ファッション
横尾忠則の5つのスタイル。
2022年1月18日
〝なんでもあり〟。自身の服の選び方をそう語るのは、美術家の横尾忠則さん。
ルール無用であらゆる服にトライする横尾さんのスタイルは、
たしかにその言葉がぴったりだ。
STYLE 1

Jacket — Tadanori Yokoo Issey Miyake
Shirt — agnès b.
Pants — Issey Miyake
Shoes — Patrick
デザイナーの三宅一生さんとは古くからの知り合いで、よく洋服も贈られるんだとか。自身の作品が大胆にプリントされたジャケットは、そんな〈イッセイ ミヤケ〉と横尾さんの合同プロジェクト〈TADANORI YOKOO ISSEY MIYAKE〉のもの。こうしたファッションとのコラボレーションについて横尾さんは「僕の作品が洋服になって街の中を移動したりするわけですよね。そうすると違った見え方になるし、都市空間とのコラボになるわけだから、非常に面白いんです」と語る。
STYLE 2

Jacket — G-Star Raw
Inner — agnès b.
Pants — Topman
Cap — CA4LA×Andy Warhol
Watch — Issey Miyake
Socks — Chrome Hearts
Shoes — Nike
こちらが本文で語っていたジンジャケを取り入れたスタイル。「2021年は10着くらい買ったんじゃないかな。この〈ジースター・ロゥ〉のものはネットで見つけて買いました。ジンジャケを着るときは、ベニスのゴンドラの船頭さんみたいなボーダーのTシャツを着るのが今の僕のスタイルなんです。囚人っぽくて面白いかなって。コロナでずっとアトリエに閉じこもっているでしょ? 囚人と同じなんですよ。描いている絵も獄中日記みたいなもので(笑)。だから、これはコロナがもたらしたスタイルなんです」と横尾さん。ジンジャケの胸にある商品タグも、「囚人みたいだから」と取り外さずに着てしまうのが横尾さんらしい。


STYLE 3

Sweatshirt — Chrome Hearts
Inner — Chrome Hearts
Pants — Chrome Hearts
Cap — Chrome Hearts
Belt — Chrome Hearts
Shoes — Chrome Hearts
全身〈クロムハーツ〉というハードすぎるスタイルも、横尾さんの手にかかればこんなにシック。〈クロムハーツ〉の創業者リチャード・スタークも長年の友人で、アイテムをもらうことが多いとか。「僕の芸術家としてのモットーは“なるようになる”なんですよ。つまり、運命に逆らわず、来るものを拒まないということ。最近はもらった洋服を着ることが多いから、“なるようになる”は、ファッションについても当てはまるかもしれない。もらった服で自分のスタイルが決まっていくわけだから。僕の場合、いろんな縁があって、フォーマルなときは〈イッセイ ミヤケ〉、カジュアルなときは〈クロムハーツ〉を着るようになったけど、もし別のデザイナーと仲良かったら、そのスタイルになっていたはずだからね」


STYLE 4

Jacket — Hysteric Glamour
Cardigan — Cashyage
Inner — agnès b.
Pants — Topman
Hat — CA4LA×Andy Warhol
Shoes — UGG
〈カシヤージュ〉のカシミヤのカーディガン、そして〈アグ〉のスニーカーは、それぞれ横尾さんとのコラボレーションモデルだ。迷彩、ボーダー、そして柄ものを、ひとつのコーディネートに取り入れてしまうなんて! 日々の装いをどう決めているのか聞くと、「クローゼットにあるものを順番に着ているだけです。そんなに深いことは考えてないです」とのこと。


STYLE 5

Sweatshirt — Double FantasyJohn & Yoko
Shirt — Dressterior
Pants — Topman
Shoes — no brand
これまでとは一転して、アイビーライクなこちらのスタイルは、アトリエで絵を描いているときに一番近いという。フロントに“LOVE”とプリントされたスウェットは、2021年に六本木で開催された『“ダブル・ファンタジー ジョンアンドヨーコ”東京展』のオフィシャルグッズで、なんとヨーコさん本人からもらったもの! 三宅一生さんに、〈クロムハーツ〉の創業者に、オノヨーコさんって、服をもらう人がいちいちすごい。「センスのいい友達が多いと、自分で選ばなくてもお洒落になれるから楽ですよ(笑)」と横尾さん。



