深夜の道路

辺り一面街灯ひとつない荒野を走り続け、気付けばネバダ州に入るところであった。景色は全く見えず、真上に見える星空が、1番明るく、そして美しかった。これ程美しい夜空を眺めたことは今までになかった。球体の形がわかるほどに地平線が広がり、その先にも星々が見えた。スピードを出す中窓を開け、真上を見続けてしまった。遠くからでも明るく見えるコンビニ付きのガソリンスタンド。ここで止まって一服するのもロードトリップの醍醐味だ。

コンビニ付きのガソリンスタンド

このルートは途中ラスベガスを通るのだが、ここは本当に眩しい街すぎたのだ。正面に街が見えた途端、都市の夜景が思い切り目に入った。一度は車を停めて散歩したものの、今回の旅にとってはこんな街に用は無いので、約1時間程でこの街を後にした。資本主義経済の街の象徴のような建物ばかりで、カントリーサイドから訪れたギャップに精神が少し削られてしまった。

ラスベガス

深夜3時。ひたすらに車を走らせた。この間は今回の旅で1番長い移動であった。夜明け前にデスバレーの景勝地に私たちは1番乗りで到着した。朝日は赤みがとても強く、眩しかったはずなのに、直接眺め続けてしまっていた。この自然の時間と流れを目の当たりにし、とても儚い気持ちと新たに体現出来た悦びに満ち溢れていた。日の出と同じ方向に茎を生やす草木に強く共感出来る。深夜の疲れが吹き飛ぶ程朝日の力は凄かった。私達を含む生命たちがこの1日を始める朝日に活力を吹き込まれていた。デスバレーはスターウォーズのロケ地でも知られていて、確かにこのパワーみなぎる砂地は宇宙を連想させる。

朝日
朝日
Death Valley

気づけば午前8時。もう既に気温は40℃にも登っていた。空気はカラッとしていて、日差しさえ直接浴びなければ日本の真夏ほどの酷暑ではないはずだが、ここは荒野で日陰が一切ない。日の出後も辺りを散策していたのだが、この暑さになると流石に耐えれず、もう出発して逃げなければと直ぐに走らせたが、ここは広大な国立公園。総面積は岩手県とほぼ同じくらいである。抜け出すのに3時間車を走らせていた。

デスバレー国立公園
デスバレー国立公園
デスバレー国立公園

なんとかデスバレーを抜け出し、昼前にダイナーに到着。カントリーサイドのTHEアメリカンなスタイルのダイナー。あのコーヒーとハンバーガーを食べた。僕らはダイナーが好きで思えば毎日のように寄っていた。都会にあるような喧騒は全くなく、西部の独特の雰囲気をまとっていた。

ダイナー
ダイナー
道

夕方くらいに宿に到着し、そこに併設されたレストランで夕食を取る。その日の夕方の空は、あまりにも雲が赤く染まっていた。ここの宿は街からかなり外れており、国道に面した川沿いのオアシスのような場所であった。宿の飼い猫が可愛くて堪らなかった。ヨセミテ国立公園からは少し離れているが、このディープすぎる宿に辿り着けたのはかなりラッキー。その日の夕食のピザは大きさ22インチもあり、一切れを食べるので皆精一杯。その後、夜の静けさにひと段落し、旅の振り返りをしながら、火を眺めた。我々は明日のヨセミテ国立公園に備え、ばたりと寝てしまった。

夕方の赤い空
宿の飼い猫
ピザ
Bong Sadhu

翌朝の出発前。グレイトフル・デッドを愛してやまないオッチャンに出会った。ハーモニカとギターを手に、歩き回っている。ギターを渡されたものの弦が一本切れていたし、話す事も全てがめちゃくちゃだった。Facebookに出回っている画像を見せられ、大声で笑い上げていた。バンに乗って妻と2人で放浪をしている途中とのこと。この旅のスタイルはとても魅力的だ。そんなこんなでこの宿を後にし、我々は最終の国立公園となる「ヨセミテ」に向かっていった。

出会った人
ギターを弾くおじさん

プロフィール

百野幹人

ひゃくの・みきと|2000年生まれ、辻堂湘南出身。主に写真家として個人の製作の傍、パブリッシャーBong Sadhuを金田大巧と運営し、国内外のアートブックフェアに参加。またDJコレクティブ Million Dollar Soundsのメンバーでもあり、活動は多岐に渡る。

Instagram
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