カルチャー

取り壊しが決まった古着屋『エンドレス』の集大成とこれから。

東京五十音散策 学芸大学⑥

2024年8月15日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Fuya Uto
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は学芸大学へ。

 数多の古着屋がひしめく学芸大学で、一際異彩を放つ『エンドレス』の取り壊しが決まったという知らせが街を駆け巡った。メキシコが誇るジュエリーアーティストのシルバーアクセサリー、アメリカのメモリアルパンツ、戦前のモーニングコートなどなど、なかなかお目にかかれない“なにか”があるかもと期待いっぱいに足を運びたくなるあの名店だ。

 店主は清水大輔さん。名古屋のヴィンテージショップで働いたのち、シルバーアクセサリーの作家を志すも断念し、自身が35歳の頃にこの3坪の空間に出会った。ほぼ無休で深夜まで地道に営業を続けて今年で9年目を迎える。

 「お店を営むのは子供の頃からの夢でした。スタッフを雇い始めたり、向かいのビルで新たにギャラリーをオープンしたりと、やっといい感じになってきたタイミングで本店の取り壊しという……。自分の努力じゃどうしようもない事実に打ちのめされましたね。どうしようもなく悔しかった。ただ、落ち込んでばかりじゃいられないので、残りの期間は挑戦してこなかったコレクションを開催しています」

 清水さんとお店の集大成でもある本展は、9月1日までを予定している。いわゆるヴィンテージ古着市場から外れたもののみにスポットライトを当てた、前衛的な一点モノが120点ほどずらり。見ているだけでも好奇心がくすぐられるものばかりだ。

清水さんイチオシなのが、缶バッジや陶器などがこれでもかと貼られている’80〜90年代のベスト。アメリカ現地のフォークアート(¥300,000)。

主にメキシコのシルバージュエリーも大小さまざま。中でも気になったのが骨が素材の虎柄の逸品。ここまでくれば、身に着けられる絵画だな。

麦入れ袋をリメイクしたこの手のものって、プルオーバーやシャツはたまに見かけるけど、珍しいワンピース! コンディション抜群。男性でも着られるサイズなのもいい(¥98,000)。

ヒッピーカルチャーど真ん中の’70年代にカスタムされたストアブランドのデニム。色落ちや股下の切り返しが独特で類を見ない存在感(¥128,000)。

「この3坪の空間とアイテムを通して、お店を始めたい方や作り手が『自分でもできるんだ』と思ってもらえたら、嬉しいですね。僕が体験したように、動き始めればなんとか形になっていくものだったりするので。それでいうと実は最近、幸運にも向かいのビルの一室が借りられたんですよ」

 すべてが始まったこの建物での営業はまもなく幕を閉じるけれど、近所で再スタートする『エンドレス』。どんな逆風が吹き荒れても、情熱を持って動き続けていれば簡単に表現の終わりなんてこないようだ。

インフォメーション

取り壊しが決まった古着屋『エンドレス』の集大成とこれから。

エンドレス

’50sのアフリカンバティックのパンツなどほぼアートピースな1着が平然と外のラックにあるのもすごい。アイテムの販売だけでなく、向かいのビルにある『エンドレス ギャラリー』で古着と写真の展示も行っているのでお見逃しなく。今後は2つの店舗をドアtoドアで行き来できるように計画しているとのこと。

◯東京都目黒区鷹番2-20-13 1F 15:00〜24:00 無休 

Instagram
https://www.instagram.com/endresstheshop/