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〈BEAMS PLUS〉と〈J.Crew〉が一緒に洋服を作った。
J.Crew × BEAMS PLUS
2022年9月15日
photo: Omi Tanaka
coordination: Momoko Ikeda
special thanks: Yoichiro Nakamura, Anna Tomita
〈NOAH〉で活躍するレジェンドデザイナー、ブレンドンが〈J.Crew〉のメンズクリエイティブディレクターに就任し、本格始動。
そして早速、〈BEAMS PLUS〉とコラボレーションし、カプセルコレクションの制作に着手というウワサを聞きつけ、はるばるNYまで!
ここはNY、マンハッタンのトライベッカ。高層ビルの40階、広々とした〈J.Crew〉のオフィスの一角で黙々と作業に打ち込むのは〈NOAH〉のデザイナーのブレンドン・バベンジン。昨年、〈J.Crew〉のメンズクリエイティブディレクターに就任し、その再建を託された。〈Supreme〉や〈NOAH〉で培ったスキルを生かして、トラディショナルな〈J.Crew〉はどう変わるのか? 「変えるつもりはない。正しい決断をしていくだけ」という言葉が印象的だったが、早速〈BEAMS PLUS〉とのカプセルコレクションの制作を発表し話題に。お互いのトラッドマインドが見事に重なり合い、作られたカプセルコレクションはまさに「正しい選択」のように思える。ブレンドンと〈BEAMS PLUS〉ディレクター・ミゾさんこと溝端秀基さんの対談で紐解いていくとしよう。
BR
僕にとって〈BEAMS PLUS〉はフェイバリットなブランドなんだ。日本は僕らアメリカのスタイルを異なるレンズで解釈してくれた最初の国だと思う。日本に行って驚いたのは、他の国のエッセンスを抽出し僕らよりもずっと上手に服を作るセンス。 残念ながら僕らの負けって感じだ(笑)。〈BEAMS PLUS〉はまさにそんなブランドなんだよ。
MIZO
すごく嬉しいですね。世界中どこを探しても見つからないアメリカのヘリテージを受け継いだ服が、〈BEAMS PLUS〉にだけはあると思ってます。それは自信がありますね。……あと実は、僕は昔からブレンドンの大ファンで。ファッションを好きになるきっかけを作ってくれた人なので、その人と一緒にコレクションが作れることは夢のようです。泣きそうです!(溝端氏、目が潤む)
BR
頭ではイメージできるんだけど、実在しない服ってあるよね? 例えば伝統的なアメリカンな服って、アメリカでは長い間作られてなかった。でも『BEAMS PLUS』に行けば、頭の中で描いていたアイテムを見つけられる。靴下に、セーターにシャツ、靴などなど、夢見ていたアイテムが1か所に集まってるんだ。〈J.Crew〉も同じくアメリカンスタイルに対する敬意があるから、とてもいいコラボレーションになると思ったんだ。つまり〈BEAMS PLUS〉の視点は、〈J.Crew〉と同じってことだね。
MIZO
まさに、僕もそう思ったので、今回ブレンドンがメンズクリエイティブディレクターに就任するというニュースを聞いて、すぐにこの企画をプレゼンする準備に取り掛かりました。ブレンドンってスケートに根ざしたカルチャーをファッションに上手に取り入れた人だと思っています。彼が〈Supreme〉在籍時に作ってたものって、シンプルなんですけど、誰が着てもそれぞれの個性が表れるようなコレクションでした。僕はそこにとても憧れたんです。
BR
自分がずっと考えていたことをいま初めてMIZOが口にしてくれたね! スタイルっていうのは、インディペンデントで個人的なことなんだ。シンプルな白Tとチノパンだってスタイルはスタイル。残念ながら、いまの時代のファッション業界ってファッションをビジネス化しすぎてしまっている気がするよ。モノを売るためのメカニズムになってしまっている。スタイルというものは、カルチャーから発展するものだとも思うんだ。例えばテニスプレーヤーやフィッシャーマンのようにね。その人が何をしているかって、すごく重要。スタイルはそこから発展していくべきなんだ。
