ライフスタイル

シティボーイのための宴会芸。Vol.9

2022年10月5日

photo: Kyuseishu & Ganjiro Hanayama
text: Michael Mitarai 
edit: Yukako Kazuno

「トーテム・ポール」

チルな季節がやってきた。秋だ。

気の合う仲間と集まってBBQ、なんて休日を企んでいるシティボーイも多いと思う。火を囲みながら肉を焼いて語り合う。それってとってもリアルを感じる瞬間だ。当たり前すぎて誰も口にはしないけど、みんながちょっと声が大きくなってるのは、その手に持ったクラフトジンのせいだけじゃないはず。

特別な一日の思い出を特別な写真に残すのは、そう、宴会芸だ。
シティボーイ諸君にぜひチャレンジしてほしいのが、集合写真芸の傑作「トーテム・ポール」だ。

トーテム・ポール

トーテム・ポールとは本来、北米先住民が部族の歴史や物語を刻み込んで作ったモニュメントだ。宴会芸のトーテム・ポールはそこから「頭が縦に並んでいる」という要素だけを大胆に抽出している。宴会場のセンパイたちが物事をシンプルにする力には、いつも驚かされるよね。

この芸が集合写真芸として優れているのは、みんなのクールな表情が引き出せるところだ。下の人は結構な負荷がかかるので、きばった顔になるし。上の人はスカしたとぼけた顔になる。つまり、重力が自然なグラデーションを生み出すんだ。そんなポージングって、他にあるだろうか。

ちなみに、文献には”身体の部分を幕や襖(ふすま)などで隠して貰えば、雰囲気が出る”とも書いてあった。そこまで深追いするかどうかは、各自の判断に任せよう。

それにしても。こうして出来上がった写真を見ると、歴史や物語がどことなく刻み込まれているように見えるのは、気のせいだろうか?

さて、約1年間で100近い宴会芸を紹介してきたこの連載も、今回で最終回。この世界のどこかに、僕らが伝えた「シティボーイのための宴会芸」を身につけてくれたヒップなシティボーイがひとりでもいると信じている。

もちろん僕たちは、変わらずに東京のあちこちで宴会芸を研究し続ける。もし、シティボーイ諸君のこれからの人生で宴会芸が必要になった時には、日本宴会芸学会を思い出してほしい。そして、街角で宴会芸をやっている僕らを見かけたら、あたたかい目で見てほしい。

宴会芸というカルチャーを追いかける中で、シティボーイ諸君と出会えたこと、心から感謝している。

それでは。宴会場でまた会おう!

「世界は宴会場。生きることは宴会芸。」

プロフィール

マイケル御手洗

マイケル・みたらい|1986年生まれ。日本宴会芸学会研究員。専門は宴会芸哲学。2018年に開催された第74回日本宴会芸学会で「特別講義:マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」を開講。カントやベンサムを引用しながら“宴会芸における正義とは何か?”を語り掛ける、ナラティブでプラクティカルな講義を繰り広げ、宴会芸研究に新しい地平を切り開く。今夏はサブカルチャーの祭典「コミケ100」にも参加した。

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第74回日本宴会芸学会「マイケル御手洗の宴会芸白熱教室」講義録
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