カルチャー
Meet Barry McGee & Sorat May
interview by 野村訓市
2025年12月15日
神宮前のギャラリー「Scooters For Peace」で開催中の展示「May Dare & Barry McGee “LiTTLE BY LiTTLE”」。10月末、この制作のために来日していたアーティストのバリー・マッギーとソラット・メイに、野村訓市先輩がインタビュー。実は二人、滞在中に東京で結婚式をしたばかり! 訓市さんは牧師も務めた間柄。結婚式ぶりの再会から会話もスタート!
ソラット・メイ(以下、ソラット):初めての合同インタビューね。
野村訓市(以下、訓市):ところで、髪切った?
バリー・マッギー(以下、バリー):いや。髪を洗ったんだ。
訓市:ああ、髪洗ったんだ(笑)。
バリー:そう、清潔に、きれいになったみたいに聞こえるね。もう何もかもやり終えたって感じだよ。
訓市:(笑)さて、ごめん。話を元に戻そう。いつ、どのようにしてこの合同展を開催するというアイデアが浮かんだの?
バリー:ノリ(「Scooter For Peace」 ギャラリー店主)が提案してくれたんだ。
ソラット:多分、私が前回ここにいたとき、テキスタイル、つまり刺繍を制作していて、ノリと時間を過ごしていたからというのもあると思うわ。彼は私の制作の様子を見ていたの。それから、サンフランシスコの「YBCA」で開催中の展示 “BAY AREA THEN”に私の作品もいくつか展示されていたの。彼はそれを見て、アイデアを得たんだと思うわ。
訓市:その展示はいつのこと?
ソラット:それは来年の1月まで開催されている回顧展のような展示会のようなもので、ノリが来たのはオープニングの時だから今年の8月かしら。
訓市:ということは2、3ヶ月前か、すごく最近だね。じゃあ、ここにある作品はすべてこの展示のために制作したの? それともこれまでの作品から選んだ感じ?
ソラット:すべてこのために作られた新作よ。
バリー:僕のも多くがそうだね。東京でもたくさん作ったし、それがこの展示を特別なものにしていると思う。
訓市:制作をしてたってことは今回どのくらい東京に滞在してるの?
バリー:1ヶ月くらいかな。というか、まだ制作中だけど。ストレス(笑)。
訓市:それにしても作るのがかなり速いよね
ソラット:私たちは24時間年中無休なの。一日でどちらがより多くの作品を作れるか、って感じ。
訓市:君たちの仕事の仕方ってどんな感じ? 起きてすぐに制作を始めるのか、それとも日中はぶらぶらして、夜になったら始めるとか?
バリー:それはソラットの勝ちだね、彼女の圧勝だよ。一度始めたら太陽が昇るまで、あるいはそれ以降も止まらないから。夜通し制作するんだよ。
ソラット:夜にたくさん作業するかな。
バリー: 僕もできるだけ遅くまで働くけど、ソラットは最後までやり通すんだ、だけど僕は……。
ソラット:バリーはサーフィンに行くから(笑)。
バリー:それは朝のことでしょ。僕はもうクタクタになるよ。1時か2時頃になると眠りこけたりするんだけど、ソラットは1時か2時頃に生き生きし始めるんだ。クンと一緒だよ、君たちは同じ生き物だ。夜になると目を覚ますからね。
訓市:(笑)。ところで展示会を開催するとなって、どのようにアイデアを思いついたの? 例えば、テーマを一緒に話し合ってから個々の作品に取り組む、といった感じで?
バリー:ソラットがこの展示会のいいタイトル、しかも新しいタイトル案を持っているんだ。だから変えるかもしれない、今から。
ソラット:「彼と私の兄弟の部屋」というタイトルになる予定よ。なぜなら、私が鏡の作品、四角い鏡の作品を見ているとき、隣のバリーの作品が見えるんだけど、それがまるで、やんちゃな女の子だった私が鏡を通して兄の洗練された部屋を覗いているようなものだと感じだからななの。当時の私の部屋は、まるで、自分の脳が壁に吐き出されたようなものだったから。今、未完成の刺繍作品に本当に夢中なの。普通、刺繍には使わないような素材で刺繍をする新しい方法を見つけたり、自分のメッセージを組み込んだり。
訓市:なるほど。
ソラット:あとは、今のアメリカで起こっていることへの社会的な批評のようなメッセージもね。私の周りで見ていること、最も重要だと感じる問題、そして親しい友人たちに本当に影響を与えていること、そういったことを取り入れているわ。
訓市:アメリカで起こっていること、政治的なことがバリーの作品にも影響を与えている?
