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アディダス オリジナルスと過ごした、ニューメキシコ州での2日間。

adidas Equipment

2025年1月10日

photo: Kai Naito
text: POPEYE
2025年2月 934号初出

1991年に誕生した〈adidas Equipment〉が久しぶりの復刻!
これはサンタフェで開催されたイベントに参加した旅の記録である。

「ニューメキシコ州に行きませんか?」。〈アディダス オリジナルス〉に誘われた新作お披露目のイベントはまさかのサンタフェだった。故・篠山紀信先生が宮沢りえさんを撮り下ろした写真集くらいしか思い浮かばなかったけど、二つ返事で快諾。カメラマンと飛行機に飛び乗った。

 羽田からダラスまで11時間、国内線を乗り継ぎ1時間半のフライトでアルバカーキ国際空港に降り立つ。思ったより寒い。それもそのはずで空港の標高は約1600m、1時間ほどのドライブで向かうサンタフェは約2100m。標高は高いが見渡せば一面砂漠。訪れた11月中旬だと、昼は15℃ほどで日が暮れるとマイナスまで気温が落ちる砂漠らしい気候だ。地平線に沈んでいく夕日は格別に綺麗だという。楽しみ。サンタフェはアメリカ合衆国の建国よりも前の1610年に創設された2番目に歴史がある街。元々プエブロインディアンが定住していて、スペイン統治時代の名残で広場を中心にアドビと呼ばれる日干しレンガの建物が立ち並ぶユニークな街並み。大都市と違ってゆったりとした時間が流れていた。

今回の宿「ビショップ ロッジ」内でゲスト同士が知り合うためのカクテルパーティとディナーが開催された。ディレクターのニックから挨拶も。

 イベント2日目。朝食を済ませてから集合したひと部屋にはずらっと並んだ〈エキップメント〉のアパレル。また新作かと見間違えたけど、これらは日本から参加した「sabukaru」の夏樹くんが買い集めてきた古着だった。’93年のボストンマラソンのロゴが入ったもの、サッカークラブの刺繍付きのものなど、各スポーツラインの最上位に位置するコレクションだっただけあってラインナップも多岐にわたるんだな。〈エキップメント〉の歴史を振り返った後は、好きなものを持ち帰っていいとアナウンスが。え、嬉しい。そしていよいよイベント本番。車で1時間ほど移動したところでグループランを行うと聞いていたのだが、それ以上の情報はなし。不安と期待も乗せた車からの景色は砂漠から山々へ。さらに標高が上がると辺り一面雪景色! たった1時間のドライブで日本縦断しちゃったくらいに風景が移り変わるもんだから視線は子供みたいに窓の外に釘付け。バレスカルデラ国立自然保護区でのランチブレイクを経て、ついに到着したのはまた雪……ではなくて、石膏で真っ白な鉱山地帯!

ヘメス山とカルデラ地形からなるバレスカルデラ国立自然保護区。見渡す限り草原が広がり、今の時季は雪に覆われている。野生のエルクが見られることも。

この日のために特別に作り出されたトラックはこの鉱山エリアにある石膏でできている。イベント終了後はすぐに解体され、使用した素材は石膏ボードとしてニューメキシコ全土に配布されるそう。儚いけれど、地域に還元されるのは素晴らしいね。

『スター・ウォーズ』のタトゥイーンだね、こりゃ。そこに現れたのは、今回のためだけに石膏で造られた陸上トラック。トラックの中心には焚き火のある談話スペースが設けられている。待ちきれずに走り出す人、全景が見たくて小高い丘を目指す人。現実とは思えない光景に僕は絶句してしまった。東京じゃ駅でも走らないのに、こんなスペシャルな場所でならと、〈エキップメント〉のシューズの助けもあって自然と走り出してしまった。本当に気持ちがいい! 次第に日は傾き、砂漠が夕焼けに照らされる。編集者として失格の覚悟で言うならば、この景色は言葉にできない。一生心に残り続ける経験をしてしまった多幸感で満ち足りた気持ちよ。

トラックに到着する前にニックから全く新しいシューズ「アグラビック」、「プロ91/24」、そしてそのプロトタイプがプレゼンテーションされた。「プロ91/24」には女子マラソンで世界記録を叩き出した「アディゼロ」のソールが採用されている。

時間をともにした個性豊かな参加者たちをスナップ。

左/①、中/② 、右/③

左/⑤、右/⑥

左/⑦、中/⑧、右/⑨

①: Horacio Gonzalez 〈Gospel Estudios〉ディレクター、②: Sudan Green 「Spirits Up Wellness」ファウンダー、③: Manuel Lopez モデル、スケーター、④: Georgia Graham ファッションライター、⑤: Bijan Sosnowski フォトグラファー、⑥: Duncan Wolfe ビデオグラファー、⑦: Haluhi フリーランスPR、⑧: Udai ビデオグラファー、⑨: NATSUKI 「sabukaru」ディレクター、⑩: Marco Piccardi 「MENTAL ATHLETIC」ディレクター

左/⑪、右/⑫

左/⑬、右/⑭

左/⑮、右/⑯

左/⑱、右/⑲

⑪: Keith Herron 〈advisry〉デザイナー、⑫: Benee ミュージシャン、⑬: Daqui Gomis 『JAH JAH』Co-Owner、⑭: Jens Burmester 『OVERKILL』ヘッドマーケティング、⑮: Vanessa Amaranto 〈ART COMMUNITY〉Co-Founder、⑯: Lorenz Christopher 〈ART COMMUNITY〉Co-Founder、⑰: Taiba Akhuetie アーティスト、⑱: Bianca Valle 栄養士、⑲: Nati タトゥーアーティススト

 この旅を通して〈アディダス エキップメント〉が伝えたかったのはプロダクトのデザイン性とか機能性とかじゃなくて、皆で美しい景色を共有する喜びや走る気持ちよさなのかな? なーんて、満天の星の下、帰り道にじーんと考えた。

インフォメーション

アディダス オリジナルスと過ごした、ニューメキシコ州での2日間。

adidas Equipmentとは

1991年、ロバート・ストラッサーとデザイナーのピーター・ムーアによる発案で「本質の追求。必要なのはそれだけ。」をコンセプトに誕生したライン。ランやテニスなどジャンルを横断して上位モデルに、従来のトレフォイルロゴ(現在のオリジナルスのロゴ)ではなく左のエキップメントロゴが使われた。何度かの復刻を経て今年、本格的に復刻。1月9日に発売される新作のシューズは本誌P122で。