TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】ヘニャパ族との暮らし。最終章、そして。

執筆:加藤紀子

2025年1月4日

 旅のことを読んでもらうイメージだったのに、結局ベネズエラの“ヘニャパ族”の元でホームステイさせてもらった話で終わってしまう気配満載の、この連載。もっと書きたいことがあったのに!と思いながらも早速、年末からの続きです!

 村を出ておよそ2時間が経った頃、村長が声を上げ若者が喜んだのは、倒れた木の穴の中に“アックイン”と呼ぶ獲物を見つけたから。逃げようとする“アックイン”を二本の棒を使って掴み、仕留める体制になった時に「ノリコ!」と呼ばれてバトンタッチ、「アックインがなんなのか分からないけれど、このチャンスを断ったら仲間にもなれない」ようで、場の空気を乱さないことだけを大事にしてきた人生、しかと受け取りゆっくりと棒をクロスさせていくと、穴から「キュウ……」と、か細い声。中から取り出された“アックイン”の正体は、みっしり全身を毛で覆った大ネズミ!!
その姿はみんなにとっても想像を超えた大きさだったのか全員が声をあげて驚き(もちろん私は誰よりも大きな声)、意気揚々とアックインをショルダーバッグのよう肩に掛けて来た道を戻り、料理担当の女性陣に収穫を報告。すると「アックインのレシピはこれなのよ」と慣れた手つきでアックインをグリルして毛を剥がし、肉だけの姿に。そこからグツグツのお湯で煮て、ホロホロになったら出来上がり。そんなアックイン入りスープは、緑色の硬いバナナを蒸して潰して練った団子と合わせて頂きます。

 子供の頃、父が育てたネギを庭から抜いてくるよう頼まれただけでも面倒だと思っていたのに、ここでの暮らしはそもそも食べ物を探すところからが当たり前。買えば自由に手に入る暮らしの中にいた私にとって、気づいていなかった“物との向き合い方”に触れることが出来たこの食事は、25年経っても忘れられない味と記憶に。滞在中、渡航前に受けた予防接種の影響で発熱し、動けなくなった時には、どこかから採ってきたスイカのような果物の汁を飲ませてくれたり、バナナの葉を敷いて休ませてくれたり、どんな薬よりも優しさが体に染みました。

 結果、共通の言語を持たずとも理解しあって毎日楽しく過ごさせてもらえて、お別れ時には「また会いたい!」と願った甲斐あってか、ありがたくも3年後に再会スペシャルのロケでまた行けることになり、留学中のパリからみんなの元へ飛びました。

「ノリコ!」突然帰ってきた私の姿に驚きながらも集まってくれ、変わらぬ面々との再会を喜んだ直後の衝撃!!

 村長は眼鏡姿で腕には時計が!腰布にはベルトが!村人の足には長靴が!さらに数日後に出かけた狩りでは自転車に乗ってだなんて、想像を超える村全体の変化と進化!!
彼らの中にはベネズエラの公用語であるスペイン語が話せる人もいて、フランス語を勉強中の私が理解出来る言葉がいくつもあり(どちらも語源がラテン語のおかげ)、ジェスチャーや絵以外のコミュニケーションが取れる事も増え、より彼らを知り、また居心地の良い滞在をさせてもらうことが出来ました。

「どこ行こうかな?」とスマホをタップしたり誰かのポストのおかげでまだ見ぬ世界を感じることが出来たり、カード一枚でお支払い!なんてスマートな旅が出来るようになったけど、それでも時には旅先で戸惑いたい。「?」と悩みたい。「なるほど!」と現地で喜びたい。そしてその景色を絵葉書に綴りたい。

2025年、どなたも良き旅、良き出会いを!
4回にわたってお付き合い頂いた方々、ありがとうございました!

こちらは泥沼の中から亀を探し出すというお仕事に同行させてもらった、ブラジルのアマゾン。その後グリルして頂きましたが“土”の味がした事を覚えています。

プロフィール

加藤紀子

かとう・のりこ|タレント。1973年、三重県生まれ。1992年に歌手デビュー後、CM、ドラマ、バラエティ、執筆活動の傍ら、ライフワークとして都内での野菜作り、また「お豆腐親善大使」を務めるなど食に関する興味が多岐にわたる。オフィシャルブログ「加藤によだれ」では日々の出来事を発信している。TBS「ふるさとの未来」レギュラー出演中(毎週水曜24:58~)

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