カルチャー
5月はこんな本を読もうかな。
公園ピクニックにうってつけの5冊。
2022年5月2日
text: Keisuke Kagiwada
『ショットとは何か』
蓮實重彦(著)
当代随一の映画批評家による最新著のテーマは、題名にも示されているように「映画におけるショットとは何か?」。しかし、それを原理や理論に頼ることなく、『殺し屋ネルソン』を始めとする具体的な作品をじっと見つめることによって浮かび上がらせる。どうやら映画の魅力は、単体のショットを編集でどうつなぐかという「ショットの連鎖」にあるのかも。いやはや映画を観たくなる1冊。¥2,420/講談社
『黄金虫変奏曲』
リチャード・パワーズ(著)、森慎一郎他(訳)
まずは白旗を上げるしかない。パワーズの他の小説と同様、本書も要約不可能です、と。その上で、エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」とバッハの「ゴルトベルク変奏曲」と、遺伝情報をめぐる生物学がキーアイテムになるとは言える。にもかかわらず、壮絶にロマンチックな恋愛譚でもあるんだから、「つまりどういうこと?」と突っ込みたくなる気持ちもよくわかる。ただ、珠玉の読書体験が待っていることだけは確約しますので、とにかく読んでみてくださいな。¥5,720/みすず書房
『あの図書館の彼女たち』
ジャネット・スケスリン・チャールズ (著)、髙山祥子(訳)
1930年代、ナチス政権下のパリでアメリカ図書館に勤めていた女性の人生と、1980年代のアメリカに暮らす少女のそれが交差する。図書館の女性館長がつぶやく「ひとは本を読むものよ」「戦争であろうとなかろうとね」という言葉が感動的だ。『攻撃される知識の歴史 なぜ図書館とアーカイブは破壊され続けるのか』と合わせて読みたい。¥2,420/東京創元社
『気狂いピエロ』
ライオネル・ホワイト(著)、矢口誠(訳)
タイトルを読んで「おや?」と思ったあなたは、きっと映画好きに違いない。そう、ジャン=リュック・ゴダール監督の同名映画の原作が、満を持して初翻訳されたのだ。映画版との印象はまぁまぁ違う気もするのが、それはこのクールすぎるハードボイルドの魅力を減じさせるものではない。アリーという名のファム・ファタールに取り憑かれた1人の男の妄執を、心ゆくまで味わわれたし。¥693/新潮社
『服 服 服、音楽 音楽 音楽、ボーイズ ボーイズ ボーイズ』
ヴィヴ・アルバーティン(著)、川田倫代(訳)
70年代のUKパンクロック・ムーブメントに、女性バンドとして一石を投じたザ・スリッツ。本書はそのギタリストである、ヴィヴ・アルバーティンの回顧録だ。マイク・ミルズは現在公開中の『カモン カモン』の脚本執筆中に本書を読んでおり、主人公の妹の名前をヴィヴにしたという。そんなこんなも含めて今こそ読みたい1冊。¥4,620/河出書房新社
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