フード
【#1】リヨンの料理学校
土井光さんのミニコラム(全4回 / TOWN TALK)
2021年4月10日
text: Hikaru Doi

初めまして、料理家の土井光と申します。
父である料理研究家土井善晴先生のアシスタントをしていますが、ちょうど3年前まではフランスで料理人をしていました。
日本の大学を卒業後、フランスリヨンの料理学校で学びそのままフランスで就職。27歳までフランスにいました。
今回は、私のいたフランスの料理学校の話を少しと、学校で学んだことを書いていきたいと思います。
フランスの料理学校は、私立の料理学校で、世界各国からフランス料理を学びたい学生たちが集まっていました。姉妹校がシンガポール、ペルー、上海にもあり、留学生も沢山いたところでした。
この学校の授業、半分は実技なのですが、半分はレストランマネージメントに基づく座学がありました。建築学、会計学、栄養学、科学、デザイン、パソコン、英語、サービス、ワイン、歴史、などなど。
そして生徒が多種多様。フランスの名高いシェフたちのご子息はウヨウヨいますし、両親はホテル王、某有名ワイン卸、世界的調味料の会社代表。。。世界中の飲食に関わる関係者が山のようにいました。勿論全く関係ない人もいるけれど、一度フランスの大手銀行で会社員をしていて辞めてきたり、ヨーロッパ一周料理修行をして最後の総まとめだ!と入学してきた人や、政府からの奨学金で来ているような人たちまで。わけわかめ。
有名レストランのシェフでない、料理研究家(今でもなんて訳せばいいか分からない)の娘で大学卒業したての日本人なんて何の注目性もありませんでした。残念。
でもそれが逆に心地よかった。自分から自分を出していくしかなかった。
しかしながら語学力も全生徒で最下位だったのは間違いありませんでした。(なぜなら3カ国喋れるのはデフォルトだから。)
なぜ受かったかはよく分からないけど、書類選考に必要な語学の点が足らなさすぎて『あと少し勉強すれば点数取れると思います。』というポストイットを語学試験結果の紙に貼り付けたり、小論文でフランス料理の世界文化遺産の意義を熱く書いたりした、お情け買いだと思っています。
英語もフランス語も思うように話せず、両親を見せつけることも出来ず、困った私の唯一の武器は“日本人”でした。この世界の中で、日本という単語をきけば出身国です!と大きな声で言えるのは私だけでした。
そこから日本の○○知ってる?推しの質問を切り込んでいくのですが、何と私の方が日本のことを知らない事件勃発。
日本のイケジメってすごいよね!旨味って要するに何?緑茶と抹茶の違いは?味噌はなぜ赤と白があるの?アスペルギルスオリゼーのドキュメンタリー見たよ!
ええええええええええええええ(心の声)
それからフランス料理の実技に追われ、座学の予習復習、そして日本のことを調べる日々。。。
という破茶滅茶な2年間を過ごしておりました。
それでもアイツなんか面白いなという感覚は世界共通のようで
その微妙な感覚のラインを狙って学生生活を送っていました。
ひかるという名前を覚えられなくても、綺麗だけど妙なでかい弁当ボックス(おせち)の話をするだけで友達になれた。
日本の醤油はソースでは無く、あなたたちの塩なのよん。と語ってみたり、包丁の会を開いたり。
自分が周囲の人と同じ立場になった感覚を持って、その上で日本という国を紹介していました。あまりにも違うことは説明しすぎず、なるべく相手が知っているものに例えて話してみたり。
あなたたちの国は〜だけど、私の国は〜なのよ!という言い方をしていなかったことは、スペック低い私に皆が興味をもち受け入れてくれた要素の一つのだったと思います。
違うことは当たり前で、まず相手の当たり前を受け入れ理解すること。最初はこいつら違う!日本だったら〜なのに!という感覚はあったけれど、この感覚をなくすことができたのは30カ国以上の多種多様の生徒が自分の国に誇りを持ち、それでいて自分が勉強する!と決めたフランスへの敬意もしっかり持って勉強に励んでいたおかげです。
料理や座学の勉強は今でも役立っていることが多いですが、それ以上にこの個性的な世界で感じたこと、学んだことは、土井善晴以上の私の武器になりました。笑
二世(正確には三世)というのは何となくモヤモヤしていたけど、
そんなモヤモヤを一瞬で吹き飛ばし奇想天外な毎日をくれた最高の母校の簡単なお話でした。

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