フード
【#2】のりしおに取り憑かれた理由
2022年12月24日
text: Gabin Ito
先週のこのコーナーで、「#のりしお研究」について書きました。
実のところ、最近はのりしおの「新作」にあまり興味が持てなくて、#のりしお研究 のポストも少なくなってきていたんですね。
それで、感傷的に「思い出」として先週のコラムを書いたところもあるんです。
しかし奇跡が起きました。
原稿を書いたその当日(つまりまだ記事が出ていないタイミング)、職場の大学に行って自分のメールボックスをみると、無造作に突っ込まれた怪しげなブツが。
開封すると、ノーメッセージで、のり的なものが入っていて笑ってしまった。まだ「のりの人」として認知されていたのか!
しかも、世界最優秀のりこと、はばのりだ。千葉の人たちがアホほどお雑煮にいれるというあのはばのり。この年末のタイミングで!?
のりしお全然関係なく嬉しいんですけど。しかも話を聞くと、青のりと間違えて持ってきたとか。いやいやいやいや。これが一番うれしいです。
カメラマンの池田晶紀さんからのいただきました。神田ポートビルで売るらしいで。
それはさておき。
僕がなぜ、のりしおを執拗に食べ始めたのかをついに説明するタイミングが来たような気がします。のりしお研究とか言いながら、その理由を述べたことがなかったスね。
実はですね、のりしおを食べ始めたきっかけはカップヌードルなんです。あの日清のカップヌードルがきっかけだったんです。
僕はカップヌードルが大大大大だーい好きなのですが、ある日、別メーカーのカップ麺制作関係者とお話する機会があったんですよね。
「ガビンさん、これ食べてみてください。めちゃくちゃ美味しいんで。食べ比べてみてもらったら、わかるんですけど、カップヌードルとかより全然美味しいですよ」
と熱弁を奮われた。
実際、そのカップ麺を食べるとめちゃくちゃうまい。いまの技術をフル稼働させ、味のトレンドも見逃さない完成度が天井を突き破らんばかりの美味美味麺だった。
しかし….本人には言えなかったけど、( 僕が食べたいのは美味しいカップ麺ではなくて、カップヌードルの「あの味」なんだよな…..)と感じていた。
「あの味」。そう「あの味」だ。美味しいとか美味しくないとかいう次元にない「あの味」を定期的に求めてしまう。「あの味」を思い出したが最後、食べないという選択肢がなくなる「あの味」。この原稿読んだ人の8割はいまからカップヌードルを食べることになるだろう。
それから「あの味」について、ことあるごとに考えるようになった。そしてカップヌードルの「あの味」と同じポジションを得ているものはなんだろう? と考えるようになった(暇なのか俺は)。
マクドナルドの素バーガー(アップルパイもね)、セブンイレブンの素コーヒー、など個人的なマズうまフーズは数あれど、おそらく共感度がバチバチに高いのは「湖池屋ののり塩」なんじゃないかと思って、確かめるために湖池屋ののり塩を食べたってことなんです。
しかも、ここには対抗勢力であるカルビーの「のりしお」があるじゃないですか。
これは意見が分かれるところでしょう? 湖池屋か、カルビーか。
しかし僕はふしだらなので、どっちでもええやん、と思うタイプなんです。すいません。
とにかく。
湖池屋あるいはカルビーの「のりしお」が醸し出す味。それに惹かれてまして、アホのように「のりしお」を食べまくってしまった、というわけなんです。
そして最終的に、どれもこれもうまい、という悟りの境地に至ったと。
でもねえ、正直言えば、昨今の、昨今の新ネタね。やれ「神のり塩」だ、「のりしおとごま油」だ、ってね。
大事だよね。こうして季節ごとにのりしおのプレゼンスを高めてくれてありがとう! でもなー、一回食べれば十分だったりする。新作を食べ、そして原点(素湖池屋、素カルビー)に戻るというのりしお輪廻。
のりしおに興味ない人は、「なんかあたらしいの出たな」くらいで買ってると思うんですよ。でも僕は春と秋あたりに登場する新作「のりしお」は、のりしおファッションウィークくらいの季節行事として楽しんでいます。そしてファッションを楽しんだ後は、おうちで原点にもどる。この時間、プライスレス。
プロフィール
伊藤ガビン
いとう・がびん|1963年生まれ。編集者。映像にフォーカスしたメディア「NEWRELL」の編集長を務める。書籍、web企画の他、ゲーム「パラッパラッパー」などの制作も手がける。
Twitter
twitter.com/gabin
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