MIZO
そうですね。一過性にならないものを作り上げるには個性だったり、バックボーン、カルチャーが洋服と結びつくことが大事なんだなって、ブレンドンが作るものやNYに3年ぶりに来てみて、改めて感じましたね。
MIZO
今回僕らからコラボレーションの企画をお誘いしたんですが、やりとりする中で、ブレンドンからのリクエストに感動したんです。トラディショナルとミリタリーをコレクションに組み込めないか、と言ってきてくれて。〈BEAMS PLUS〉のこと、とてもよく知ってくれているなあと。この段階でいいコレクションができるという確信が湧きました。ワークウェア、スポーツウェアも含めたこの4つのカテゴリーは〈BEAMS PLUS〉の大事な屋台骨なんですよ。
BR
トラッドとミリタリーを選んだのは、〈BEAMS PLUS〉が得意とするところだと思ったからなんだ。僕らがやらないようなユニークな手法も彼らの強み。例えば、このタータンチェック柄のカーゴパンツ。僕らだけでは実際に作ることはなかっただろうな。
MIZO
ブレンドンが送ってくれたイメージボードの中には「アメリカの起源としてのイギリス」というメッセージが強かったんです。だから、アメリカンカジュアルウェアに、イギリスのミリタリーウェアをドッキングしました。このマッケンジーチェック柄というのは、スコットランドなどで正装として着られているチェック柄。アメリカのミリタリーのユニフォームであるカーゴパンツと掛け合わせることで、ユニフォームがファッションへと変化したアイテムなんです。
BR
これこそが〈BEAMS PLUS〉らしさだよね。コンテクストがちゃんとある。それが重要なんだ。『UNION』のクリス(・ギブス)が電話してくるのが想像できる。このパンツいいな、って。ぱっと見のデザインでも人を惹きつけるところがあるし、文脈を知れば、同時に深く感動するんだ。
MIZO
いろんなチェックがあるけれど、例えばネルシャツのチェック柄のようなアメリカらしいチェックでこのパンツを作ることは絶対ないですね。それだとおかしなものになってしまうから。このチェックパンツというのは、スコットランドのユニフォームとして確立されているものだからこそ違和感を生まないと思っています。そのあたりの考え方を僕は大事にしました。
BR
僕はクラシックが好きだから、このコートも好きだね。まさに「正しい選択」をしてるって感じがするんだ。僕は〈J.Crew〉を変えようとは思っていないんだ。あらゆる局面で正しい選択をする、っていうことが大事だと思っている。クオリティ、カラー、スタイリング。それぞれ正しい選択をすることが重要。このコートはまさにそれができているんだよ。オリーブの色もクラシックなミリタリー色だし、「ハリスツイード」の生地もしっくりきてて、スタイルに忠実だと感じるね。
MIZO
これは、ブレンドンがくれたムードボードの資料の中にダッフルコートの写真があって。イギリス的なモッズスタイルの要素を組み合わせることができないかな、と思ったんです。素材はイギリスのもの、スタイルはモッズっぽく、ただ形はアメリカのミリタリーウェアに落とし込むというアイテムですね。とても良くブレンドンに似合いますね。寒いNYの冬でも着られるようにと、合わせてライナーも作ったんですよ。
BR
(ネイビーブレザーを手にとって)これこそ、なかなかアメリカでは作れないものだと思う。すごくシンプルでベーシック。小難しい感じがしない。若々しくてクールだ。僕が作ったらおじさんくさいジャケットになってしまう。マジカルだよね。やっぱりこれが一番好きかもな。
MIZO