自分の好みで買ったものを
思ったように組み合わせれば
それが自分のスタイルになる。
ファッションにルールはない!
日本美術界の〝生けるレジェンド〟こと横尾忠則さんは、日々の装いをどうエンジョイしているのか。純粋な好奇心に駆られ、ダメ元でスナップのお願いをしたら、二つ返事でやってくれるというではないか! しかもご自身のアトリエで! こちらから依頼したとはいえ、こんな変化球的な企画、なぜ引き受けていただけたのだろうか。
「’60 年代から’80 年代にかけて、よくこういう仕事の依頼がありました。一種のパフォーマンスですね。だから、久しぶりにお遊びができるなと。こういう企画って、洋服を通して僕の違う側面が見えてくるから面白いんですよ。もともと僕はファッション音痴なんですね。兵庫県の田舎で生まれたから。でも、’60 年代に東京に出てきて、グラフィック・デザイナーの仕事を始めた頃、周りにお洒落な人が多くいて。それで僕もファッションに目覚め、NYやロンドンに行ったとき、まず有名なブティックに飛び込んで流行りのものを買っていました。美術館ではなく(笑)」
’80 年に画家に転身して以降は、全神経を作品に集中させるようになったため、「〝なんでもあり〟になっていますが」と横尾さんは語るが、とはいえ現在のファッションにも随所に〝ならでは〟のこだわりが垣間見える。例えば、STYLE2で着ていたジンジャケ(横尾さんはデニムジャケットをそう呼ぶ)は、最近の横尾スタイルの中核を担うアイテムだという。
「’60 年代はずっとジンジャケを着ていたんですよ。僕の友達だったNYのアーティストも、いつ会ってもジンジャケでした。アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ……。つまりね、ジンジャケは’60 年代のアーティストのユニフォームなんですよ。知的労働者のね。’70 年代の終わりくらいから僕は着なくなったんですが、最近、夢を見ましてね。さっき言ったNYのアーティストたちが出てくる’60 年代の夢で、みんなジンジャケを着ていたんです。それで目が覚めて『そうか、しばらく忘れていたけど、これからはジンジャケで行くぞ!』と(笑)」
夢をファッションの着想源にしちゃうなんてさすが横尾さん! ところで、横尾さんのスタイルはとても色が鮮やか。ここまで色を取り入れると野暮ったくなりがちだけど、そうならないのがすごい。そこで色使いの極意を聞くと、「まぁ、絵描きさんだからね」と笑いながら、こう答えてくれた。
「僕はひとつひとつのものを、『このジャケット面白いな、この靴は面白いな』って自分の好みで買っているんですよ。そうやって買ったものだけを組み合わせれば、おのずと自分のスタイルになる。色が合っているとか合ってないとか関係なくね。『このジャケットは何色だから靴は何色で』とかって考えると昔のTPOファッションになって面白くないんですよ」
「例えば」と言って僕の着ていた黄緑色のフリースを指した横尾さんは、「それは色合い的には僕のこの靴(STYLE1で履いているもの)と合うけど、それじゃTPOになってつまらない」と言いながら話を続ける。
「ファッション的に考えたら合わないとされるものでも、それを本当に好きだと思っている人が着れば、合っちゃうんですよ。だからといって、『あえて合わない色を組み合わせよう』って考えないで、感覚で着ればいいんです」
なるほど、トータルの印象など考えず、好きなものを好きなように着ることが、〝なんでもあり〟の真意というわけか。そんな横尾さんにとって、服とは何なのか?
「体に一番近い環境かなぁ。環境を変えれば人間は変われる。どうしたら変われるかと悩まなくても、環境を変えるだけでいい。すると変わっちゃいます。ということは当然、服を変えれば人間は変わるということ。僕の絵だって、着る服を変えれば変わるでしょうね」
プロフィール
横尾忠則
よこお・ただのり|1936年、兵庫県生まれ。1972年、ニューヨーク近代美術館で個展。その後も世界各国で個展開催。2012年に横尾忠則現代美術館(兵庫県神戸市)、2013年に豊島横尾館(香川県豊島)開館。現在、大分県立美術館で『GENKYO 横尾忠則』を開催中(1月23日まで)。
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