バリー:ああ、もちろん、もちろんだよ。何もかもを、僕はアンテナの棒みたいに起こっていることすべてを取り込んでいる感じだ。ソラットが自分の頭にあるものを壁に吐き出すと言ったけど、僕もそうせずにはいられないと思う。でも、歳を取るにつれて、もう十分に抗議活動に参加し、やらなければならないわけではなかったけれど、そういうことに自然に足を運び、戦ってきた、そのすべての努力が無駄になったように何も変わってない。状況は相変わらずひどいまま。分かるだろ? 僕は、なぜひどい人やこのひどい状況について作品を作らなければならないんだ、って思ってもしまうんだ。もうこれ以上、このひどい人たちや彼らが作り出す怒りについての作品を作りたくないんだ。僕はただ、それを自然に織り込みたいだけなんだ。特定の戦争を織り込むとか、人が殺されてるとかそういったことではなく。分かるかい? ストリートのグラフィティの争いのようなものではなくて。もう疲れたんだよ。
訓市:わかるよ。
バリー:でも、ソラットにはまだ、世界中の最も疎外されたコミュニティを取り上げて、僕が決して踏み込めないほど深く入り込むことができるんだよ。
ソラット:まだそうできる理由の一つに、私個人がたくさん影響を受けてきたことだけれど、過去に難民救援や他の種類のアクティビズムでたくさんのボランティア活動をしてきたからというのもあるわ。だから今、このアート作品は、それのもうひとつの形だと考えているの。自分のエネルギーを、今起こっていることにスポットライトを当てられると感じる場所に注ぎ込んでいるようなものなの。そして、それがどう機能するか試しているところね。私の作品は本当に私自身のためではなく、私よりも大きな目的のためにあると感じているの。何かをあえて展示する理由もそこにあるわ。
訓市:そういうことだったんだね。ところで展示では自分の名前、ソラットではなくて別名でやっているけれど、その名前はどこから来たの?
ソラット:メイは実は私のミドルネームよ。そしてデアは、デア・ライトという児童書作家のファーストネーム。
訓市:その二つを組み合わせて作ったと。
ソラット:彼女は昔、モデルであり、アーティストである母親のアシスタントでもあったの。彼女はパートナーを持たず、母親が亡くなるまで一緒に寝ていたのよ。そして児童書作家でもあって、私は彼女の物語に本当に夢中なの。彼女についての伝記があって、『寂しい人形の秘密の日記(The Secret Life of the Lonely Doll)』というんだけど、それにすごく夢中で。一時期は彼女についての映画を作りたいと思っていたくらいに。そのくらい、私は彼女に夢中で、それで彼女のファーストネームを拝借したの。それに「dare=あえてやる」っていう点でも意味深いし。
訓市:いつの時代の人?
ソラット:50年代で、ニューヨークが舞台よ。彼女の絵本は『小さなお人形の物語(The Lonely Doll)』というの。
訓市:バリーも読んだ?
バリー:いや、でもソラットが説明してくれたよ。
訓市:(笑)。バリーは結構本を読んだりする?
バリー:うん、時々ね、アーティストの伝記とか、そういうものが好きなんだ。
訓市:知らなかったよ。どのアーティストの伝記が一番好きだった? 最もインスピレーションを受けたり、自分との共通点を見出した人とか?
バリー:僕はすべてざっと読むんだ。僕らの前の世代がどのようにして物事を成し遂げたとか、ニューヨーク、ベルリン、ローマ、パリにどのようにスタジオを持っていたかを知りたくて。分かるかい? フランチェスコ・クレメンテがどうやってあんなにたくさんの異なる場所でサッと入って制作できたのか、そういうことに惹かれるんだよ。それがどうなっているのか、あるいはそれがやるべきことなのか、僕はいつも理解しようとしているんだ。その中でもデイヴ・エガーズの本が好きなんだけど、読んだことはある?
