カルチャー

シンガポールのシティボーイに会いに行く。

@シンガポール

2024年7月31日

僕の熱帯アジアひとり旅


photo: Kazuharu Igarashi
coordination: Ayako Tada
interpreter: Kazuyo Wood
text: Nozomi Hasegawa
2024年8月 928号初出

 インディペンデントシーンはどうなっているんだろう。2013年からシンガポールで開催されている『Singapore Art Book Fair』の出展者を調べていたら「Temporary Press」に辿り着いた。グラフィックデザイナーのGideon KongさんとプロダクトデザイナーのJamie Yeoさんによる出版社で、昨年は日本の出版社「NEUTRAL COLORS」が営む書店『NEW COVER』にて彼らの特集を行ったようだ。気になって連絡してみると「ぜひ来てよ!」と快諾してくれたので、スタジオ「Temporary Unit」へお邪魔することに。アポイントを取れば、そこに並ぶオリジナルのZINEや、各国からセレクトしたアートブックなどを購入することもできるという。

Temporary Unit
テンポラリー・ユニット

 Gideonさん(写真右)とJamieさん(同左)が「Temporary Press」の活動を始めたのは2017年のこと。当時は3畳ほどのスペースだったが、現在は工業ビルの一角に広々としたスタジオ「Temporary Unit」を構え、リソグラフで印刷したアートやデザインに関する本を主に出版している。ドアを開けてすぐそばのスペースが書店になっている。そこに並ぶZINEやアートブックは、彼らが制作・出版したものだけでなく、韓国や台湾などのアートブックフェアで見つけた作品までさまざま。仕事をする上での役割分担はあるのか聞いてみると「それはしてないかな。アーティストとの共同プロジェクトやワークショップの開催など、その時々によって“テンポラリー”に活動しています」と、Gideonさん。

’60年代以降の国内グラフィックデザインの歴史を収録。S$30

右/ホーカー皿の色に注目した『Hawker Colours』。
左/二人が制作する「Forming Cityscapes」シリーズ。「ゴミ箱」「植物」「看板」など、街の些細な部分に注目した写真集。各S$10

インフォメーション

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Temporary Unit

アポイントはInstagramのDMから。ときにはここで作品展示を行うこともある。

◯22 New Industrial Rd., Primax Building #06-01, S 536208

Instagram
https://www.instagram.com/temporaryunit/

「Temporary Press」の2人に「面白いお店、知ってる?」と尋ねてみると、真っ先に『SHRUB』というカルチャーショップを教えてくれた。’70 年代に建てられた古いビル「Golden Mile Tower」の一角にあって、店主のFernはGideonさんたちと長い付き合いなんだとか。

SHRUB
シュラブ

タトゥーアーティストのYun(写真奥左)やグラフィックデザイナーのShif(同右端)、写真家で『Rosyth Terrace』という店を営むHubert(同左端)、アーティストのTu(同奥右)など、地元のアーティストもしょっちゅうやってくるそう。「日本やタイ、台湾はもちろん、ヨーロッパから来る人もいるよ!」

「Golden Mile Tower」内で祖父母が営んでいた鍵屋さんの空間をそのままFernが引き継ぎ、2022年にオープン。ZINEやTシャツ、雑貨など、シンガポールを中心とする国内外のアーティストの作品を扱っている。写真の左から3番目に座っているのが店主のFernで、この日は友人たちが遊びに来て賑わっていた。「シンガポールはアートやカルチャーのコミュニティがかなり小さいんです。それに加えて物価や賃料も高いから、10〜20代の若者が好きな活動をしたり、店を出したりするハードルは高い。だからこそこの店をインディペンデントなアーティストの作品を共有できる場所にしたいと思ってます」。週末にはZINEのワークショップやDJイベントを開催することもあるんだって。

右上/Yunの『6-8 November』。S$22
右中/Hauseが手掛ける『Hause 2 Bootleg zine』。S$15
右下/FernとTuによる『FOGGY&TEARS』。S$36
左上/オリジナルカップS$20
左中/ShrubとMasala Noirで作った鍵の梱包集『LOCK PACKAGING』。S$25
左下/〈ripe〉のTシャツS$65

店内の至る所に、かつて販売していた鍵の姿が。「この国はモダナイズされているから、昔ながらの鍵より電子ロックを好む人が多いんです」とFern。

インフォメーション

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SHRUB

お店があるのはタワーの1階。

◯6001 Beach Rd., #01-28 Golden Mile Tower, S 199589 14:00〜20:00 月休 

Instagram
https://www.instagram.com/shrub.0128/

 それに続けてもう一軒、『Open Door Store』もおすすめしてくれた。ここはシルクスクリーンユニット「Konstrukt Laboratories」のGoh Zhong MingさんとDebbie Leeさんが2023年にオープンしたスペースで、1階がスタジオ、2階がショップ、というつくり。それぞれがシンガポールのアートシーンを盛り上げようと動いていてすごくいい。そこで出会ったシティボーイたちがみんなシャイだったのもよかったな。

Open Door Store
オープン・ドア・ストア

Zhong Mingさん(右)とDebbie Leeさん(左)は2017年からシルクスクリーンユニットとして活動している。

 シンガポールには「ママショップ」と呼ばれる古き良き雑貨店があるのだけれど、『Open Door Store』はその雰囲気を引き継いだ店。Tシャツや日用品、ZINE、陶器、ジュエリーなど、バラエティに富んだアイテムが店内のあちこちに置かれている。「地元のインディペンデントなアーティストをフックアップできる場所を作りたかったんです。定期的にイベントを開催して彼らの作品を販売したり、オリジナルのTシャツを一緒に作ったりしています。ショップというよりも、アーティストたちにとってのショーケースのような存在でありたいですね」と、オーナーのGoh Zhong Mingさん。イベント時にはDJや飲食ブースが設置され、さらに賑やかな空間になるみたい。

上左/シンガポールでは、1人当たりの年間卵消費量が388個らしい。『WU by Charm』のエッグトレーS$38
上中/「POOLS」というプロジェクトで制作。TシャツS$38
上右/作家・J Z Angが漢方「PO CHAI PILLS」を閉じ込めたネックレスS$28
下左/彼らのシルクスクリーンの道具がプリントされたオリジナルTシャツS$38

インフォメーション

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Open Door Store

イベント情報はInstagramで更新。クレジットカードの扱いなし。

◯80 Playfair Rd., #01-16B Kapo Factory Building, S 367998 11:00〜18:00、日〜17:00 月休

Instragram
https://www.instagram.com/open.door.store/