TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】クマにワニ、カエルのジャム!?

執筆:アンダーソン夏代

2024年9月14日

 POPEYE Web読者の皆様初めまして。北フロリダ在住のアメリカ南部料理研究家、アンダーソン夏代と申します。この度ご縁あってPOPEYEの編集者さんにお声掛けをいただき、これから1ヶ月、週に1度皆様にちょっとした食にまつわるアメリカ話をお届けする運びとなりました。どうぞお付き合いの程、よろしくお願い申し上げます。ではでは、第一話をどうぞ。

 きっかけは、夫がサウスキャロライナ州のハイウェイ沿いの店で買ってきてくれたお土産のジャムでした。熊の形をしたガラス容器に濃いラズベリー色のジャムが入っており、ラベルにはB.E.A.R JAMと印字されています。「ふーん、ベアージャムか。くまの容器だからこの名前なのかな?」と思っていたら、使用した果物それぞれの頭文字のBlueberry(ブルーベリー)、 Elderberry(エルダーベリー)、 Apple(りんご)、 Raspberry(ラズベリー)の頭文字を取ってBear Jamなのでした。 面白い上に単品の果物では味わえない風味が気に入ったので、「今度は一緒に買いに行こう!」と夫と話をしていました。

 その翌年、ベアージャムどころではない不思議な名前のジャムを、ジョージア州のハイウェイ沿いにある食料品店を兼ねたハム・ソーセージ店のジャム売場で見つけました。

 それらには、Ginger(生姜)、Apple(りんご) 、Tangerine(みかん)、Orange(オレンジ)、Raspberry (ラズベリー)の頭文字を取ったGator Jam(ゲータージャム、ワニジャム)や、Fig (いちじく)、 Raspberry(ラズベリー)、Orange(オレンジ)、Ginger (生姜) でFrog Jam(フロッグジャム、カエルジャム)などの言葉遊びであったり、秋の感謝祭をイメージしたクランベリー、りんご、シナモン、ピカンナッツ入りのハーベストジャムなど、どれも美味しそうな材料にユニークなネーミングです。気になるものを試してみたくなり、いくつか購入しました。

 さらに同じハイウェイ沿いのほかのお店でも、同様のミックスジャム類を発見。前述のゲータージャムやフロッグジャムはもちろんのこと、Tangerine(みかん)、Orange(オレンジ)、Elderberry(エルダーベリー)でToe Jam(トォゥジャム、足の指ジャム) や、バナナ、パイナップル、マンゴーを煮込んだモンキーバター(※1)なるものもあり、面白くてたまりません。

 結局、両店合わせてすぐには使い切れない量のジャムを買ってしまいましたが、甘さ控え目が主流の日本のものと違ってしっかりと砂糖が入っているので未開封のものは常温保存期間が長く、開封後も雑菌やカビが発生しにくいので、味を損なうことなく楽しめています。 これらがなくなったら、また新しいジャムを探しに行こうと夫に約束を取り付けたので、使いきるのが楽しみです。

おまけ

FROGジャム

材料(できあがり量 約500ml) 多ければ材料を半量に減らしても
ドライいちじく* 130g
熱湯 250ml
冷凍ラズベリー 250g
オレンジ ** 1個
グラニュー糖 300g
おろし生姜 小さじ4
レモン果汁 小さじ 2
粉ゼラチン*** 小さじ1
水 小さじ3

*お好みの種類を使用(大粒8個、小粒17個相当)
**果肉140~160g
***ペクチンを使う場合は不要。使用量や使い方はパッケージを参照のこと

作り方

下準備
・分量の水とゼラチンを混ぜ合わせふやかしておく。
・容器は煮沸消毒しておく。
・冷凍ラズベリーは常温に戻す。

1. ドライいちじくはへたを取って粗く刻み、分量の熱湯と一緒に小鍋に入れて柔らかくなるまで戻す。

2. ラズベリーは裏ごしして種を取り除く(メモ参照のこと)。

3. オレンジはさっと水で濡らしたあと粗塩をまぶしてよくこすり洗いし、表皮をすりおろす(白い部分は苦味の原因なので不要)。オレンジの果肉は粗く刻む。

4. 1に2とオレンジの果肉を入れて分量のグラニュー糖を加え、軽く混ぜたら強めの中火にかけて煮立てる。

5. アクをすくい取ってオレンジの皮とおろし生姜を加え、弱火に落として蓋をする。

6. 時々かき混ぜながらゆっくり煮込み、薄くとろみが付くまで(105℃目安)煮詰まったらレモン果汁を混ぜ入れ、火からおろす。

7. 6にふやかしたゼラチンを溶かし入れ、熱いうちに容器に詰めて蓋をし、自然に冷ます。

メモ
・冷蔵で約3ヶ月保存可能。
・パンに塗るほか、クリームチーズやブリーチーズと一緒にクラッカーにのせて食べても。
・グラニュー糖の量を減らした場合は、開封後なるべく早めに使い切ること(3週間以内)。
・2の裏ごしした残りのラズベリーと紅茶を合わせて茶こしで濾すと、簡単ラズベリーティーになります。お好みで甘味を足してください。
・生のいちじくを使用する場合、必要量は240g(8〜11個相当)。皮ごと粗く刻んで分量のグラニュー糖をまぶし、常温に一晩置いてから同様に煮込みます(生のいちじくから水分が出るので、熱湯は不要)。

※1 果物を甘さ控えめでペースト状になるまで煮込んだものは、乳製品のバターが入っていなくても、バターと呼びます(Fruit Butter)。

プロフィール

アンダーソン夏代

あんだーそん・なつよ|アメリカ南部料理研究家。1974年、福岡県福岡市生まれ。フロリダ州ジャクソンビル在住。ノースキャロライナ州出身の夫との結婚を機にアメリカ南部料理に興味を持ち、研究を始める。
著書に『アメリカ南部の家庭料理』『アメリカン・アペタイザー』(ともにアノニマ・スタジオ/ グルマン世界料理本大賞準グランプリ)、『アメリカ南部の野菜料理』(誠文堂新光社/グルマン世界料理本大賞グランプリ/Gourmand BEST OF THE BEST 25)がある。
『台所のメアリー・ポピンズ』(アノニマ・スタジオ)では、レシピ訳を担当。
新刊は初のエッセイ『アメリカ南部の台所から』(アノニマ・スタジオ)。

インフォメーション

アンダーソン夏代×三浦哲哉 「自分の台所をいかに作り、いかに愛するか〜アメリカ南部と日本の台所から」 『アメリカ南部の台所から』(アノニマ・スタジオ)刊行記念 『自炊者になるための26週』(朝日出版社)重版記念

アンダーソン夏代さんと三浦哲哉さんのイベントが本屋B&Bにて開催! オンラインでも視聴可能。

日時:2024/09/25(水)19:30~21:30 (19:00オンライン開場)

開催場所:本屋B&B 世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 2F、オンライン配信

Official Website
https://bookandbeer.com/event/bb240925a/