カルチャー

【#3】日本の花火文化

2022年8月31日

 これまでお伝えした希少な国産線香花火ですが、原料も同じく希少です。なぜなら線香花火を作っている人がいないのであれば、原料を作る人もいなくなってしまうのです。

【線香花火の原料】
 おもな原料は、松をいぶした煤「松煙」、火山から得られる「硫黄」、硝酸カリウム「硝石」の3つです。とくに松煙は線香花火の火花を決める命でもあり、私たちは30年以上寝かせた、宮崎県産の松の根っこをいぶして取れる煤を主原料として大切にしています。松煙は書道で使用する墨の原料として使用されていましたが、現在は需要が低くなり、生産する方も少なくなっています。

【日本人が花火に込める想い】
 日本には16世紀、戦国時代にポルトガル人によって火縄銃が伝わり黒色火薬の技術が浸透しました。現在のような観賞用の花火が登場するのは平和が訪れた江戸時代に入ってからでした。

 日本の花火は元々、慰霊や疫病退散の意味を込めて作り上げられています。一説によると、花火は死者の魂を導くお盆の「迎え火」や「送り火」の一種であるとも言われています。このことからも、日本全国の花火大会は、鎮魂の祈りや、供養の気持ちを込めたものも多いのです。戦没者の慰霊、先祖の霊を導く送り火・迎え火として開催される花火大会も各地で開催されています。また、日本で最初の花火大会は「疫病退散」を目的に開催された、墨田川花火大会だとされています。

歌川広重『名所江戸百景』の両国花火/Wikipediaより引用

【日本の花火文化】
 このように日本での花火には祈りや意味が込められています。日本と同じく、海外にも手持ち花火は存在しますが海外の国では日本のように気軽に手持ち花火はできず、ほとんどの国が許可制または禁止となっています。

 お盆に家族や親戚が集まって花火を愉しむ風景も日本の夏の風物詩ですね。花火が手軽に買うことが出来ることも、平和な日本の象徴なのかもしれません。

プロフィール

筒井今日子(筒井時正玩具花火製造所)

つつい・きょうこ | 昭和4年創業、福岡県みやま市に位置する『筒井時正玩具花火製造所』を運営。『玩具花火』や、国産では生産量がわずかな線香花火の製造・販売を行う。線香花火や子ども向けのワークショップも行なっている。

◯福岡県みやま市高田町竹飯1950-1 ☎︎0944・67・0764 営業時間シーズンにより変動

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