カルチャー

さーて、10月はどんな展示に行こうかな。

個の枠に収まりきらない個展5選。

2022年10月12日

光藤雄介 「行間」
@msb gallery

工場見学に行くと、同じ製品がスピーディーに量産されていく様をみることができる。ベルトコンベアがただ流れる姿はどこか不思議で、ずっと見ていられる。しかしふと気づくと、自分たちの日常もありふれていて量産的で、起きて寝るという生活そのものが反復のなかにあるような気がしてくる。光藤さんの作品は一般的なペンと定規を用いて紙に線を引くという反復作業により成り立っている。あえて同じことを繰り返すことで、そこには自らの意識や記憶を超えた線が引かれている。その線は太かったり、ずれていたり、一本として同じものはない。量産され、意思すら消えた反復される行為のなかにも、個が存在するのだ。そう、あたりまえだけど我々は工業製品ではなく、人間だから。「行間」と名付けられたこの展示は、そんな風に自分を肯定してくれているような気がする。

会場:msb gallery
会期:2022年10月6日(木)〜10月16日(日)
時間:12:00〜19:00(最終日17:00まで)
休み:月曜日
料金:無料

山﨑萌子 「むすう」
@PALI GALLERY

過去にタウントークで執筆してくださった新城大地郎さんと写真家の石川直樹さんの二人が中心となって、ゆかりの地、宮古島にオープンしたギャラリー「PALI(パリ)」。宮古島で「畑」を意味する「パリ」という言葉の通り、広い視野から宮古の文化を考え、耕していくことを目的としている。今展示では、アーティストインレジデンスプログラム「PALI GALLERY AIR」の第一回としてアーティストの山﨑萌子さんが実際に滞在し、人々や文化とのふれあいの中で制作された作品が展示される。繊維を「むすう」(宮古西原の方言で、結ぶという意味)ことで、伝統的な織物である宮古上布が織られるように、展示では、そんな結ぶという身体的な行為を介して、作品も人も、文化をもつなぎ合わされている。

会場:PALI GALLERY
会期:2022年10月1日(土) 〜11月20日(日)
時間:12:00〜19:00
休み:月曜日
料金:無料

三好耕三 「井戸覗き Dig a Well」
@PGI

神奈川県 2016
©Kozo Miyoshi, courtesy of PGI

三好耕三は、1970年代にそのキャリアをスタートさせた写真家だ。「私の写真は旅から生まれる」と本人が語るように、超大型カメラを携え、現在に至るまで旅と撮影を続けている。大きなモノクロームの世界に映されているのは、旅先をエキゾチックに消費しない、その土地を尊重した日常の時間だ。本展示では2009年から今年までのそうした旅の最中に撮影された作品を鑑賞することができる。「井戸覗き」というタイトルによって、旅の記憶たちが閉ざされた水面に浮かんでは消えていくような繊細で詩的なイメージが喚起される。しかし、井戸が身近にあったという人はもはや多くはないのではなかろうか。本展示で初めての「井戸覗き」をしてみては!

会場:PGI
会期:2022年10月11日(火)〜11月26日(土)
時間:11:00〜18:00
休み:日曜・祝日
料金:無料

ヒスロム 「現場サテライト」記録・資料展示3
@広島駅南口地下広場ショーウィンドウ

黒川紀章の設計で日本初の公立現代美術館として開館した広島市現代美術館。竣工から30年以上となり、現在大規模改修工事中。休館中館外で様々な活動を行っている他、オンラインでの情報発信も充実。「工事日記」と名付けられたインスタグラムアカウントからはその改修の模様を垣間見ることができる。足場が組まれたり、塗装・増築されていく様子はとても興味深い。また、工事現場となった館を舞台とし、アーティスト・グループ「ヒスロム」がプロジェクトを展開。その記録や関連資料が広島駅のショーウィンドウに展示されており、特に「今週のことば」と題された金言・迷言にはドキッとさせられる出会いがあるかも。

会場:広島駅南口地下広場ショーウィンドウ
会期:2022年9月3日(土)~11月27日(日)
時間:7:00~22:00
休み:会期中無休
料金:無料

小林耕平 「テレポーテ―ション」
@黒部市美術館

ドラえもん秘密道具の代表格、どこでもドア。何かにつけてドラえもんが取り出して使っているように、その利便性からテレポーテーション(瞬間移動)は誰もが一度は夢見たことがあるはずだ。でも、そんなテレポーテーションを我々はよく行なっているのだといったら暴論だろうか。例えばヤシの木を見たとき、それがどこであっても南国のトロピカルな香りがしてくるようにモノと場所は密接な関係を持っていて、人は概念的な”瞬間移動”を頭の中で繰り返している。本展では、作家が黒部市を含む新川地区(富山の東側地域)の10箇所を舞台にそんな関係性を見つめ直す。サイトスペシフィックを超えた不思議な展示だ。

会場:黒部市美術館
会期:2022年9月23日(金)〜12月18日(日)
時間:9:30〜16:30
休み:月曜日(但し 10月10日開館)、10月11日(火)・12日(水)、11月4日(金)・24日(木)
料金:一般 ¥500、高校・大学生 ¥400、中学生以下無料 詳細はこちらの案内にて