ファッション
【#2】バッチのこと②
2022年10月20日
photo & text: Saeko Takahashi
edit: Yukako kazuno

前回に引き続き、バッチづくりの話を。
集めた素材が整ったら、次はバッチとなる組み合わせを考える。
できるだけ違和感があるように、役に立たないように、を目指す。長いなら長すぎるように、塊なら邪魔になるほど大きく、大量に。
ひとつでいいところには3つ、3つ欲しいところにはひとつ、洗練された生地には手垢感に塗れた針目を組み合わせる、など。かゆいところに手が届かない感じで。
壁に貼って剥がして、を繰り返しながらカタチを決めていく。この作業はなぜか夜が捗る。「バナナマン ゴールド 神回」「爆笑問題カーボーイ 神回」「宇多丸 酷評」あたりがBGMとしてぴったり。ひとつうまくいくと芋づる式にうまくいくのもこの作業のよさだが、芋づるになるまでには時間がかかる。
そして、組み合わせが決まったらあとはひたすら縫う。こっからは修行。ただただ単純作業。効率悪し。芋づる式にできることはなにもない。BGMは音楽だと眠くなるし、お笑いだと手が震える。この作業には揉め事がぴったり。「ハウスオブカード」や「ザ・クラウン」あたりの天上人の揉め事を日本語吹き替えで聴きながらひたすら運針する。するとバッチは完成する。
できあがったバッチをギャラリーやお店に並べさせてもらう。売れたり売れなかったりする。こうやって1年で1000個くらいのバッチを作ってきた。商品と作品のちょうど間くらいを漂流している。


以上が私の仕事です。
もし、この仕事をやってみたいと思ってくれる人がいたら、最初のハードルは布にはハサミを入れることかもしれない。それに関しては慣れでなんとかなると思う。
私自身は10年以上やっているので、布にハサミを入れることには躊躇はない。しかし、その副作用としては、ホコリになる寸前まで小さくなったカケラすら、捨てられなくなってしまった。素材に情がうつる。人の気配がする。素材を通して、人の営みが見えるようになってしまう。

これまで生き残ってきたものが「最後にこの極東のおばさんちの狭い部屋で無意識に吸引されるってどういうことよ」と掃除機のダストケースを開けて、咽せながら泣きながらカケラを拾い出すようになってしまった。バッチを作ると情緒が安定しない。これには慣れない。そこをご覚悟いただいて、ぜひ、どなたかごいっしょしませんか。
プロフィール
高橋彩子
たかはし・さえこ | 1977年生まれ。2003年、メキシコへ。メキシコ人女性に師事し、人形劇の制作に携わる。2010年〈アッチコッチバッチ〉を作りはじめる。2020年作品集『Bacchi Works』発表。2022年、金沢市民芸術村にて、「アーティスト・イン・レジデンス」に参加。個展、ワークショップ多数開催。
Instagram
https://www.instagram.com/bacchiworks_saeko/
Official Website
http://www.saekotakahashi.com/bacchi/bacchi.html
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