TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】オフィスと植物

執筆:Atelier HOKO

2025年5月3日

Atelier HOKO


text: Atelier HOKO
translation: Tsukasa Tanimoto
edit: Miu Nakamura

現代の多くのオフィス、特にモダンに見せようとしたり、モダンだと思い込んでいたり、モダンでありたいと願っているオフィスにおいては、観葉植物がぽつぽつと配置されている光景をよく目にする。中には、壁一面をさまざまな植物で覆い、人工的でありながらも、従業員に森の中にいるかのような感覚を与えようとする例もある。屋外との接触が極端に少ないことへの埋め合わせであるのかもしれない。理由はどうあれ、オフィスに植物が置かれていることは、一般的に「良いこと」とされている。

私たちも、約10年前にこのオフィスに移転した際、同じように多くの植物を置きたいと思った。「モダンさ」を求めていたわけではなく、クララ(Atelier Hokoを構成する二人のうちの一人)の植物への愛情によるものであったが、今思えば少し恥ずかしい。豊富な自然光を活かそうと、オフィスの半分をさまざまな鉢植えで埋め尽くしたが、すぐに問題に直面した。カーテンを開ければ植物には光が届くが、常に眩しさに目を細めなければならず、かといってカーテンを閉めれば目は楽になるが、植物から必要な光を奪ってしまう。

明確な正解はないが、日々バランスを探りながら過ごしている。

室内に植物を置くことは視覚的な喜びをもたらすと、多くの人が考えている。また、空気をきれいにしたり、害虫を遠ざけたりする効果があるとも言われる。私たちにとっても、これらの効果(「モダン」であること以外)が、当初オフィスに植物を取り入れようとした理由だったのであろう。ただ、次第にその裏側には別の側面があることに気づいた。それは「散らかり」である。

実際の植物は、その周囲を散らかせる。葉や花、土、さらには正体不明の湿ったものや乾いたものを撒き散らす。時には、奇妙な虫や素早く動くアリ、その他の害虫が一晩で現れ、適切に対処しなければ大きな問題を引き起こすこともある。ある意味、完全に人工的な空間に植物が置かれるというのは、人間が全身鮮やかな色の登山ウェアを身にまとい、スパイク付きの杖を手に持ち、大声で喋りながら森の真ん中に立っている様子と同じくらい、場違いな光景であると言えるだろう。

面白いことに、私たちのオフィスにおいて、これを問題とは考えていない。むしろ、鉢の周りに散らばる土や小石を拾ったり、乾いて平たくなった葉が裸足の足裏に貼り付いたりする体験は、植物の視覚的効果を超えた自然を感じさせる効果をもたらす。まるで、植物本来の自然的な振る舞いが鉢の中で飼い慣らされながらも、私たちが時折遭遇できる「自然」の片鱗を残しているかのようだ!この散らかりを経験することは、人工的な環境にいる際に抱きがちな病的なまでの秩序欲求を和らげてくれると同時に、四方を囲う壁の向こうに広がる世界を仄めかしてくれる。もしかすると、室内に置かれた植物は、人間と自然との間に無意識に引いてしまう境界線を、少しだけ緩める力を持っているのかも?

悲しいことに、私たちのオフィスにあったほとんどの植物は、この10年の間に枯れてしまった。もしかすると、オフィス内のレイアウトを頻繁に変えるという悪い癖(時には部屋ごと移動することもあった)が、植物にストレスを与えたのかもしれないし、少なくとも慣れ親しんでいた日当たりのリズムに影響を与えたのかもしれない。いずれにせよ、枯れた鉢植えを片付けるたびに過度に自分たちを責めることはせず、生き残った植物たちに目を向けるようにしている。今日もなお、共に過ごしている植物たちは元気に育っており、森へ移り住むことなく自然な生き方を思い出させてくれるその存在に、ひそかに感謝している。

プロフィール

Atelier HOKO

あとりえ・ほこ|アルヴィン・ホーとクララ・コウによる、シンガポールのインディペンデントリサーチプラクティス。彼らが発行する雑誌「Science of the Secondary (取るに足らない科学)」には、毎号日常生活の中にある、あまり気に留められないモノ・コトが毎号ひとつ取り上げられ、様々な視点から探求したことがまとめられている。

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