ライフスタイル
【#4】遠くの「現場」、近くのテープレコーダー
2022年9月4日
photo: Emerson Kitamura, mmm, Nanako Ito (profile)
text: Emerson Kitamura
edit: Ryoma Uchida
僕は、東京から1万km離れた場所でライブをすることも、自宅でテープレコーダーに音を録ることも(実際にはデジタルで録音することが多いが)、無数に経験した他のライブや録音と同じく、どれもが「現場」だと思っている。現場を、自分がいる理由のある「現場」にするものは結局、自分の側のちょっとした覚悟なのかもしれない。それは別に経験とかスキルではなくて、現場に流れる時間の「あっけなさ」とでもいうものを、きちんと感じとることなのではないかな。ライブは(レコーディング作業も)、今起きたことをどんどん過去のものにしてゆく。それを止めようとするより、止められないことを前提として何ができるか?を考えた方が、その日の「現場」には良いものを残せるような気がする。
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ケルン 2019年10月 -
千駄木 2017年6月
もうひとつ、現場を「現場」にするために欠かせないものがある。それは「人」だ。出演者やスタッフの存在はもちろんだが、何より「受け手」というものが、現場を活きたものにしてくれるのだと思う。
僕が「現場」をイメージする時の「受け手」とは、目の前にいるお客さんのことだけではない。もちろんお客さんは一番大事だけど、僕が想定する「受け手」には、今日ここには来ていない、僕のことなど全く知らなくて、だけど、ひたすら良いものを観たい・聴きたいと思っているような人のことも含まれている(僕自身、受け手である場合はその一人だ)。そんな「未来のお客」が僕の次のライブに来たり作品を聴いてくれた時、その人にちゃんと伝えられるようなことを、今日、僕はできているか?……僕が音楽を作る時、ひとつの基準にしているのはそんなことだ。そして「現場」とは、繰り返しそれを問い続けることのできる場所だと思うし、そんな風に「次」をイメージしながら現場を進められることは、希望を持ってものを作る上で、一番力になってくれることだと感じている。


今回の「現場」の話はここまで。僕の現場のほとんどを占めてきた日本国内のライブのことには触れられなかったけど、機会があったらまた書いてみたい。それから、【#3】に出てきたテープレコーダーは、僕の父親が1960年代に購入したものだ。裕福ではなかったのに、よっぽど惹かれたのかな。長く使われていなかったのを僕が引きとって自己流で整備し、ほんの一瞬だけど僕の最新作にもその音が入っている。
プロフィール
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「船窓 / おろかな指」bandcamp
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