TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】On-U Sound

執筆:エイドリアン・シャーウッド

2025年10月16日

The On-U Sound family     
Photo: Kishi Yamamoto

Little Annie, Denise, Adrian and Lee Perry
Photo: Kishi Yamamoto  

22歳のときに〈On-U Sound〉を立ち上げました。最初のリリースは7インチで、A面がニュー・エイジ・ステッパーズの「Fade Away」、B面がロンドン・アンダーグラウンドの「Learn A Language」。もともと〈On-U Sound〉はコレクティヴにしようと思っていたんです。僕と、ロンドン・アンダーグラウンドのピート・ホールズワース、クリエイション・レベルのクルーシャル・トニー、ギター&ベースのマーティン・フレデリックスといった数人で。みんな何年も前からの友人同士で、仲も良かったし、新しい挑戦を始めたかった。それに前のプロジェクト〈Hit Run〉で録ったテープもいくつか手元にありました。

Adrian and Denise
Photo: Kishi Yamamoto

同じ頃に出会ったのがキシ・ヤマモト(僕のパートナーであり、ふたりの子どもの母親)です。ロンドンでは音楽誌『ZIGZAG』に寄稿していて、のちにその東京版『ZIGZAG EAST』を手がけることになります。彼女は写真家としてもとても才能のある人です。

ZIGZAG East No. 2 (April, 1981)

レーベルをコレクティヴとして始めた当初は、みんなで本気で取り組んでいて、とても熱意がありました。〈On-U Sound〉という名を考えたのはデニス・ブレイディで、「onus(責任)」という言葉とかけて「on you(君の)」という意味も込めていたんです。スローガンの “Disturbing the comfortable, comforting the disturbed(安穏とした人を揺さぶり、不安を抱えた人を慰める)” がついたのはずっと後で、数十年後のこと。それは昔からある「アートとはそうあるべきだ」という引用です。

ただ実際には、スタジオを押さえてレコーディングやミックス、マスタリングをするなど、時間もリソースもかなり必要で、理想主義的すぎてビジネスとしてはあまりに非現実的だと気づきました。コレクティヴとしては長くは続きませんでした。当時はディストリビューターからの全面的なサポートもなく、初期の〈On-U Sound〉作品のライセンスを回すのも簡単じゃなかった。最初の7インチを出してから1年ほどでコレクティヴは解散し、僕はキシとふたりでやっていくことに決めました。借金を抱えながらもレーベルを続け、最終的にはクリエイティブにも経済的にも報われることになります。

Crawl, ‘Spin Busters: On-U Sound’ (October, 1991)

〈On-U Sound〉は僕のプロダクションをリリースするレーベルです。常に素晴らしい人たちと一緒にやりたいと思っていて、たとえばポップ・グループのマーク・スチュワートに歌詞を書いてもらったりして、そのぶん自分はインストゥルメンタルに集中できる。音楽はいつも胸を張って誇れるクオリティで、僕自身と、関わるミュージシャンやアーティストの信念を体現するものになっているんです。

プロフィール

エイドリアン・シャーウッド

1958年、ロンドン生まれ。ソロ作品、タックヘッドに代表されるバンドとしての活動、また彼自身が主宰する〈On-U Sound〉レーベルを通して唯一無二の美学を体現するクリエイティブな存在として、常にアーティストとしての仕事とプロデューサーとしての仕事を並行して行ってきた。
8月にリリースされた13年ぶりとなるソロアルバム『The Collapse Of Everything』をひっさげ、11月にはDUB SESSIONS 20th Anniversaryで来日決定!

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