LIFESTYLE

メモするふりしてスケッチを。【前編】

よーく覚えておきたいものと出合ったら、スケッチをとるのもいいかもしれない。

2022.07.30(Sat)

photo: Tatsunari Kawazu
text: Koji Toyoda, Momoko Ikeda (Chad Bri)
2020年7月 879号初出

ポスタルコのノート

 街で気になるものを見かけたら、即座にスマホを取り出して写真を撮るのが一番手っ取り早い。友達にLINEで「南青山に恐竜博士が座ってるベンチがあるの知ってる?」って写真とともに送って。ものすごく唐突だからすぐには返事もなく、見つけた感動はタイムラインの流れとともに忘却されていく。大半はそれでOKなものばかりだと思うが、それにしても僕たちは最近、モノをちゃんと見ているだろうか? 幡ヶ谷の『Forager』で買った花、一体何枚の花びらがあったっけ。『パドラーズコーヒー』のマグカップってどんなやつだっけ。そんな些細なことに気を留めたくなったときに、ささっとスケッチをする人がけっこういることを知った。あくまで忘れないためのメモの意味もあるから、うまくなくてもいいし、描き切らなくてもいいし。街中でポケットサイズのスケッチブックとペンを取り出すとき、気分は散歩する科学者だ。スケッチの先輩たちの道具も見せてもらおう。

スケッチと道具 #1

チャド・ブリ

チャド・ブリ 〈The Sleep Code〉代表
1978年、アメリカ生まれ。パジャマブランドの〈Sleepy Jones〉を経て、睡眠にまつわるグッズをセレクトした新会社「The Sleep Code」を設立。

 9年前からNYの郊外に住んでるんだ。妻が菜園をデザインする仕事をしていることもあって、うちの庭にはいろんな野菜や植物が植えてあるんだ。最近はよくそのスケッチをしてる。種から育ててるから、あの小さな粒の中にこんなに複雑な要素が含まれてるってことにあらためて驚いたりするね。スケッチするときはありのままの形を見るようにして、マインドで描かないようにしてるんだ。ラインや色とか目の前に情報はすべてあるのに、意外と難しくてね。意識を自分自身から切り離す、ちょっとした訓練みたいなものだね。

チャド・ブリさんのスケッチ
パステルは見た目もいい「ファーバーカステル」の〈デューラー〉のもの。紙はどこでも扱ってる定番の〈ストラスモア〉のものを使用。
花のスケッチ
花のスケッチ
花のスケッチ

スケッチと道具 #2

イラストレーター三宅瑠人さん

三宅瑠人 イラストレーター
1988年、東京都生まれ。大学在籍中からイラストレーターとして活動をスタート。無類の鳥好きで、緻密なイラストには世界の様々な鳥をモチーフにしたものも多い。

三宅瑠人さんのスケッチブック
左のスケッチブックは、ポルトガルの老舗紙屋『パペラリアス・エミリオ・ブラガ』。右はフィレンツェで買ったノート。ペンは「LAMY」の黒・緑と、消せるフリクションに入れ替えたものの3本を携帯。
 

 僕は、手持ち無沙汰なときにスケッチをすることが多いです。眠れないときにベッドから見える植物を描いたり、レストランで食事を待っている時間に椅子を描いたり。不思議なもので、描いているといい意味でも、悪い意味でも、自分がものをどう捉えているかのクセがわかってくるんです。スケッチをすることが、自分を知ることにつながっているのかもしれません。スケッチブックは洋服のポケットに入る大きさで、インクが滲まない紙のものだったら何でもOK。ペンは仕事でも使う〈LAMY〉のサファリの芯を替えて使っています。

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