TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】レジャーを忍ばせる
執筆:miu
2025年2月2日
約4ヶ月ぶりに日本に帰ってきた。
空港で歩く歩道を降りた途端、足が妙に重く感じた。4ヶ月という時間をかけて海外で築いた自分の感覚があっという間に消え去るような気がしたのだ。
あの日々は幻だったのではないかとさえ思った。
満員電車、機械化されたような日本語、繰り返されるニュースの映像、プラモデルのように均一な建物、景色の代わりに映される広告、感情のない音声。
目が痛くなるほどの情報量に圧倒される。
それなのに、日本の生活にすぐさまと自分が適応している。
しばらく履いていなかった実家のスリッパのように、多少の違和感はあってもすぐに慣れてしまうあの感じ。
長年染みついた「日本の日常」が段々と呼び起こされたのであろう。
時差ボケにやられながらベッドに寝転び、窓の外を眺めていると飛行機が空を横切った。
機体に乗っている時は真っ直ぐ前に進んでいるのに、地上から見上げる飛行機は斜めに飛んでいるように見えるのはなぜだろう。
そんなよーく考えたらわかることをボーッとしながら考えていた。
中島らもの「訊く」という本の中で旅の達人久路流平が教えてくれた「レジャー」という言葉の本当の意味。
「レジャーって言葉、普通は遊びって意味で使いますよね。本当はぜんぜん違ってて、どうでもええことを考えるってことなんですって。」
この言葉を思い出し、海外で過ごした貴重な時間を振り返る。
散歩をしていると窓からアラーム音が聞こえる。
他人という存在を確認しながらもその人よりも私の方が先に今日を始めているという優越感。
忙しなく歩く人々や風によって舞い続ける枯葉と、フェンスや建物に引っかかったまま静かに佇む枯葉。
その二つの対照的な風景を私は立ち止まったまま見つめ、静と動の共存を感じる。
日本にいてもこの感覚には辿り着いたかもしれない。
けれど海外での生活を経たからこそ、同じ気づきでも見え方や受け取り方、意味も違う。
生まれ育った日本での生活と比べると海外での生活は大変だと思うことが多い。
だがこういった発見を重ねるたび、自分を縛っていた「当たり前」というものから少しずつ解放されているのだと実感する。
春からまたヨーロッパでの生活に戻る予定である。
今日本で過ごしている日々も貴重だと思うことによってヨーロッパに戻った後どのように変化し、積み重なっていくか楽しみである。
プロフィール

miu
ミユ | 1996年生まれ、滋賀県出身。モデル。
19歳からモデル活動をスタート。
「ViVi」の専属モデルを経て、現在は国内外のファッションブランドの広告やカタログなどで活躍。
Instagram
https://www.instagram.com/_miugram_/
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