カルチャー
なぜアニソンが好きなの?/#1 サンダーキャットの場合。
LAの自宅を訪ね、アニソンの魅力を聞いた。
2021年7月12日
なにはともあれ、いい音楽が必要だ。
photo: Aya Muto
coordination & translation: Hashim Kotaro Bharoocha
text: Katsumi Watanabe
2021年8月 892号初出
「日本のアニソンは世界基準」と、田中公平先生(本誌『そもそもアニソンって何だろう?』をチェック!)も話していたけれど、実際どんなものなのか? そんな折、新曲「Dragonball Durag」のMVで『ドラゴンボール』モチーフの服に身を包み、ダンスしながら熱唱するサンダーキャットの姿が飛び込んできた。
彼ならアメリカのアニソン事情にも詳しいハズ。さっそく連絡してみると、「そういう話ならうちにきなよ!」と、快く自宅に招いてくれた。あのグラミーアーティストが、まさか……である。
部屋には『エヴァ』のアスカのキャップをかぶり、アニメグッズに埋もれた彼がいた。「30年くらい前、歯科医が治療のご褒美用にブレスレットを配っていて、そこには超かっこいい『ドラゴンボール』の絵柄が描かれてた。当時LAでは週1で朝6時から放送されてて、頑張って起きて観たよ。高校生になると、コミックショップでバイトを始め、店内で流れる『ストリートファイターⅡ MOVIE』と『劇場版 世紀末救世主伝説 北斗の拳』を観た。どちらも最高で、アニメの世界に引き込まれていったんだ」。と、アニメとの出合いを熱弁。
で、アニソンはというと、「『ドラゴンボール』シリーズだと『でてこいとびきりZENKAIパワー!』のアンニュイなボーカルとファンキーなリズムは最高! それから『ストⅡ』の主題歌(『恋しさと せつなさと 心強さと』を口ずさむ)はカラオケでよく歌うね。ストーリーやキャラクターのトーンに合わせ、丁寧に作られたアニソンからは、メロディやハーモニーから制作陣のエモーションが伝わってくる。『犬夜叉』や『セーラームーン』など、テーマ曲や劇伴含め、トータルで好きな作品は山ほどある。なかでも渡辺信一郎監督作品は、アニメと音楽がリンクするよう意識しているのがわかる。音楽がいかに重要な役割を果たすのか、わかってるんじゃないかな? オレやlil uzi vertのようなラッパーは、アニメがインスピレーション源になってて、曲作りの際にも影響を受けている。アニソンは作曲のメソッドが素晴らしいからね。優れたOP曲ほど、90秒の中に作品の内容を凝縮しつつ、イントロやメロディはめちゃめちゃキャッチー。一度聴いたら忘れられない中毒性があるんだ。そんな曲を作りたいと常々思ってるよ」
「でてこいとびきりZENKAIパワー!」
少年時代のサンダー然り、世界中の男子を虜にする不朽の名作。「ハイテンションの『CHA-LA HEAD-CHA-LA』も確実に盛り上がるけど、メロウな『ZENKAI』がいいな」
「残酷な天使のテーゼ」
いまや世界の共通語と言っても過言ではない名曲。「カラオケに行ったときはスクリームしてる。最新作で最後だけど、20年以上楽しませてくれて感謝してるよ」
深い森
Do As Infinityによる2代目のエンディングテーマ。「しっとりとしたバラードが作品を物語っている。アニソンを介して、新しい音楽と出合えるって本当に素晴らしいぜ」
「Purple Eyes」
1986年の映画版は子供ばんどが主題歌を担当。「もちろん『愛をとりもどせ!!』もヤバいけど、映画版のこの曲や挿入歌『Heart of Madness』のほうが歌いやすいね!」
「POP TEAM EPIC」
怪作はLAのアニオタにも届いていた! 「最近ヒット作がなく、古い曲をディグっていたんだけど、この曲は最高に刺激的だったと思う。Sumire is Best!」
音楽面だけでなく、昨今見受けられるアニメやオタク文化とストリートカルチャーの融合についての考えも語ってくれた。「オレはいつだってアニメを観て感動し、ファミコンやプレステで遊んできた。だから、この融合は自然な流れだと思う。オレ自身子供のままでいたいから、いつでも楽しみたくて、普段の着こなしにもアニメ要素を取り入れてきた。〈アンダーカバー〉が、『新世紀エヴァンゲリオン』とコラボしたジャケットなんて美術館でも展示できるくらいのアート作品だ。日本公演が延期になってしまったけど、日本へ行ったらすぐに『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観たい。真のウォーリアーであるアスカの最後の勇姿を、見届けたいんだ!」
世界中にはきっとこんな人がまだまだいるのだろうと、なんだか胸が熱くなった。
「新旧含めて、大好きなアニソンを挙げてみたよ。『恋しさと〜』や『ムーンライト伝説』は、初めて聴いたときから好きで、今もカラオケで歌うんだよね。『峰不二子』みたいなクールなのもいいね。あらためてトラックリストにしようかな」
ENERATION(『NARUTO』)
プロフィール
Thundercat
サンダーキャット|1984年、LA生まれ。音楽一家に生まれ、幼少期からベースを演奏。2011年のソロデビュー以降、4枚のアルバムを発表。最新作は『It Is What It Is』。
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