カルチャー
7月はこんな映画を観ようかな。
汗ばんだ体をすっきりさせられるかもしれない6作。
2021年7月1日
text: Keisuke Kagiwada
『17歳の瞳に映る世界』イライザ・ヒットマン(監)
美しい“手術映画”である。望まぬ妊娠をした17歳の少女がいとこと一緒にNYへ中絶手術を受けにいく物語だからというのは、もちろんある。だけど、それ以外にも女性たちが連帯するとき、手が印象的に映し出されることを通して、“いかなる”術“を”手“はなしうるのか?”を描いているからこそ、そう呼びたい。手術代のためにバイト先の金を盗むいとこの手、手術中に主人公の手をにぎる女医の手、主人公がいとこに差し伸べる手……。劇中では中絶手術に必要な手続きを懇切丁寧に描かれるから、作品自体が主人公と同じような境遇の女性に差し伸べられた“手”なのかも。7月16日より全国公開。
『ライトハウス』ロバート・エガース(監)
絶海の孤島で、2人の灯台守の身に起こったアンビリーバボーな奇跡体験を、ホラーともコメディとも言える謎のテンションで、しかもモノクロで描く。脱出不可能になった2人は、「もう飲まなきゃやってられんやろ!」ってことで飲みまくるのだが、備蓄していた酒がなくなると、今度は石油にはちみつを入れて飲み始めるんだから、人間の欲望恐るべし。そんな底抜けてんやわんやな2人を、ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンが鬼気迫る感じで演じている。つくづく変な映画だ。もちろん、いい意味で。7月9日より全国公開。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』エメラルド・フェネル(監)
タイトルの意味は“前途有望な女性”。まさにそんな女性の1人だったはずのキャシーは、ある悲劇をきっかけにその道を諦め、今は平凡な暮らしに甘んじている……と見せかけて、実は夜ごと街へ繰り出し、悪い男たちに裁きを下す復讐鬼と化していたのだった。彼女を翻弄する男を演じているのはコメディアンのボー・バーナム。最近、ネトフリで配信開始した『ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり』が最高だったなぁ。どうでもいいけど、ラッパーの徳利のインスタアカウントが最近かなりボー・バーナム化してない? 7月16日より全国公開。
『スーパーノヴァ』ハリー・マックイーン(監)
ピアニストのサムと作家のタスカーは20年連れ添っているおしどりカップルだ。2人の関係性はこんなシーンからも手に取るように伝わってくる。サムが運転する車で移動中の2人。タスカーは道を確認すべく紙の地図を開く。「ナビを使えばいいのに」と眉をひそめるサム。しばしの沈黙の末、タスカーが口を開いていわく、「ん、何の音だ? 私が君を無視する音だ」。2人、笑う……みたいな。しかし、そんな幸せな日々は、タスカーが不治の病に侵されていることが発覚して一転。2人が下した決断には涙がこぼれた。7月1日より全国順次公開。
『愛しい人から最後の手紙』オーガスティン・フリッゼル(監)
ジャーナリストのエリーはひょんなことから1965年に綴られた一連のラブレターを発見する。そこに秘められた禁断の恋の謎を解明すべく行動するうちに、エリーは自身も恋に落ちていく。本作が交錯させながら描くのは、そんな現在と過去のラブストーリー。60年代パートのクラシックなファッションもさることながら、なにしろエリーを演じるフェリシティ・ジョーンズがかわいい。それだけでも白米3杯はいけそう。監督はドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』のパイロット版を手がけたオーガスティン・フリッゼルだから、映像のセンスは折り紙付きだ。7月23日よりNetflixで公開。
『ザ・ラスト・マーセナリー』ダヴィド・シャロン(監)
その昔、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルベスタ・スタローンと並んでハリウッドを代表する脳筋俳優というイメージだった(もしかすると、“午後ロー”がある日本だけの話かもしれないけど)。しかし、今やすっかり落ちぶれて、『その男ヴァン・ダム』なんていうセルフパロディみたいなことをしていたのも既に10年前。最近じゃ、めっきり音沙汰なし。だからこそ応援したくなるのが人情というもの。というわけで、彼が悪い奴らに囚われた息子を救うべく、ギャングなんかを手を組んで頑張る本作を見よう。7月30日よりNetflixで公開。
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