TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】ふちどり文字筋

執筆:大竹笙子

2025年5月18日

前回のコラムの中で、学生時代やたらと手紙交換をした話を書いている時、プリクラ交換と手紙交換が連携していたと気づき、そこから頭の中でプリクラメモリーズが爆発した。
そんなにプリクラが好きで撮りまくっていたのかと聞かれたら、そんな記憶は正直ない。
なのに何故か。原因は、プリクラの落書きだと気づく。
私は撮影後の落書き時間を「プリクラ」として記憶していて、あの豊富な落書きのペンの色や種類を思い出した時、爆発トリガーが引かれた。
ネオンペン、ぷっくり半透明ペン、影色ペン、ちょっと文字先が細くなるように滲むペンも好きだった。たまるか〜!(『あんぱん』見てます)
プリクラは私にとって「撮る」ものではなく、「描く」ものだったようだ。

落書きのペンの中には、書いた文字が自動でふちどられるペンもあったが、私は自力でふちどって描いていたことを思い出した。
もともと幼少期から気になったフォントを模写することが好きだった。文字をふちどる時、文字を文字としてではなく、ただの形として捉えられるのが面白いし、自分にとってのこれ!と納得できるバランスを探れるのもいい。
思い返すと、そういう家での一人遊びとして完結していた文字の模写が、プリクラの落書きを通してみんなと共有できるものとして日常に入り込み、もっと上手くなりたいという欲が出始めたことで、ふちどって文字を描く筋力がついていったのかもしれない。

去年制作した絵本の中の文字を、全てふちどり文字で仕上げられたのもこの筋肉のおかげだ。
文字量と納期的に、全ての文字を版画で彫って刷ることは流石に叶わなかったが、一文字ずつ全てノートに描き、それらをデータ化しはめ込んでいった。

原画文字とその文字を実際にはめ込んだ絵本のページ

そもそもは、読みやすさを考慮し文字に個性は不要と考えていたので、Tomoさんには無個性な書体を使えたらと話していた。
しかし、絵本の絵が全ページ決まったあたりから、文字が手書きの方が良いかもしれない、という、うすうすの確信や、紆余曲折を経て、結局文字も描かせてほしいと Tomoさんにお願いした。
結果、ひたすら文字を描き続ける 1000 本ノック状態のラストスパートだったが、最終的に全て一任してくれたTomoさんには感謝しかないし、手書きの文字によってグッと絵本の世界観がまとまったと思っている。

今回は制作の話につながったよかった!ほいたらね!(『あんぱん』明日からも楽しみ!)

「Dream of the egg」 Tomo Katsurada 2024
原画は全ページ版画やコラージュで制作し、表紙はシルクプリント、中身はリソプリントで印刷されている。全4曲収録。日本での販売分は現在完売御礼!

プロフィール

大竹笙子

おおたけ・しょうこ|1993年生まれ。2017年ロンドン芸術大学テキスタイル学科卒業。
日常で目にした情景を版画に落とし込み、版を反復したり様々な素材を用いて唯一性のある版画を制作。

近年では、展示の他に本の表紙や挿画、テキスタイル、レコードジャケットなど幅広いジャンルを通して作品を発表している。

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