これは僕らから作りたいって提案しましたね(笑)。ブレザーは〈BEAMS PLUS〉にとってユニフォームみたいなものなので、好きって言ってくれるのが嬉しくて。何か行事があったりすると、スタッフは何も言わなくてもネイビーブレザーを着てくるんです。世界一ブレザーを着てる会社かもしれません。紺ブレは毎シーズン作っていますが、気になることがあればアップデートし続けているので、思い入れも人一倍。今回はおじさんくさいものをいかに軽くするかっていうのがポイントだったので、袖裏もあえて抜いて、袖の作りも本切羽にして、ボタンを外せば袖をまくってライトに着られるようにしました。ウール素材じゃなくてコットンベースにしてるっていうのも、若い人に自由に羽織ってほしいという思いがあるんです。
BR
今回のカプセルコレクションはネームタグも面白いんだ。〈J.Crew〉はカタログ販売からスタートしたブランドだから、そのクオリティは素晴らしい。写真がとにかくいいんだ。僕もこれを見て育ったんだよ。大きなインスピレーション源になるね。
MIZO
僕らにとって、〈J.Crew〉といえばこの旧タグで。今回は〈BEAMS PLUS〉のタグに〈J.Crew〉のタグを重ね合わせたようなデザインにさせてもらいました。
BR
さっきも言ったけど今回のコレクションは、トラッドとミリタリー要素にイギリスの文化が反映されて、ユニークな作品になった。ニューヨークで育つと、イギリスの文化から借りてきたものがたくさんあると感じられるんだ。ここマンハッタンは都会だけど、3時間ほどドライブすれば僕の好きなモントークの街がある。MIZOにも僕のおすすめの場所をいくつか紹介したよね?
MIZO
そうですね。出張でNYに来ても、ブルックリンくらいまでしか行かないので、いい機会だと思って、今回モントークの街も見てきました。ブレンドンのおすすめの店が全部良くて(笑)。僕は出張でボストンやメイン州にも度々行くのですが、ニューイングランド地方の雰囲気がここにもあるんだ、というのが新しい発見でした。
BR
モントークを含むロングアイランドには美しいものがいっぱいあるね。次は一緒に行けるといいな。僕は別宅がモントークのスプリングスというエリアにあって、ジャクソン・ポロックの家も5分くらい。海も近いので、よくサーフィンもするよ。
MIZO
モントークを実際訪れてみて、いいインスピレーションが得られそうな場所だなと思いました。次にまた〈J.Crew〉とコラボレーションする機会があれば、ロングアイランド、モントークをテーマにしたものをブレンドンと一緒に作りたいですね。そのために現地のローカル書店でモントークの人々の生活を収めた写真集を買いましたよ。いや、次回のことなど、まだまったく頼まれていないんですけどね(笑)。
BR
ロングアイランドはアメリカが始まった場所のひとつなんだ。第2次世界大戦以降、郊外の街として初めて発展したのがロングアイランドなんだ。兵士たちが戻ってきて、あのあたりに住み出したりしてさ。小さなエリアなんだけれど、海にアクセスできる貴重な場所。労働者たちもたくさん住んでいて、その近くには裕福な人たちの家があったりするのが面白い。豪華なヨットに乗ってるリッチな人が、メカニックと話してお互い海好きってことで友達になったりさ。そういうユニークなことが起こってるんだ。労働者階級のフィッシャーマンとブルーブレザーのヨットマンの両方が共存したコレクションっていうのは面白いかもね! 相互のリスペクトがあるような。僕はここに住んでるからローカルなカルチャーにも気づくことができる。人と違う視点で社会を観察できることが僕の長所だと思ってるよ。
STYLE SAMPLE@J.Crew
J.CrewのNYオフィスでスナップ!!
インフォメーション
J.Crew × BEAMS PLUS
〈BEAMS PLUS〉と〈J.Crew〉によるカプセルコレクションは全部で14型。ここで紹介したアイテムの他にもラガーシャツやBDシャツなども。販売はアメリカの〈J.Crew〉での展開と、日本でも少量のみ販売。10月12日より、『ビームス プラス』原宿店、有楽町店にて限定リリース予定。広告のビジュアルにはマイク・ミルズが出演というからこちらも楽しみだ!
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