カルチャー
目指せGEEK WATCH図鑑!!! Vol.4
写真・文/久山宗成 a.k.a. Donald
2022年7月1日
photo: Kouichi Nakazawa
interview & text: Muneaki Kuyama a.k.a. Donald
edit: Yukako Kazuno
前回ご紹介したGEEK CLOCKコレクターの振付稼業「air:man」杉谷さんの反響が凄かったようで嬉しいDEATH。今回は前回に掲載できなかった杉谷さんの偏愛についてのインタビューを掲載致します。インタビューを読む前に、彼らが振り付けを手がけMTV MUSIC AWARD2015にて日本人初「BESTChoreography」(つまり世界で一位)を獲得したOK Goの『I Won’t Let You Down』のPVを見るとさらに深みがますのでオススメDEATH。
僕はそのスケール感に感動と勇気をもらいました!
振り子時計のコレクションを始めたきっかけ
ドナルド(以下D):杉谷さんと言えば常軌を逸したTシャツや鋲ジャン、劇画時代の漫画やレインボーマンなどのコレクションが有名ですが、偏愛と収集のきっかけは何だったんですか?
杉谷さん(以下S):時計のコレクションを始めたのが1番古いと思います。おそらく小学校4年の時かな? だからもう40何年前なんですけどね(笑)。家の近所に神社があってそこの骨董市に行ったんです。ジャンクで、ヒビが入っていてというような感じの時計でしたが、たしか当時500円で売ってたんです。これならお小遣いで買える! と思って。「分解して中身を開けたらどうなってるんだろう?」って思って、家で分解してみたのがきっかけです。それが小学校4年。8〜9歳の時だったと思います。
D:それから足掛け何年くらいですか?
S:42年とかですね。
D:柱時計だけで何個くらいコレクションがありますか?
S:倉庫にまだ200近く残ってるので、多分トータルで少なく見積もっても400は絶対ありますね。うちのスタジオとかにも沢山置いてあるので、それ数えると本当に500くらいになるのかなと。
D:置時計の方が数は少ないと思うんですけど、何個くらいあるんですか?
S:置時計も150個くらいじゃないですかね。
D:置時計もそのくらいあるんですね(笑)。
S:ありますね。置き時計も1番最初に買ったのは同じく小学校くらいですね。
D:パンドラの箱開けてしまった感じなんでしょうね。
S:当時、一番最初に買った置時計も鐘の音色が凄く面白くて。その次に買った時計がたまたま動くやつだったんですよ。同じ形なのに木の材質が違うだけで音色が全然違う事に気付いたら凄く面白くて。
D:椅子に体育座りしながらのそういう時間がもう至福の時なんですね。
S:これ今でも音が相当に鳴ってるかもしれないんですけど、全部鳴らすとブルルルルルって鳴るんですよ。木の大きく深いのはドドンと鳴るから、完璧に音楽になるんです。何個かだけ時間を合わせていれば、今みたいに鳴っているところに音が合わされば勝手にジャムセッションみたいになっていくんですよ。オーケストラみたいですね。だから正直こういうのを聞いていると自分の振り付けの仕事とか踊りというものに自然にリズムを感じて、次こういう振り面白いなというヒントをもらう事もあります。
振付と振り子時計の共通点
D:前に違うメディアでお話しされていた、「振り付けはアート作品ではなくあくまで職人仕事。オーダーを通していかにプロとしてクラアントさんのリクエストに寄り添えるか」というのが印象的でした。こういう気持ちは時計の職人さんの気持ちとも繋がる部分があると思いました。
S:そうだと思います。僕は踊って自分を表現するのが好きなのではなくて、踊っている人を見るのが大好きなんです。だから、踊っている人達の大枠を作っていく。だから、あくまで僕達は先方がオーダーしてきたものに答えられるように、明確なネジを作ってしっかりとしめる。漏れがなくて精度が高いというのが僕達の振り付けだと思います。その面では確かに時計が好きな理由はそれかもしれないですね。よく考えたらこれだけ完成度が高い時計を作って、アート作品と言えるのに言わないという、職人さんの線引き感が大事だと思うし、心地良いんだと思います。
コレクターの作法
D:これを商売にするのはまだ分かるんですよ。でもこれは完全に道楽じゃないですか、だから終わりは無いんでしょうかね?
S:やっぱり好きな物は小さい時から変わらないですよね(笑)。後は、自分がこの世からいなくなる時にはちゃんと周りの人に迷惑掛けないように整理しなくちゃいけない。本当のコレクターというのは、コレクションを次のコレクターにちゃんと受け渡すべきだと思うんです。それが最低限のルールだと思います。
D:本にしたり、皆が見れるような場所を作る、寄付するみたいなことでしょうか?
S:それが最低限のコレクターのけじめなんじゃないかなと思います。最終的には身持ち軽くして大事に時間かけて集めた物を手放していく辛さというのはちゃんと経験しないと、いつまでも持てるものでは無いから。コレクトするという事はそういう事だと思うので、無責任にはできないのでそう出来れば嬉しいですね。
D:前半戦が集める事だとしたら、後半戦は手放すという楽しみ方があるんでしょうね。
S:僕のコレクションを善しとするのか悪しとするのかはその時代のもの。悪しとなるんだったら消えていくだろうし…。でも善しとする人は絶対にいると思います。だから躊躇わずに次の世代に渡すというのはやっていきたいとは思ってますね。ただ今は手放したくない。今は溺愛したい(笑)。ここでお酒飲んでいれば1日仕事しなくても幸せなんです。
プロフィール
久山宗成 a.k.a. Donald
くやま・むねあき | 改造活動家、企画編集者、GEEK WATCH偏愛家。ワタリウム美術館のミュージアムショップ地下中二階にて、2014年より改造見世物小屋『+R.I.P. STORE』を営む。様々なマテリアルや手法を組み合わせてジュエリー、腕時計、プロダクト、舞台美術などを制作している。趣味的に始めてどハマりしたGEEK WATCHのコレクションは今や700本以上。現在『GEEK WATCH PEDIA』なる本を編集中。
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