訓市:ないなぁ。
バリー:彼はサンフランシスコ出身の作家で、『Heroes of the Frontier』という本を出版したんだけれど、それは彼を通して女性の視点から書かれているんだ。彼女はRVに乗ってアラスカへ向かい、過去に犯したすべての過ちから逃げようとしている話なんだ。彼は映画『かいじゅうたちのいるところ』の脚本をスパイク(・ジョーンズ)と一緒に書いてるんだけど、彼は本当に素晴らしいよ。そして彼はサンフランシスコの地域社会で非常に政治的に活動的で、アーティストでもあるんだ。だから、僕は彼からインスピレーションを受けているんだね。同じ道を歩んでいるわけではないけれど、彼は本当に清らかな道を持っていて、彼はただ、正しいことをしているんだよ。たとえ本が売れて大金を稼いだとしても、彼はそれをサンフランシスコのプログラムに再投資するんだ。そこでは、放課後に低所得の子供たちを受け入れ、文章の書き方や詩の作り方、イラストレーションなどを教えているんだ。彼の考え方はとても進歩的なんだ。いつもポジティブなことに再投資している。どうやったらそんなことができるのか僕には分からないけれど。だって、家賃を払うのでさえ精一杯だったからね。でも、それを知ることはインスピレーションになるよ。
訓市:読まなくちゃって気分になってきたよ。
バリー:ああ、リンクを送るよ。彼は素晴らしい。本当に良い。彼は無名なんかじゃない。すごく有名だよ。
訓市:サンフランシスコについてちょうど言ってたけど、2人ともまだサンフランシスコを拠点にしているんだよね? 君たちはたくさん旅をしているでしょう? 今回の展示会では、東京に滞在して作品を作ったといっていたけれど、それは君たちの作品にどんな影響を与えた? 例えば、東京で物作りをするのはどうだった?
ソラット:大好きよ。
バリー:僕も大好きだ。どこにいても、もちろん、素材を手にいれるには場所固有のものなことが多いけど、僕たちはいつも、チームの他のメンバーと一緒に働くという、どこか慣れたバブルを作り出すことができると感じている。みんな、やるべきことを知っている、といった感じでね。だから、どこでも同じ流れなんだ。そして僕に関しては、床に座ってどこでも作業する。分かるでしょ(笑)?
ソラット:私はこのくらいの大きさの小さなバッグを持っているんだけど、どういうわけか、その中にすべてを収めることができるの。毎日荷造りし直しているわ。私のオフィス、制作の練習道具、私のすべての荷物をね。だから、私はどこにでも座って、街角とかでも作業できるの。
訓市:なるほど。今回、東京から得た素材、つまり意図的に使用する材料面でのものは何かある?
バリー:それは段ボールだ。日本の高品質な段ボールは驚異的だよ。どこにでもあって本当に質が良いんだ。
ソラット:本当に素晴らしいアイロンプリント、服用のアイロン転写シートよ。アメリカよりもずっと質が良いわ。
バリー:何もかもがここではより良いんだよ。
ソラット:アメリカで植え付けられた恐怖は、ここに来るとすべて消えるしね。
バリー:ああ、ほとんどニュースを読まないんだ。だからくだらないことを心配していない。誰かが何かを盗もうとしているとか、そういうくだらないことを何も心配していないんだ。ここではその「温度」がとても低い。犯罪は起こっているだろうけど、まるで、僕にとっては、馬鹿げたことを心配しなくていい頭の中の余分なスペースがあることが素晴らしかった。
訓市:ということは、ここでは平和な制作過程を過ごせたということかな。だって、あなたがここにいる間は、アメリカで日常的に起こっていることに気を取られないから。
ソラット:そして、静けさ。私たちが滞在している場所の一部でさえ、まるで人気がないように感じられる。誰もいない町に住んでいるみたいに。時々、3日か4日で一人しか見かけないこともある。歩いている人とか。
バリー:本当に素敵な孤独、静けさなんだ。都市に住みながら。うん。素晴らしいよ。だから、そう、まるでオアシスみたいだね。
訓市:東京でとても良い、ゆったりとした1ヶ月を過ごしたようだね。明日出発するといっていたけれどこの旅での最高の出来事、思い出は何だった?
ソラット:そりゃあ私たちの結婚式だと思うわ。本当に特別だったわ。クンが牧師役をしてくれて、本当に特別だった。これ以上特別なことは想像できなかったし、本当に感謝しているわ。
訓市:どういたしまして(笑)。代々木公園で雨の中なのに、あんなにたくさんの人が来てくれて驚いたよ。でも、すごく穏やかだったね。
ソラット:本当に。
訓市:良い集まりだったよね。特に、たまたま東京ににいた多くの知り合いの外国人が集まって。そのエネルギーは素晴らしかった。
バリー:ほんと信じられないよ。前日に場所を決めたんだ。自転車で走り回っていて、雨から守ってくれるメインのパビリオンはベビーカーとか、そこで遊ぼうとする人でごった返していて、僕たちは「どこか別の場所でやらなきゃ」ってなったんだ。で、あの場所を一緒見つけて「モンスーン・ウェディング」と呼び始めたんだ。嵐が来ると思っていたけど、守られていたし、暗くて、周りに緑があるのが気に入った。
訓市:周りに誰もいなくて、とても特別な瞬間だったよね。じゃあ、これが最後の質問になるけど、今回2人で一緒に展示をしたのは初めてだよね?
