ライフスタイル

海外の映像作品から着想を得た〈MAKALU STORE〉のウォールポケット。

どんな人が作ってるんだろう?

2025年3月2日

部屋作りのマイルール。


photo: Shogo Higashino
text: Ku Ishikawa
2025年3月 935号初出

心惹かれた家具の作り手に会うために、日本各地のアトリエへ。
ものづくりの背景にも共感して選べたら、長く大切に使えるはず。

シグネチャーと言っても過言ではない、名作家具にインスパイアされたウォールポケット。そもそも布地で作られることが多かった壁掛け収納をプラスチックで作った製品を見て、さらにそれを布で作ったら? と思いついたのがきっかけだったそう。

 インテリア好きならすぐにピンとくる。ドイツの巨匠によるミッドセンチュリーの名作家具を、布地を用いて再現したウォールポケット。そんな、一風変わった楽しげなキルト作品を手掛けているのが、〈MAKALU STORE〉の龍詩由さん。ポスター感覚で飾れて、実用品としても使えるキルトの魅力を、独自の作風で表現している。

掛け軸タイプのウォールポケットは、絵画的な雰囲気が増したそのアップデート版。あえて茶の間や和室に飾ってみてほしいそう。

「きっかけは、アメリカやヨーロッパの映像作品からの影響。例えば、『イエローストーン』シリーズのカウボーイたちの宿舎にさりげなく置かれているキルトや、映画『ファーゴ』で寒い外から家に入るとカラフルなキルトが目に飛び込んでくるシーン。モノクロ的な外の世界から、カラフルで暖かい屋内の世界への転換装置というか。そんなシーンが素敵だなと思って、自分でも作ってみたいと思ったんです」

 そうして自分なりに調べるうちに、アメリカンキルトよりも色鮮やかでダイナミックな図柄が特徴のアフリカンキルトや、布地の組み合わせで絵を描いた古い時代のキルトに出合った。気になるキルトを買ってきては解体し、作り方は独学で学んでいったそうだ。海外のキルトアーティストやタイル作家の作品にもインスパイアされながら、色鮮やかで抽象的なパターンのスタイルが出来上がっていったという。

「海外の部屋って、ブランケットやキルトと同じくらいポスターが壁に飾られていることが多いじゃないですか。私が作るキルトも、どちらの役割も担えたら嬉しいですね。お客さんにも『壁に飾りたい』と言われることが多いですし。用途を固定しない自由さが、キルトの魅力だと思っています」

 使うか、飾るか。それともその両方か。ブランドは始まったばかりだが、軽やかで自由な〈MAKALU STORE〉のウォールポケットが、キルトの世界を押し広げていくのが楽しみだ。

馬のモチーフはデフォルメ加減がいい具合。3種類の色がランダムに配置されているからか、飾っていても飽きない。

上/シンプルな四角で構成された図型の鉢カバー。プロダクト的な着想のアイテムが多いのも特徴のひとつ。下/設計段階の布地のサンプル。抽象的な図案はイギリスのキルト作家Tessa Layzelleやベルギー在住のアーティストcamille mézi-fardinなど、海外の芸術家からも影響を受けている。

プロフィール

海外の映像作品から着想を得た〈MAKALU STORE〉のウォールポケット。

龍 詩由

キルト作家

りゅう・しゆう|1990年、鳥取県生まれ。アパレル会社を経て、独学でキルト制作を学ぶ。2021年頃から一般向けへの販売を開始。2024年には恵比寿の『SALT AND PEPPER』で個展を開催。今後は年に1回を目標に個展を実施予定。

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https://www.instagram.com/makalu_store.265/