カルチャー
【#4】文化を繋ぐということ
2022年9月3日
photo & text: Kyoko Tsutsui
edit: Yukako Kazuno
これまでお伝えした玩具花火(線香花火)は約400年続く日本の大切な文化です。線香花火の文化を継承していくということは単純に作り続けるということだけではなく、原料の確保や環境のことまで考えておかなければなりません。
「スボ手牡丹」は、線香花火の原型であり、約400年続く歴史のある花火なのですが残念ながら現在国内で生産しているのは私たちの会社のみとなってしまいました。昔ながらの製法で作っている人が、少なくなるということは、その原料を作っている人も少なくなっているということにもなります。私たちも、原料集めにはとても苦労しています。
近い将来にも原料供給に不安を感じているものがいくつもあります。スボ手牡丹の持ち手の部分は稲藁の芯を使用しています。この藁は、元々藁ぼうきの原料として輸入されていました。
稲穂の部分をほうきに使用し、残りの茎の部分を花火の材料として譲っていただいていましたが、藁ぼうきの需要も少なくなり、高齢になられた製造者の方も廃業されてしまい、2014年頃には原料が手に入らなくなってしまいました。
しかし、諦めませんでした。「辞めてしまえば400年の歴史が止まってしまう…。絶対に守らなければ。」という強い使命感を抱きました。そしてたくさんの人たちの協力を仰ぎ、現在は、新規就農して自分たちで原料を作り出すところからはじめています。
2018年、花火職人・研究者・デザイナーなど様々な視点から、花火の開発、製造に関わる情報を発信する「玩具花火研究所」を筒井時正玩具花火製造所が主体となってを立ち上げ、田植え~稲刈り~スボ抜きと年間3回の体験を通して、主に子供たちにお米から花火を作るという文化を知ってもらうきっかけ作りを行なっています。花火への興味関心を高めてもらうことで、後世に大事に伝えてもらいたいという、私たちの願いです。
【6月 田植え】
【10月 稲刈り】
収穫が済んだら、取れたてのお米を釜戸で炊いて食べます。
最近では花火で遊ぶ場所がないということも問題だと思います。小さな花火(玩具花火)で遊ぶという文化は日本特有の文化ですが、公園や海岸など禁止区域が多く、とくに東京は花火で遊べる場所は多くはありません。東京の子供たちの約3割の子供たちは1度も花火をやったことがないという衝撃の統計結果を目の当たりにしたとき、いくら頑張って作り続けても、遊ぶ場所がなくなっていくのであれば「このままでは花火文化はなくなってしまう…。」と思いました。
次は遊び場の提供まで考えていかなければならないのではないか? と、問題は次から次へ、時代の流れと共にやってきて、文化継承の難しさを感じさせます。私たちは安心して思う存分花火を愉しむことのできる場所の提供を考えました。そこでオープンしたのは『川の家』。
長年線香花火職人として活躍された松吉さんのお家を引退と同時に引き継ぎ、花火を愉しむ場所として活用したいと願い、古民家をリノベーションをし、“花火を愉しむための宿”をつくりました。花火製造業者が運営す宿らしく、アメニティーには花火がたくさんついています。
また、花火ギャラリーの敷地を開放し、一晩限りの花火遊びができるイベント『はなびあそび』も行っています。花火の提供のほか、お家で眠っている花火も持ち込み可能とし、足りなければ花火ギャラリーで買い足すこともできる仕組みとなっています。
或る伝統、文化を繋ぐということは、ひとつも欠かすことなく繋ぎとめていくこと。日本に残る素晴らしく希少な花火文化は、時代の波に流されることなくより良いカタチで受け継がれていけるように、私たちもこれから100年先を見据えて、楽しみながら進んでいます。
プロフィール
筒井今日子(筒井時正玩具花火製造所)
◯福岡県みやま市高田町竹飯1950-1 ☎︎0944・67・0764 営業時間シーズンにより変動
Instagram
https://www.instagram.com/tsutsuitokimasa/
Official Website
https://tsutsuitokimasa.jp
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