トリップ
C-BOY meets B-BOY 真夏のリオデジャネイロ、ブレイキン世界大会「Red Bull BC One」観戦記。
2024年12月23日
text: POPEYE
極寒のNYを経由しアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港に降り立つとそこは真夏でした。まず空港の名前が最高ですよね。リオといえばカーニバル(『オレレ・オララ』篠山紀信)で、続いてオスカー・ニーマイヤー(UFO建築)、シュラスコ(串焼きステーキ)、そしてジョアン・ジルベルト&アントニオ・カルロス・ジョビン(ボサノヴァ)ですよね。で、今回忘れてはいけないのがブレイキンです。
弾丸でリオデジャネイロに行ってきたのはつい先日。片道24時間以上かかり都合3泊7日の旅。わざわざ地球の裏側までやって来たのはブレイキンの世界大会がここリオデジャネイロで行われるからです。さてここで問題です! 我々といえばC-BOY、つまりシティボーイですが、さてB-BOYといえば? そう、ブレイキンボーイ! パリオリンピックで注目の競技だったのでそこで初めてブレイキンを見たというC-BOY(しつこい?)も多いと思いますが、パリオリンピックよりはるか昔、もう20年も前からやってきたというのが「Red Bull BC One」というブレイキンの世界大会です。
ワールドファイナルの直前、「CAMP」では最終予選の他、様々なイベントやワークショップが行われていた。
ここでブレイキンとは何か簡単に説明しておきましょう。ウィキ的に言えばヒップホップにおける4大要素(DJ、グラフィティ、MC、そしてブレイキン)のひとつ。’70年代前半のニューヨークでDJクール・ハーク(伝説!)が2枚の同じレコードを使うことで、主にファンクの楽曲における短いブレイク部分(ドラム演奏の部分)をつないでロングプレイするというヒップホップで最初の発明を行った。このブレイクビーツにあわせて踊ったのがブレイキンと呼ばれるダンススタイルになります。ここらへんはドキュメント映画『STYLE WARS』なんかを見ると詳しいです。では、観ていきましょうか。ブレイキンと一口にいっても実はいろいろな対戦スタイルがあります。これは私のお気に入り、「CAMP」で行われていた「Crew vs Crew」と呼ばれる団体戦の様子です。
団体戦はマイケル・ジャクソンの「BAD」のMV、もしくは映画『ウォリアーズ』(1979年)を彷彿とさせて胸が熱くなりました。
どうですか? まず自己表現としてダンスがあり、それに対する自信と誇り、仲間を鼓舞し、相手は挑発し、最後はお互いにリスペクト。だいぶ熱いですよね。そして何より楽しそう。自分もダンスの輪に入っていきたくなりません? 実際、休憩時間には観客が舞台にあがって自然とサイファー(輪になることをサイファーと呼ぶそうです)が行われていました。サイファーというのはラップだけかと思っていましたが歴史から考えるとブレイキンのほうがオリジンかもしれません。
試合と試合の合間に舞台にあがる観客たち。サイファーの中では大人も子供も関係なく、1人のB-BOYとして扱われるのがクールです。
ワンオンワンの個人戦である「Red Bull BC One WORLD FINAL」は最終日にトーナメント形式で行われました。日本には早くからブレイキンが根付いたこともあり、これまでも世界的にレベルの高いブレイカーを数多く輩出しています。今回も男女2人ずつ、いまの日本を代表するB-BOY(ヒロテンとノリ)、B-GIRL(ヤスミンとミームス)がワールドファイナルに出場しました。
ブレイキンの面白いところはブレイカーそれぞれが個性的で漫画やアニメ、ゲームのキャラクターみたいなところです。まるでハルクがいて、アイアンマンがいて、キャプテン・アメリカがいて、ってそんな感じ。それぞれに得意とするオリジナリティ溢れる技や動きを持ち、国籍や人種はもちろん、年齢、さらに言えばハンディキャップの有無も関係なく等しくステージにあがる。開催国であるブラジルからはサムカという片足のブレイカーが出場して大変な人気でした。このようなユニバーサルな垣根のなさもブレイキンの魅力。
ほんとに片足? ものすごいスピードで大技を次から次へと繰り出していく。
ブレイカーはアスリート的な資質だけじゃなく、オリジナリティやエンターテイナーとしての要素を併せ持つ必要がありそうです。ただし会場を沸かせた方が勝つとも限らない。素人目には勝敗まではなかなかわかりませんが、長くブレイキンを観てきた人でもジャッジの判定と意見があわない結果もしばしばあるとか。ちなみにジャッジはベテランのB-BOY、B-GIRLから選ばれますが、審判席に座る前にまず観客や出場選手たちの前で自分のブレイキンを披露するというのも面白い。こういったところに他のスポーツとは異なる独特のカルチャーを感じます。
アイシー・アイヴィスとメノウのB-BOY決勝戦。アメリカのアイシー・アイヴィスが会場を大いに沸かせるが……。
さてトーナメント戦の結果、B-BOYの決勝はアメリカのアイシー・アイヴィスとこれまで3回の優勝経験を持つオランダのメノウの対決に。結果はメノウが4回目の優勝を果たします。アイシー・アイヴィスのほうが会場を沸かせているように見えましたが、一緒に観戦していたベテラン記者によると、「トランジション」と呼ばれる技と技のつなぎがメノウは抜群にうまいそうで、テクニック的には断然上だったとのこと。確かにメノウのブレイキンは途切れなくヌルヌルと動いていました。ダンスはもちろんのこと、会場の規模、ブレイクビーツの音としての迫力、ジャッジの緊張感、観客の歓声と興奮、ムンムンとした熱気と匂い、現場でしか味わえないライブ感が会場には漲っています。
B-GIRLはパリオリンピックにも出場した18歳のインディアが優勝を手にした。ブレイキンは10代の選手も多く活躍する。
胴上げされるB-BOY優勝者のメノウ。「Red Bull BC One」で4回も優勝したブレイカーはいない。
「Red Bull BC One WORLD FINAL」は世界各国で予選が行われ、激しいバトルを勝ち抜いた猛者たちが年末に結集して世界一を決める大会です。ここ日本でも毎年全国で予選が行われてきましたが、2025年は東京の両国国技館でファイナルが行われることがアナウンスされ、会場は大盛りあがり。ブレイキンは長い歴史で培われた独特の価値観、ルール、スタイルで作られています。その文化を知れば知るほど奥行きと面白さを感じさせるカルチャーであり、学べば学ぶほど楽しむことができます。東京開催は11月なのでまだまだ予習をする時間がたっぷり。みなさんもぜひ東京で。Red Bullのサイトではブレイキンがわかりやすく解説されているのでこちらもチェックするとよいかと思います。
気がついたら真冬の東京。東銀座にある編集部でこの原稿を書いていました。現地にいたスタッフが「こっちの昼は夜で」とDA PUMPの歌詞みたいなことを言っていましたが、時間はおろか季節も真反対だとほんと夢のようです。あれ? 本当にブラジル行ったのかな? 旅立つ前はゴッサムシティのようなデンジャラスシティだと散々脅されていたリオデジャネイロですが、幸い危険な目にあうこともなく楽しんできました。自然が美しく、ブラジルの料理(フェイジョアーダ!)もお酒(カイピリーニャ!)もみんな美味しい! みなさんも人生一度はブラジルへ。ちなみにカーニバルの季節は2月ですよ。
街角からはサンバやボサノヴァ、ときにご贔屓のサッカーチームへの歓声、怒号も聞こえてきます。生きるエネルギーに満ち溢れた陽気な街です。
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