12回に渡ってお送りした連載「RADICAL Localism」がRadioになってリニューアル。アートへの深い観察がどのようにして人間の意識を拡張してきたかを紹介するこの企画。タイトルの「Deep Looking」とは、この不確かな時代に生きる私たちが自らの手で未来を切り拓くための想像力を蘇らせる深い観察を意味します。
今回は、イギリスの美術史学者T. J. クラークが行ったディープ・ルッキングの実験について紹介します。美術作品のまわりに存在する文脈も含めて研究をしていたクラーク。なかでも、19世紀半ばから後半にかけて産業に飲み込まれていったヨーロッパの社会変革がどのように美術鑑賞に影響したかについて研究を深めていました。2006年に出版された著書『The Sight of Death(死の光景)』では、一つの絵画作品を観察する実験が日記やメモのように収められています。ギャラリーや美術館に行き、作品を鑑賞するというシンプルな行為がいかに政治的で一つの抵抗でもあるか考えていきます。



プロフィール

ロジャー・マクドナルド
東京都生まれ。幼少期からイギリスで教育を受ける。大学では国際政治学を専攻し、カンタベリー・ケント大学大学院にて神秘宗教学(禅やサイケデリック文化研究)を専攻、博士課程では近代美術史と神秘主義を学ぶ。帰国後、インディペンデント・キュレーターとして活動し、様々な展覧会を企画・開催。2000年から2013年まで国内外の美術大学にて非常勤講師も行う。2010年長野県佐久市に移住後、2014年に『フェンバーガーハウス』をオープン、館長を務める。NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]設立メンバー。AITのオンラインアート講座「Total Arts Studies」ディレクター。著書『DEEP LOOKING 想像力を蘇らせる深い観察のガイド』が発売中。
Official Website
fenbergerhouse.com