カルチャー

身も心も、麗しき’70sロックスター。

- TOWN TALK番外編、ちっちの好きなもの -

2023年2月5日

photo: Koh Akazawa
text: Toromatsu

 2022年5月に、POPEYE Webのひと月コラム『TOWN TALK』内で当時15歳にして異常な昭和バイブスを見せてくれた人がいた。ちっちこと、東儀典親(とうぎ・のりちか)さんだ。いわゆるレトロブームとは似て非なる本物のタイムスリップ感が気になりすぎて、“コラム番外編”を口実に(単純に趣味嗜好を覗き見たくて)彼のもとを訪れさせてもらった。

東儀典親

 寄稿してくれた4つのコラムをおさらいすると第一回が『雅楽と’70年代ロック』、第二回が『ベルボ、フリンジ、サイケ柄、ブーツ』、第三回が『ボクの好きなギターの話』、第四回が『自転車、特撮、漫画、演劇』というタイトルだった。中でも彼が特に好きなのが’70年代ロック。ひとえに’70年代といっても、イギリスの「フリー」や「イエス」など、ハードロックやプログレッシブロックがお好みで、しかも同じくらいジャパニーズにも魂を奪われているのがユニーク。「四人囃子」や「ゴダイゴ」といったバンドを愛ですぎるがあまり、なぜかルックスもかつての彼らのようになってしまっているのだ(笑)。

 “雅楽”といえばこのお方、実は彼の父は“ロックもできる雅楽師”で知られる東儀秀樹(とうぎひでき)さん。「幼少期からドイツの音楽番組『ビートクラブ』にくぎ付けで、小学校に彼だけワイシャツを着て学校に行っていた」なんてちっちさんのイカレっぷりをお父さんの口から聞くと、蛙の子は蛙だなぁと感じてしまった(すみません誉め言葉です)。しかも今では子がいろんな文化を追求しすぎているがあまり、逆に秀樹さんが影響を受けることもあるらしい(!)みんなもちっちさんがどんなものにハマっているかちょっと気になってきたかな!?

―ちっちはこんなロックに取り憑かれている。

お気に入りのレコードを並べていると愛猫のなゆたくんが駆け寄ってきた。上段左から/The Edgar Winter Group – They Only Come Out At Night(1972)、Mitsuru Satoh – Blooming Alone (1982)、Flied Egg – Dr. Siegel’s Fried Egg Shooting Machine (1972)、Little Feat – Waiting For Columbus(1978) 下段左から/Free – The Free Story(1973)、Sentimental City Romance – Uchiwamome(1975)、Yoninbayashi – Printed Jelly(1977)、Pink Floyd – The Dark Side Of The Moon(1973)ちなみに雅楽はもちろん、ジャズやクラシック、フォークなども聴くちっちさんの幅広さは心底尊敬に値する。

―レザージャケットといえばフレアシルエット。

―現行品のマイフェイバリットベルボ!

―アップリケ、これも70年代の象徴。

―ヒール13cmのロンドンブーツだ。

ロンドンブーツ
右に写る13cmヒールのブーツは、忌野清志郎さんも通っていたと言われる、ロンドンブーツがオーダーできる四谷の老舗靴店「SAシューズ」で購入。階段が結構怖いらしいが「なれたら小走りができるようになります」とほほ笑んで見せてくれた。左の11cmヒールは父・東儀秀樹さんがたまに履いているもの(笑)。

-古き良き、妖怪と怪獣~。

―当時のインタビュー記事を今になって読む特別感。

‘70年代の『プレイヤー』と『ミュージックライフ』は2大音楽雑誌と崇めていて、これらを読む最大の理由を「ミュージシャンの当時のインタビューを、未来を知っている人間として読むことができるのがたまらなく、音楽を生業にしていきたい自分にとってマインドの勉強にもなるんです」とちっちさん。たまたま父の読者寄稿を見つけたこともあるようで。

―クリアボックスにたくさんあるミニチュアカー。

-オリジナルのギター改造にこだわる。

日本で一番好きなギタリストと公言する「四人囃子」の元メンバー・佐藤ミツルさんのアマチュア時代の映像を見て再現した改造ギター。佐藤ミツルさんはかつて壁紙をギターに貼り付けてこのデザインにしていたらしいが、壁紙が手に入らないからと、画像解析して父に頼んで、白の同モデルに2カ月かけてペイントしてもらったのだそう。ピックアップの位置やトレモロアームの設置など細かい部分まで徹底してコピーした宝物。

-外出も録音もカセットテープを活用。

-部屋一面のお面がすごい~。

-演劇にも目がないらしい。

 TOWN TALKに載っていたものも、載せていなかったものも、果ては子供の頃の絵に至るまで、快く見せてくれたちっちさん。他にはどんなことを聞こうかなと思いふと時計に目をやると3時間も経ってしまっていたのでお開きに。

 現行でベルボトムやロンドンブーツを作って売っている店があるのも知らなかったし、古い音楽雑誌との面白い向き合い方なんかも勉強になった。同調圧力に自然と流されがちな昨今において、自分なりに価値を見出したものを一人で掘っているちっちさんの感性から学ぶべきことは多いように思う。ただ、そういうマインドって歳を重ねることで徐々に身についていくような気もするから、嫌になるほど言われていると思うがどうしても言わせてほしい。ちっちさん、ほんとはいくつなの!? 「神保町によく行く」とか「ハードオフが好き」なんて聞いてちょっと親近感も湧いたけど、やっぱりこんな16歳、絶対みんなの近くにもいないよね。

幼少期の絵。帰り際に見たこれもなんだか70sな色使いに見えてきた(笑)

プロフィール

東儀典親(ちっち)

とうぎ・のりちか|2006年、東京都生まれ。奈良時代から1300年にわたり雅楽を世襲してきた東儀家に生まれる。雅楽はもとより、幼少期から70年代ロックを愛し、作曲を手掛ける音楽家でもある。同世代でバンド「GRASSHOPPPER」を結成し活動。「ちっち」の名で親しまれている。東儀秀樹ニューアルバム『NEO TOGISM』(2023年3月29日発売)に参加。

Instagram
https://www.instagram.com/norichika_togi/
https://www.instagram.com/grasshoppper_band/

TOWN TALK
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