ソラット:そうよ。連名でやるのは初めて。
バリー:まぁでもソラットはどんな場所でも、高速道路の脇など、場所さえあればどこでも作品を作ってきたんだ。彼女の線はとても……何て言えばいいかな、ピュアなんだ。そのピュアさというのは、おそらくアートでもそうだけど、特にグラフィティの世界では、誰もが失ってしまったものなんだ。僕たちは皆、カッコつけて、クールに見せようとして、他の奴らを感心させようとしているからね。でも、彼女のものは“生”そのものなんだ。
ソラット:私は絵を描けるし、パフォーマンスもできるけど、私の線は9歳児が描いたみたいに見えるわ。
訓市:いい組み合わせだし、また一緒にやりそうだね。
バリー:僕はやりたいけど、ソラットはもう僕に飽きてると思うよ(笑)。僕はピュアなものが好きなんだ。ピュアなものに近づけるだけ近づきたい、分かるだろう? まだ搾取されたり、学校で教え込まれすぎたりしていないもの。同じことだよ。 僕は常にソラットが持っているような、あのピュアなラインを探しているんだ。そしておそらく、僕はそれを手に入れることはできない。手に入れる術もない。僕はもう60年近く色々なものを見てきて、特定の層の人を感心させようとしたり、お金を稼ごうとしたりして、もうめちゃくちゃなんだ。一方、ソラットはまるで、指先から真っ直ぐに、スプレー缶だろうがペンだろうが、彼女が使うものからそのまま出てくるんだ。そう、あのインスピレーションを持つことは驚くべきことなんだ。そして、鏡だよ。彼女が最初にやった鏡の作品で、頭を地面に押し付けているような作品があって、彼女は「これ嫌い、どけて」って言ってたんだ。僕は「えっ」て感じだったよ、あれは驚異的な、ここ何年かで見た中で最もピュアなアート作品だ。線も意図もピュアなんだ。そして彼女はそれを嫌がっているから、見せられないんだけどね。
ソラット:スーツケースの底に隠したわ。
バリー:ソラットが許してくれたら、いつか君たちとシェアするよ。あれはとてもプリミティブ、原始的なんだ。本当にプリミティブなものを見たり、聞いたり、あるいは今まで聞いたことのないものに触れたりすると、君の思考プロセスや物事の見方全体が再構築される。ソラットは僕にとってそういう存在なんだよ。彼女はアートにも疎くない。たくさんアートを見てきたし、アートの題材にもなってきたんだから。
ソラット:主にアートの題材としてね。
バリー:でもね、ソラットが実際に持っているものは、すべてのアート作家が求める、とてもピュアな最高の何かだ。それ以外にどう説明したらいいのか分からないけれど。
訓市:それが、今回の展示を見に来る人たちに感じてほしいことですか?
バリー:来た人がそれを感じないわけにはいかないと思うよ。「ああ、あの線がとてもいいね」とか「美しくレンダリングされている」というようなごまかしがない、純粋なものだから。純粋なものを見るのは本当に刺激的だよ。僕は昔からずっと線を見てきたんだ。そしていつも、鉛筆の持ち方を教わる前、あるいは「本物らしく見せろ」とか、そういった無意味なことを教わる前の、よりプリミティブなものに立ち返るんだ。感情や誰かの気持ち、あるいは特定の事柄についてどう感じているかを理解する最も手っ取り早い方法は、僕にとっては視覚を通して、まるで一滴のインクのように伝わるものだ。言葉よりもずっと前にね。ちらっと見ただけで、それが何を伝えているのかすぐに分かる。アートは国際言語のようなものだって感じてる。僕たちは視覚的な人間だけど、視覚が持つ、語られない言語を理解することは、最も素晴らしいことのひとつだって思うんだよ。
インフォメーション
May Dare & Barry McGee “LiTTLE BY LiTTLE”
会期:〜1月31日(土)
休館日:日曜日、月曜日
開館時間:11:00~19:00
場所:Scooters For Peace(東京都渋谷区神宮前2-19-5)
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