CULTURE

マイク・ミルズにインタビュー。

映画『カモン カモン』が公開中!

2022.04.22(Fri)

©2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserv

マイク・ミルズの監督最新作『カモン カモン』が公開中だ。主人公は、ラジオジャーナリストとして子どもたちにインタビューするのが生業のジョニー。そんなある日、彼は妹の息子である9歳のジェシーを預かることになる。しかし、天真爛漫なジェシーとの共同生活は苦難の連続だ。本作が美しいモノクロ映像で描くのは、そんな2人が互いに成長していく姿。というわけで、監督であるマイク・ミルズにメールインタビューを決行した!

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ーー本作をなぜモノクロ映像で撮ろうと思ったんですか?

純粋にモノクロの方が美しいと感じるんだ。全作品をモノクロで作れるのなら、喜んでそうする。本作に関しては、ある男性と少年の寓話や神話のようなイメージをずっと抱いていたんだ。今まで寓話的な映画を作ったり、幼少期の”神話“を描いたりしたことがなかったから、それがとても楽しみだった。

さらにドキュメンタリーの部分と相反している点も気に入っていた。1つの作品内に対立するが要素あると、それは前進するエネルギーに変わると信じているからね。僕たち人間は、世界をモノクロで見ることはないから、より映画的な世界を作り出せるんだ。僕のA24に対するプレゼンもこんな感じだったよ(笑)。

でも正直な話、モノクロ映画がとにかく好きなんだ。クライテリオンのモノクロ映画の大ファンでもあるしね。

ーージョニーはジェシーとの向き合い方に悩み、ジャクリーン・ローズの『母たち』を読むことを通して、これまで母という存在が背負わされてきた過重な役割に思いを馳せます。そして、自分もまた母的な存在へとある意味で否応なく変化していきます。『20センチュリー・ウーマン』とも通ずる「母とは何か?」というテーマを扱う背景には、やはりご自身の子育て経験の影響があるんですか?

母親を尊敬し、好奇心を持たずに、子育てや子供と関わることについて語ることなんてできないと思うよ。僕自身、父親として、あるいは子供を持つ大人としてどうあるべきかについて、母親である女性たちから数えきれないほどの学びを得てきたんだ。

でも、そもそも僕の映画はすべて、人々が他者に対して好奇心を持ち、理解しようとする姿を描いているんだと思う。だから、僕はいつも自分の母親を理解しようと何度も何度も努力しているんだ。

ーージョニーの仕事は子供にインタビューすることです。しかし、同じようにジェシーにインタビューしようとしてもまったくうまくいかず、むしろインタビューされてしまいます。 主体的な存在から受動的な存在へというこの転身は、そのまま彼が母的な存在へと変化していく過程と重なっているように感じられました。あなた自身、子供を育てるということは、”インタビューされる者“もしくは”受動的な存在“になることを受け入れることだとお考えですか?

子供を育てるということは、いろいろな意味で自分の力を失ってしまうことを免れない。自分のアイデンティティや自己意識に対して持っていた力が失われ、完成されていた「自分」は解きほぐされる。子供の愛によって。実はそれは、自分自身と世界を支配する間違った感覚を解きほぐしてくれる贈り物なんだ。

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ーーあなたはインタビューで「本作の脚本を書き始めた2017年は、2016年に起こったこと、つまりトランプ大統領の誕生で頭がいっぱいだった」と語っていました。そのことを踏まえると、後半のジョニーのジェシーへの愛のある接し方は、トランプの権威主義へのある種のアンチテーゼになっているのかなとも思いましたが、そのへんは意識していましたか?

それは考えてなかったな。でも、面白い解釈だね。

ーージョニーは仕事でインタビューを録音するわけですが、その録音という行為に対して、「平凡なものを不滅にするってすごくクールだ」と語ります。映像もまたひとつの記録装置ですが、映像作りに置き換えたとき、あなたはこのジョニーの意見に同意しますか?

答えはイエス。人生というのは、ほとんど理解できず、把握することもできないまま、あっという間にすべて過ぎ去っていく。だけど、それは美しく、意味のある失敗だと思う。記録するという行為は、僕たちが本当に手に入れることのできないこの人生に、もう少しだけしがみつこうとする重要な試みなんだ。

ーーラスト近く、ジョニーはジェシーに「君は僕とすごした日々を忘れてしまうだろう。だけど、僕は覚えているよ」とつぶやきます。要するに、子供は「忘れる存在」であり、だからこそ大人は「記憶する存在」であるよう努めようとします。あなたが映像作品を作る際、「記憶する存在」としての大人の責務みたいなものも意識しているのでしょうか?

いや、そこまで大それたことは考えていないよ。そのせりふは、脚本書いているときに僕の頭の中で2人が語り合ったことで、僕にとっては真実に思えたんだ。僕の子供もそうだからね。子供の記憶って不思議と儚いんだ。

でも、そもそも僕たちはみんないつか忘れてしまうし、すべてが過ぎ去ってしまうし、すべてが儚い。だからこそ、このすべてを失わないための試みは失敗を運命づけられているわけだけど、その試みは大きな意味を持つんだ。

ーージョニーとジェシーがNYの「Scarr's Pizza」で食事をするシーンがありますが、好きなお店なんですか?

ジョニーがあのエリアで暮らしているという設定なんだ。彼らが登場するNYのシーンはすべて同じ界隈で撮影した。バス停は角にあるし、公園も近くにある。だから、同エリア内のピザ屋で撮影することは、自然な流れだった。「Scarr’s Pizza」は僕自身も大好きなピザ屋だよ。少し前にNYを訪れたんだけど、滞在中に2回も行ってしまった。インテリアも美しいし、僕にとっては特別な意味を持つエリアなんだ。

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ーー最後に映画の冒頭でジョニーが子供たちにしていた質問をさせてください。未来はどうなっていると思いますか?

今ではその質問をあの子たちに答えさせるのは無理だったと思っている。誰にも答えることなんてできないことだから。

作品情報

カモン カモン

NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。TOHOシネマズ 日比谷ほかで公開中。
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