カルチャー
ずーっと、見ていたい。画家、デイヴィッド・ホックニーの喜びに満ちた世界。
27年ぶりの大規模個展が東京都現代美術館で開催中。
2023年7月20日
text: Ryoma Uchida
何度も観たい映画というのはあっても、何度も通いたい展示に出会うことは珍しい。じっくりと作品を見て、その世界に身を委ねて呼吸をしてみれば、絵を”見る”とはこういうことなのかも、と思えてくる。そんな体験を味わうことができるのが、東京都現代美術館で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」だ。

2011年 ポンピドゥー・センター ©︎ David Hockney Photo: Richard Schmidt
最近でも欧米を中心に個展が相次いで開催され、ロンドンのロイヤル・ アカデミー(2012年)やパリのポンピドゥー・センターでの個展(2017年)では60万人以上の来場者数を記録。現在、世界で最も人気のある作家のひとりであるデイヴィッド・ホックニー。
日本では27年ぶりとなる久々の大規模個展。本展では、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった多岐にわたる活動から、近年の風景画の傑作〈春の到来〉シリーズやCOVID-19によるロックダウン中にiPadで描かれた全長90メートルにもおよぶ新作(圧巻!)まで、全8章・120点余の作品を紹介。彼の60年以上におよぶ画業をたどる、充実した展示となっている。

2021年 作家蔵 ©︎ David Hockney Photo: Jean-Pierre Goncalves de Lima
デイヴィッド・ホックニーはイギリスにおけるポップアートの運動に出自をもつ画家だ。上のキュートな写真からも分かるように、カジュアルな振る舞いと作風のイメージがあるけれど、それとは裏腹に、美術史に関する著作も多く残してきた理論派な一面もある。パブロ・ピカソらキュビスムの複雑な画面構成や、印象派のような戸外制作、日本の石庭鑑賞の伝統や絵巻物からもヒントを得て作品に取り入れるなど、特定の流派や動向のなかに身を置くのではなく、常に新たな表現方法を探究してきた。
それは、現実世界を目に見えるまま描こうとすればするほど、かえって作品からリアリティが離れていくと考えるからである。表現の枠を飛び越えながら、今、まさに目の前に存在する世界を「どのように見るのか/描くのか」と人生を通して模索してきたのだ。

1967年 東京都現代美術館 ©︎ David Hockney

1970-71年 テート ©︎ David Hockney
iPadで描かれた新作は、そんな約60年の画業で追い求めた表現の結晶といってもいい。デジタル機材を持ったことで制作スピードが上がり、より”瞬間”を捉えられるようになったそうで、画面には自然の絶え間ない変化が捉えられている。自分たち鑑賞者は90mにおよぶ絵の中を散歩しながら、その移ろう時間、景色、画家の記憶と想像の世界を共有することになる。

2020-21年 作家蔵 ©︎ David Hockney

2020-21年 作家蔵 ©︎ David Hockney
実際に鑑賞してみれば、その人気の理由がわかるはず。現在86歳のホックニーが歩みを止めず絵画を探究し続けてきたパワーと、彼の作品でしか出会えない景色が会場にある。近年のインタヴューで「描くことは、風景を計測するのとは違う。喜びを計測することはできない、そうだろう?」(※1)と彼が語ったように、本展はまさに”計測できない喜び”でいっぱいに包まれていて、何度も訪れたい、むしろずーっと見ていたい展示だ!
(※1)『春はまた巡る デイヴィッド・ホックニー 芸術と人生とこれからを語る』(青幻舎)p.130
インフォメーション

デイヴィッド・ホックニー展
会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室1F/3
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
開館時間:10時~18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
※7/21、7/28、8/4、8/11、8/18、8/25(すべて金曜日)はサマーナイトミュージアムを開催。21時まで開館
観覧料:一般2300円、大学生・65歳以上1600円、中高生1000円、小学生以下無料
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