カルチャー

4月はこんな映画を観ようかな。

お金を借りてでも劇場に足を運びたい4作。

2023年4月1日

『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』
アレクサンドレ・コベリゼ(監)

©DFFB, Sakdoc Film, New Matter Films, rbb, Alexandre Koberidze

ジョージアの新生、アレクサンドレ・コベリゼ監督が手掛けた本作はマジでとんでもない。1組の男女が出会い、デートの約束をするも、当日の朝目覚めると運命のいたずらで2人とも別人に変わってしまって会えなくて……という話を聞けば、「ラブコメみたいだなぁ」と思うかもしれない。しかし、風のせせらぎや奥行きを巧みに使った、まるで絵画のごとくキマりまくったショットの波状攻撃には、視線を釘付けされちゃうこと間違いなし。多くは語らないでおくけど、サッカー好きも必見。4月7日より公開。

『ゴールデン・エイティーズ』
シャンタル・アケルマン(監)

© Jean Ber – Fonda&on Chantal Akerman

昨年好評を博したシャンタル・アケルマン映画祭が今年も開催! ラインナップを眺めてみれば、『ゴールデン・エイティーズ』があるじゃないか。パリのブティック街を舞台に、愛に生きる女性たちの姿をカラフルかつプレイフルに描いたミュージカル映画で、『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス湖畔通り23番地』のストイックさをアケルマンの作家性と思い込んでいる向きはびっくり仰天するだろう。まぁ、かつての日本ではこれしかレンタルできなかったから(しかも、VHSのみ!)、アケルマン=『ゴールデン・エイティーズ』という間違った理解がなくもなかったのだが。ともかく、彼女の作品が多く観られるようになった今こそ再発見されるべき異色作。4月7日から始まる『シャンタル・アケルマン映画祭2023』内で上映。

『ダークグラス』
ダリオ・アルジェント(監)

Copyright 2021 (C) URANIA PICTURES S.R.L. e GETAWAY FILMS S.A.S. 

”イタリアン・ホラー界の生ける伝説”ことアルジェントが、齢82歳にして約10年ぶりの新作を発表。主人公はコールガールのディアナだ。彼女は街を騒がす連続娼婦キラーに追われる中、自動車事故に遭遇して視力を失う。介助犬や、同じ事故に巻き込まれて両親を失くした中国人移民の少年と一緒に過ごすうちに生気を取り戻す彼女だったが、またしてもキラーに狙われることに。一見するとスタンダードなサスペンスなのだが、そこに「これが撮れれば映画監督として一人前」と言われる犬と子供に加え、盲目というテーマすら入れ込んでしまうんだから、アルジェントってば貪欲。この年齢だからこそのいぶし銀の演出の冴えを見逃すべからず。4月7日より公開。

『1PM-ワン・アメリカン・ムービー』
D・A・ペネベイカー、リチャード・リーコック(監)

©Pennebaker Hegedus Films / Jane Balfour Service

60年代初頭、ジャン=リュック・ゴダールとドキュメンタリストのD・A・ペネベイカーが、アメリカを舞台にした作品を共同制作する企画が持ち上がる。一度は頓挫したこの企画が復活したのは1968年のこと。ブラックパンサー党のエルドリッジ・クレヴァーにインタビューしたり、当時の政治的な空気感が存分に伝わる場面をフィルムに収めたものの、ゴダールは完成せずに再び放棄してしまう。本作は残されたフィルムを用いて、ペネベイカーらが完成させたもの。ゴダールの演出ぶりがわかるシーンを始め貴重なシーンがてんこ盛りなのだが、一番驚いたのはゴダールの英語の達者さ。いつかのカンヌ映画祭の記者会見で、英語で話す記者に「美しい母国語があるのに英語を使わないでください」と苦言を呈していた彼だったが……本当に食えないお方だ。4月22日より公開。