フード
【#3】おふくろの味 カップヌードル
2022年12月31日
text: Gabin Ito
のりしおポテチの話の次は、前回ちょっと触れた「唯一無二の味」「代替不能麺」ことカップヌードルの話です。
「おふくろの味」
この言葉を聞くと、みなさんの脳裏に浮かぶのはどのような料理でしょうか。肉じゃが? ハンバーグ? ナシゴレン? なんでもいいんですが、私の場合は、なぜか「カップヌードル」なんですよね。
といっても、日清食品創業者安藤百福が母なわけではありません。
カップヌードルばかりを作る母だったわけでもありません。
母は料理が下手だったわけでもありません。むしろうまかった。
だけど、子どものころアホほど食ったのがカップヌードルで、子ども時代の記憶とあまりに密接に結びついていて、母の記憶と引き剥がし難くべったりと一体化してしまっているんですよね。
子供の頃の私は空手少年で、当時子ども用道場がなかったがために社会人向けの夜7時スタートの道場に週3回通っていました。夜7時スタートで、あまりに夕食時過ぎませんか今考えてみると。
まあまあ遠いところにある道場だったので、道場前に腹ごしらえをしなくてはならない。
しかし共働きの両親が帰ってくる時間はまだ先。
というわけで、小学生男子が安全にひとりで作って食べられるものとしてカップヌードルが光り輝き、それを繰り返し食べていたというわけなんです。
ちなみに実家はスーパーだったので、賞味期限切れで廃棄処分の食材を中心に食べてました。
体のほとんどが賞味期限切れ食品とカップ麺でできてるってことですね。いまのところ普通に生きてます。人間て意外と丈夫。
ちなみに1992年にアノーマリー展ていう展覧会があったのですが、そこに私は《セルフポートレイト1972-82》っていう少年期に食べたインスタントラーメンを計算して作った銅像ならぬラーメン像を作ったこともあります。

カップヌードル食べてますか?
私は、食べているって言えば食べているのですが、だんだん食べることに緊張を伴うようになってきています。
なんというか、
「カップヌードルに湯を注ぎ、3分待つ」
という行為に宗教の儀式的なものを感じ始めています。
3分たって、フタをペリリと剥がして、そこにある具材と麺をのぞく。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ(フリードリヒ・ニーチェ)よろしく、
カップヌードルをのぞく時、カップヌードルもまたこちらをのぞいているのだ。
という気分になるんです。オチはとくにありません。
プロフィール
伊藤ガビン
いとう・がびん|1963年生まれ。編集者。映像にフォーカスしたメディア「NEWRELL」の編集長を務める。書籍、web企画の他、ゲーム「パラッパラッパー」などの制作も手がける。
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