TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】Sedia 1と、僕らのワークショップの日々

執筆:小梶真吾

2025年5月2日

1974年に発表されたエンツォ・マーリの『Sedia 1』。彼のプロジェクト『Autoprogettazione(オートプロジェッタツィオーネ)』の一環としてデザインされた、セルフメイドの椅子だ。一見ラフで素朴なその佇まいは、学生時代に授業か何かで触れた記憶がある。けれど正直、そのときは何も響かなかった。このプロジェクトを始めるにあたって、改めてこの椅子に出会い、ようやく気づいたのは、それが「見た目の整った美しさ」を語るものではなく、構造的必然性や、誰もが作れるというプロセスの中から立ち上がる美しさを宿しているということだった。その形に、どこか憧れを感じた。自分たちも、こんなふうに何かを作りたいと、心から思った。

我が家のSedia1はホームセンターで手に入った板がオリジナル寸法より5mmほど細かったりして、若干華奢。そういう偶然性も含め形になるのが良い。そしてそれくらいではブレないアウトラインの強さに感服する。

先日、代々木八幡のセレクトショップ『Esmeralda Serviced Department』でワークショップを開いた。目的は、僕らがこの1年取り組んできたものづくりを実際に体験してもらうこと。そしてもうひとつは、マーリの椅子のような――いや、名前を出すのはさすがにまだまだおこがましいと思っているけれど――プロセスがその場で製品へと変わる瞬間を、販売の現場で即興的に立ち上げることだった。〈売買〉のための空間に〈作る〉という時間を差し込むと、ショップの空気がどう変わり、参加者の体温にどんな揺らぎをもたらすのか。僕ら自身にとっても学びの多い数日間だったように思う。こうした試みは、これからも定期的に行いたい。

Workshop “U-A-R-K”#002 Installation view at Esmeralda Serviced Department / Photo: Local artist

僕らの活動は、「人々が衣服を手に入れる」という行為を、もっと自由で、多様なものとして捉え直す試みでもある。たとえば、いま着ている服が、どんな素材から生まれ、どんな構造やバランスで形づくられ、どんなプロセスを経てここにあるのか。そんな背景を知るだけで、世界の見え方がほんの少し変わることがある。あまりにも問いを欠いたエコロジーの紋切り型や、素材の多層的な可能性を無視して誰かが線引きした「善悪」をなぞるだけの正しさ。手に取る人の想像力や選択肢がいつのまにか削ぎ落とされるようなものづくりには僕らは加担したくない。もう少し人間らしく、自然体で。小さな実践は、凝り固まった既成概念をも編み直していく。

インフォメーション

【#4】Sedia 1と、僕らのワークショップの日々

お知らせ

今夏〜秋にかけて京都のリサーチスタジオ『なはれ』と共同で、プロジェクトを立ち上げます。ただいま絶賛準備中。期間中にはワークショップなどのイベントも開催予定です!詳細は以下インスタグラムなどでも告知されます。(photo: Yasugi Kazuoki)

場所:なはれ(〒600-8119 京都府京都市下京区富小路通六条下る本塩竈町534)

Official Website
https://www.nahare.xyz/

Instagram
https://www.instagram.com/nahare.xyz/

プロフィール

小梶真吾

こかじ・しんご|〈TALK NONSENSE〉ディレクター。1991年生まれ。東京都出身。京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)卒。卒業後渡仏しAcadémie Internationale de Coupe de Paris修了。帰国後、いくつかのブランドやデザインスタジオに勤務、立ち上げに関わる。2022年にKKJデザイン事務所を設立。衣服が介在するあらゆる事の企画・生産・調査・研究・監修を活動領域とする。2024年からニットデザイナーの沖裕希とともに〈TALK NONSENSE〉を立ち上げ、製品の開発、リサーチ、ワークショップなどを行っている。

Official Website
https://talknonsense.xyz/

Instagram
https://www.instagram.com/talknonsense.xyz/