カルチャー
小さな店のはじめ方。 Vol.3
編集者、タコス屋になる。
2022年8月2日
photo & text: Taichi Abe
cover design: Bob Foundation
かくして、タコス屋の「編集」は始まった。まずは「人」だ。いくら良い場所やタイミングに恵まれていたとしても、素敵な人たちがいないと、どんなプロジェクトもうまくいかない。ただ、思いのほかそれはスムーズだった。まるで道筋が用意されていたかのように、自然な流れでプロフェッショナルなスキルを持った3組の顔が浮かんできた。悪い予感がしない。僕は流れに身を任せることにした。

1組目は「料理」のプロフェッショナル。BRUTUS在籍時からお世話になっている料理ユニット『and recipe』。小池花恵さんと山田英季さんの2人組で、山田さんはフレンチや和食の現場を経て、今では自らも飲食店を経営しながら各種メディアの企画や飲食プロデュース業などを手掛けている。僕は何かあるごとに『and recipe』のアトリエにお邪魔して、一緒に食卓を囲みながらたくさん話をした。僕はふたりの人柄とアイデアが好きだ。そして、山田さんが考える「おいしい」の方向性は僕と似ていると思う。きっと話し合いを重ねながら「味」の分野でベストな道を一緒に模索していける。

次に「店舗設計」のプロフェッショナル。『スタジオA建築設計事務所』の内山章さん。自宅のリノベーションを手伝ってくれたひとり。そのときもそうだけど、「本や雑誌を目に見えるかたちでたくさん置きたい」「物をなるべく見えないように収納したい妻の要望も叶えたい」など、素人の要望を建築設計の目線でほどよく翻訳してくれる。現在は、自身で南房総にサステナブルな銭湯をつくろうとしている。そんなセンスと行動力が好きだから、ある日彼にもメールを飛ばした。

最後に「デザイン」のプロフェッショナル。『Bob Foundation』の名前で活動しているグラフィックデザイナーの朝倉洋美さん。彼女は、マガジンハウスの仕事はもちろん、クルマをテーマにしたクリエイティブユニット『HIROO REDSOX』でもプロジェクトを一緒に手掛けている同志でもある。アートディクレクションは彼女の力を借りたいから、いつも通り酒を飲みながら、やりたいことやこれからのことを聞いてもらった。話しているうちに、僕のぼんやりとしたイメージの解像度が高くなったから不思議だ。

「タコス」の定義は色々あるけれど、具材と、サルサと呼ばれるソースを、トルティーヤで包んだ料理のこと。具材もサルサも「これじゃなきゃダメ」なんてことはない。とても自由で、包容力がある料理。でも一方で、そのコンビネーションには斬新なアイデアと緻密な計算が必要なメニューでもある。悩んでいる人も楽しいことがあった人も等しく一緒に陽気な時間で包み込むような店をつくりたい。違った分野の人たちの感性を絶妙に組み合わせて、多くの人に「おいしい!」と言ってもらえるような完成度の高いアウトプットを追求したい。それも楽しく。僕がやりたいことは、そんな「タコス」なことなんだな。朝倉さんと話をしながら、そう自覚したときに店のキャッチフレーズは決まった。「WRAP ME TEMDER(やさしく包んで)」。2022年春、僕は実家のある場所で、たくさんの色々をやさしく包むことに決めたんだ。

プロフィール
阿部太一
Instagram
https://www.instagram.com/tacoshop_miyoshiya/
神田ポートビル
https://www.kandaport.jp/
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