TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】1969年のザ・ノース・フェイスのカタログ

執筆:Outdoor Recreation Archive

Outdoor Recreation Archive

text: Outdoor Recreation Archive
translation: Tsukasa Tanimoto
edit: Miu Nakamura

2025年10月11日

ユタ州立大学のOutdoor Recreation Archive(アウトドア・レクリエーション・アーカイブ)には多くの資料が保管されているが、アウトドア史を辿るカタログ資料のコレクションがその中心にある。1900年から現在に至るまでの約1000のアウトドアブランドによる、およそ7000点のカタログが所蔵されている。ほとんどが数枚の紙を二つ折りにして中央をホチキスで留めた、まさにカタログで最も一般的な形式の冊子である。大きさはノート用紙ほどで、消費者に向けて商品を魅力的かつ低コストに宣伝できる手段として長らく用いられてきた。ただし、こうした定型を言い訳とせず、より実験的かつ印象的な方法で、郵送を通じて商品を紹介しようと試みたブランドも少なくなかった。

そのような試みの中で最も優れた例の一つが、1969年にThe North Face(ザ・ノース・フェイス)がスキーウェアの広告物として発行したカタログである。通常の冊子型とは異なり、このカタログはThe North Faceのロゴが印刷された、トランプほどの大きさの正方形の小さな段ボール箱に収められている。箱を開けると、中には惹きつけられるアイテムがいくつも詰め込まれている。まず、スキー板、ブーツ、ストック、パーカ、セーター、パンツなどの商品写真を配した折りたたみ式のポスターが収められていて、同封の鮮やかな緑の注文書から購入する仕組みだった。さらに、特定のアイテムや金額を贈ることができるギフト券や、スキー教室、リフト券、雑誌、宿泊施設、レストランなどの割引を受けられる、銀色の紙に青文字が印刷されたクーポンブックも同梱されていた。

1968年にThe North Faceを買収したHap Klopp(ハップ・クロップ)によると、この「スキー・スターター・セット」カタログは、紹介しているスキーウェア自体が従来とは異なるものであったため、カタログもまたそれにふさわしく新しい形をとる必要があったという。「当時、私たちのコレクションは非常に小規模で、“スキー業界のファッショニスタ”のようにはなりたくなかった。むしろ、“機能性を重視したスキーウェアブランド”を目指していて、当時としてはかなり珍しい方向性だった。」新しいアパレルラインに対して、カタログの形式を刷新するのは自然な選択であっただろう。クロップはブランドのコーポレート・アイデンティティを手がけたDavid Alcon(デイヴィッド・アルコン)にプロジェクトの監修を依頼し、友人のLloyd Johnson(ロイド・ジョンソン)に撮影と印刷を任せた。完成したカタログは、その斬新なフォーマットだけでなく、「The North Face」という文字を伴わずにロゴのみを初めて使用した点でも注目すべきものである。

プロフィール

Outdoor Recreation Archive

ユタ州立大学の図書室に併設された、1900年代から現在までのギアカタログや広告、ブランド資料を蒐集、保存するアーカイブ機関。広報活動と新たなコレクションの発掘を担当するチェイスと、寄贈された資料の整理、記述、保存を担当するクリントによって運営されている。コレクションは1万5000点を超えており、書架は誰にでも開かれている。

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https://library.usu.edu/archives/ora

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